015 女商人の適正 裏話

 お分かりかと思うが、これまでのマエラとポメラのやりとりは、やらせである。

遥希がポメラに指示したことで始まった、マエラのための超大作フィクションであ

る。主演だけが事情を知らないだけの…


 フィクションということで、シナリオが存在する。


 ここまで大筋はシナリオ通りに進んでいるが、如何せん主演が何も知らず自分勝

手に動くのである、コントロールや軌道修正はするがシナリオはあってないような

ものだ。


 しかしイレギュラーに対応するために、出来得る限りの情報は集め、常に情報は

最新のものにアップデートしている。


 支店長の仕事もある中、ポメラは頑張っているのだ。


 集めた情報の中でも一番重要なのがマエラのスキルであった。それがわからなけ

れば、進めようがないほどに。


 ポメラは遥希に頼み込んだ。


 犯罪者ならまだしも、敵ではない者の個人情報を勝手に取得するのはリビール商

会では禁止されている。


 しかしポメラは、

「マエラは犯罪者ではないがリビール商会に敵対の感情を持っています、今後どう

転ぶかわからないからスキル情報が欲しい。とにかく計画を練る上で必須な情報で

す!」

 と、嘆願した。


 遥希も自分が指示したことであり、ポメラの言い分も一理あると判断したため、

あまり褒められた方法ではないのだが、特例として彼女のステータスを確認したの

だ。


 なぜそんなことが出来るのかは、後々説明したい。


 要するにマエラのスキルは、事前に遥希達により確認されていたということであ

る。


 一体、遥希達はこの二年間で何をしてきたのか。


 そして、この計画は基本的にポメラが一人で動いているが、インフォメーション

センターの従業員はマエラが商会に敵対の意思を持っていることは知っている。


 そんな人物が、ある日従業員として自分達の同僚として入ってきたら、もちろん

戸惑う。


 そのため従業員には彼女の事情を知らせ、レベルやスキル、リビール商会と教会

の関係について緘口令が敷かれている。


 インフォメーションセンター ヒューラ支店、いやリビール商会全体で彼女を温

かく見守っている状態なのだ。


 知らぬが仏である。


 もちろん彼女にはマーカの事は知らせていない。そして、支給されたスマホやタ

ブレットは機能が制限されたものであった。


 例えば、リビール商会内で人気の動画が見れなかったりする。


 果たしてポメラは、マエラを最高の結果に導くことが出来るのだろうか。


 ~~~~~


 今回もマエラは色々勘違いしてくれた。


 ポメラないしリビール商会は、マエラに対して精神操作などはしていなかった。

マエラがポメラに心を許してしまった理由、それは、ただただポメラの”ほんわか

わいい”容姿に心を奪われただけ。


 比較的小さな身長に丸くて小さな顔、少し垂れているつぶらな瞳に可愛い小さな

三角の耳。


 愛でるなという方が無理である。


「ポメラさん、ポメラニアンみたいだもんね。動きも小動物系だし、あれには慣れ

ていないと抗うことはできないよ。でも、それを精神に干渉されていると結びつけ

るなんて、ちょっと思い込み激しすぎない?」


「自ら勘違いしてくれているので、少し失敗してもバレずに済んだ場面もありまし

た。それを利用するのは少し気が引けますが、悪い事ばかりではありません」


 遥希の呟きに、狼獣人の女性がそう返す。


「それは確かに都合がいいかもね。でもさじ加減は間違えないで欲しいな」

 やりすぎは想像がつかないことを引き起こす可能性があるのだ。


 しかしそれとは別に、少し複雑な心境になっている女性がいた。


「つかぬ事をお聞きしますが、遥希様はポメラさんのような可愛らしい方がお好き

なのですか?」


 狼獣人の女性の言葉の返答には細心の注意が必要だ、遥希自身のさじ加減が試さ

れるのだが…この男、果たして気づいているのだろうか。


「一個人というより一般論ね。猫とか犬と小鳥とか、かわいい動物って見ていて心

が安らぐから」

 と、遥希は特に気にした様子もなく普通に答えた。


 それを聞いた狼獣人の女性は、眉間に入っていた力を抜いたのであった。


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お読み頂きありがとうございます。

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