第24話 葵の過去①
今日の朝、時哉は「ホントはあと2,3日くらい泊まっときたいけど、愛の巣を邪魔するわけにもいかないんで、残りは朱梨の1人暮らしに駆け込みまーす。」とかほざいていたので、脛をかなり強めに蹴っておいた。
彼が悶絶していた気がするが気のせい気のせい。……たぶん。
葵は今朝『今晩は予定が入ってしまったので、夕食を作ることができません。』とメッセージが来た。それに、今日の夜に予定されていた配信も急遽、延期にするようだ。
どしたんだろ。
「はあ…。今日は、葵の料理なしか…。」
てか、めっちゃ葵の料理の虜になっていた。推しの手料理には依存性があるらしい(クスリと同じくらい)。
今日、学校が終わって自分の階に着くと、葵と知らない女性が話していた。
「ほんとに煩わしい子。私に似たらまだ可愛げがあったものを…。あの人に似ちゃったから。」
「はい…。」
「じゃあ、他の書類はいつも通り郵送で。これ以上、私の手を煩わせないで頂戴。」
「承知しました。」
この会話を聞いて、翔は悟った。葵は家庭環境が芳しくないことに。また、育児放棄をおそらくされていたであろうことに。
「聞いていたのですか。」
「ごめん。盗み聞きをするつもりはなかったんだけど…。あのタイミングで出るのも気まずくて…。それで、あの人は?」
「あの人は田中佳代子。私の母親です。」
「あれが母親…?」
実の娘に対してあの軽蔑しきった目を向ける人間がいるとは…。
「では。私は部屋に戻りますね。」
「待って!」
反射的に俺は葵の手を掴んでいた。葵の顔が今にも泣きそうだからである。
「今日は予定があるとお伝えしていたはずですが。」
「それはさっきのだろ。」
「そうですが…。」
「一緒にいたいからいちゃ駄目かな?」
「……わかりました。」
そのまま俺の部屋に入る。
「つまらないどころかあなたを不快にさせてしまう類の話だと思いますが、聞いてくれますか?」
「おう。」
彼女はぽつりぽつりと話し始めた。
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