第4話 まさかの出来事

 今日はスーパーの特売日だ。俺は一人暮らしをしているため、よくスーパーへとやってくる。ただし、料理はできないため、行くのは惣菜コーナー、冷凍食品コーナー、お菓子コーナーの3か所のみだ。


 いつものように3か所を巡っていると、見慣れた(最近は)亜麻色の髪を見かけた。そう、我が隣人である。改めて見ると、すごい美人だな。マドンナと言われるのも納得できる。


 そういえば、彼女の紹介を意外とおざなりにしていた気がするのでこれを機会に紹介しよう。


 田中葵という人物は、容姿端麗、成績優秀、スタイル抜群の3拍子をそろえたような完璧な女性と巷では有名らしい。自校だけでは飽き足らず他校の生徒までもが彼女に告白しているのだとか。でも、彼女には浮いた話一つ聞かない。どころか男友達すらいないはずだ。もしいたら男たちの嫉妬の的だっただろう。


「田中さん、お買い物?」


 と、声をかける。


「はい。」


 簡潔な返事のみだった。どうしよう。声をかけたのは間違いだったかもしれない。なぜなら会話が続かないからだ。助けて。なんかデジャブを感じる。


 てか、「お買い物?」ってそうに決まってんだろ。ここ、スーパーだぞ。逆に、買い物以外に何すんだよ。


 また、ヤ〇―知恵袋に会話のキャッチボールできる方法聞いてみようかな。


 そういえば、前に書いた質問あれから見てないな。おっ1件回答がある。なになに、5W1Hを意識して話すと会話が続く。なるほど!さっそく実践してみるとしよう。


 意気込んだはいいものの、前を向くとさっきまでいたはずの葵の姿がない。どっかに行ったらしい。


 ちぇっ。せっかく試すチャンスだったのに。まあ、また今度試そ。



 その日の夜、レンチンすらめんどくさくて、某十数秒で栄養補給できるゼリーを夕食としてベランダで食べていると、葵がベランダへと出てきた。


「何食べてるんですか。」


「某十数秒で栄養補給できるゼリーだが何か?」


「まさかですけど、それが夕食とか言いませんよね?」


「そうに決まっているだろう?」


「は?食べ盛りの男性がそれだけ?信じられない。ちょっと待っててください。」


「ああ。」


 何で?コートを羽織ってはいるのだが、とてつもなく寒い。これっていつまで待てばいいんだろう?てか、律儀に待つ必要なくない?まあ、推しだから待つけど。


 ほどなくしてインターフォンが鳴った。思い当たる人物は1人だけだ。でも何で?


 ドアを開けると思った通りの人物がいた。




「余り物ですけど、今日の夕食にどうぞ。」


「ありがとう。」


「タッパは後日返却してください。」


「…ああ、それはいいが。何で?」


「不健康そうだったので、つい。PCを直してもらった恩もありますし。」


「そうか。ありがとう。ありがたくいただくよ。」


 といって家の中に入る。




 え、推しの手料理食べれるってこと?最高か?一生分の運を使い果たした気がする。


 前世で神でも助けたかもしれん。俺グッジョブ!


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