閑話① 時哉の思案

2人は玄関で何やら話している。おそらく、葵に怒られているのであろう。まったく、彼女に怒るイメージはないのだが。


今日、2人の様子を見ていて思ったのだが、意外とお似合いなんじゃないだろうか?

翔も葵を見ているとき、目線が柔らかいし。

葵もそもそも好きじゃなければ、1人暮らしの男の家には入らないだろう。それに、目線が恋する女の子の目そのものだった。


「翔にもいよいよ春が来たかなあ。」


本音を言えば、俺も葵を狙っていた1人なのだが、あの女の子の目を見てしまったあとでは、その気も失せてしまった。


もちろん、学校のやつらに言うつもりはない。なぜなら、この2人を邪魔してほしくないからだ。親友の幸せを俺は願っているんだ!


まあ、翔には後で吹っ掛けるとして、まだ帰ってこないのかなあ。


その後、しばらくすると、しょんぼりした顔の翔と微妙に不機嫌そうな葵が入ってきた。


「おう、おかえり。で、その様子だと、田中さんにきっちり怒られたみてえだな?翔さんよう。」


「きっしょ。何でわかるんだよ。」


それ以上のこともわかってるっての。


「私は怒っていません。ちょっと注意しただけです。」


へ?怒ってないの?あの目で?嘘だあ。

翔も案の定『え?』みたいな顔してやがる。おもろい。


「…え?あの表情は怒っていたような…。」


翔も頷いている。


「怒っていません。」


圧かけられちゃった。目が怖い。すみませんでしたあ!


おそらく、両想いだろうし、2人のこれからを静かに見守っていこうと心に誓ったのだった。

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