第21話

「あの、お礼が言いたくて」

 咲来は、本来の目的を思い出して頭を下げた。

「調製記録、届けてくれてありがとうございました。後藤さんが持ってきてくれたの知らなくて、お礼が遅くなってしまってすみませんでした」

 咲来が頭を上げると、後藤は人差し指で頬をかいていた。

「やはは、そんなご丁寧に。むしろ申し訳ないです。引きませんでしたか?」

「何がですか?」

「いや、その、ポストイットが……」

 後藤はそこまで言うと、恥ずかしそうに目を伏せた。

 そんな彼を、咲来は可愛いと思ってしまった。

「嬉しかったです。エントリーシートも、すごく励まされました。就職はダメになっちゃうかもしれないけど、それでも、がんばれたのは後藤さんのおかげです」

 咲来の言葉に、後藤は顔をかいていたのをやめて、目を上げた。

「ダメになっちゃうかもって、どういうことですか?」

 咲来が答えに詰まると、後藤はためらいながら口を開いた。

「も、もし良かったら、ちょっと外で、話しませんか……?」

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