第6話 推しへの報恩謝徳

 次の日、学校は普通にあったのだが、起きると体が重たかったので熱を測ると、37.9℃あった。そのため、学校を休むことにした。

 俺は寒空の中、コートを羽織っていても長時間外にはいないようにしようと心に決めた。いや、純粋に疲れがたまっていた可能性もあるな。どうだろう。


 夕方、インターフォンが鳴った。誰だ?きついのに。

 ドアを開けると、絶品料理を作れる魔法使い、もといお隣さんの姿があった。


「今日、学校を休んだようですが、何かあったのですか?」


 はて、別のクラスなのになぜ俺が休んだことを葵は知っているのだろう…?


「純粋に熱が出たから休んだだけだが。ということできついので、戻っていいか。」


 有無を言わせず戻ろうとすると、不意に後ろから手を引っ張られた。


「昨日の料理、どうでしたか?」


 自分でもそんなことを言うキャラではない自覚があるのか、顔を真っ赤に染めながら上目遣いで聞いてきた。何コレ、天使か何か?めちゃかわいいのだが?


『今更だけど、この子は何でVtuberなんかやってるんだろ。こんなかわいい見た目してんだから顔出ししてもよくね?』

 とか考えていたのだが、深くは考えないことにした。彼女にも事情があるのだろう。他人が土足で踏み込んでいい場所じゃないからな。他人に言いたくないことに一つや二つ、簡単にある。俺にもあるくらいだし。


「……ああ。めっちゃ美味かった!また作ってくれたら嬉しい。…これは催促してるとかじゃなくてだな…。ああ、その、気が向いたら作ってほしい。」


「なら、よかったです。//」


 相当照れているらしい。その証拠に、ご尊顔が紅に染まっている。正直、可愛すぎてやばい。何この生き物?ホントにヒト?別の生き物だったりしない?自分と同じ生き物だと思えない。

 実際、俺が見たことある女性の中で一番美人なのが葵なのは疑いようのない事実なのである。


 まあ、そんな感じでいろいろ考えていたわけだが、彼女が、

「すみません。引き留めてしまって。タッパを返すのは後日でいいので、ゆっくり休んでください。」


「すまん。本当にありがとう。風邪が治り次第、タッパは返すよ。」


 やっぱええ子や。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る