第23話

「オウマさんは、どうしたいですか?」

 後藤は、咲来の前に立ってそう問いかけた。

「先生と一緒になりたいんですか?」

 強い風が吹いて、後藤の白衣をはためかせた。

 咲来は小さく首を横に振った。

「ちゃんと卒業して、東西ファーマに就職したいです」

 ざわざわと葉の擦り合う音の中で、咲来は小さな声で、でもしっかりとした口調で、その望みだけを口にした。


 後藤は、吹き付ける風に白衣を取られないように、ポケットに手を入れて、咲来に優しい目を向けた。

「それなら、俺にも力になれるかもしれません」

「え?」

 どういうことかと問おうとした咲来は、自分のポケットの中で震えだした携帯電話に妨げられた。

「あ、すみません」

 市外局番から始まる番号の下に、咲来の家の近くの県立病院の名前が表示されていた。

「じゃあ」

 踵を返した後藤の背中を少しの間見送った後、咲来はその電話に出た。

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