第2話

ラボに戻ってきた咲来は、加温していた耐熱ビーカーの精製水の中に、秤量室ではかりとってきたMC粉末を入れた。

 溶けずに水面に浮かんだ白い粉は、攪拌の回転スピードを上げると、吸いこまれるように水中に消えていく。

 粉が溶けて水が白濁していく様子を、咲来はキャスター付きの丸椅子に座って、ぼんやりと眺めていた。


 五分ほど攪拌して粉っぽさが無くなると、咲来はその耐熱ビーカーを冷室に持っていって、全量をメスシリンダー内の精製水に加えた。

 くるくる回る攪拌子が、メスシリンダー内にモヤモヤと白濁の渦を作って、やがて均一の溶液にしていく。


 咲来は、4℃に設定された冷室の中で小さく身震いをして、メスシリンダーとビーカーを手に冷室を出た。

 本当はしばらく攪拌しておいた方が良いのだけど、早くマウスに投与しないと日付が変わってしまうし、深夜の研究棟は何だか薄気味が悪かった。

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