014 女商人の適正 4

「あとお伝えするのはレベルについてですね」

 さすがに可哀そうになってきたポメラは話を進める。


「レベルの概念は二つあります。それは自身のレベルと、スキルのレベルです。説

明用のステータスウィンドウを映しますね」


 「最初からこっちでやればよかったですね」と言いながら、腰につけてる小物入

れから板状の物を取り出した。

「あ、これはタブレットって言います。マエラさんにも支給されますよ」


 そしてタブレットを操作すると、壁に取り付けられたディスプレイに次のような

ものが映し出された。

 ------------------------------------------------------------------------------

 名前:タロー・ヤマダ

 年齢:34

 種族:獣人

 身分:リビール商会従業員


 レベル:41


 スキル:樵

  レベル1 :直径30センチまでなら一回で伐採可能

  レベル2 :直径1メートルまでなら一回で伐採可能

  レベル3 :切った木を乾燥することができる

  レベル4 :工具を使わずに簡単な加工が可能

  レベル5 :伐採した木と同種の木を植樹できる

  レベル6 :どんなに太い木でも一回で伐採可能

  レベル7:工具を使わずに高度な加工が可能

  レベル8 :指定範囲の木を工具を使わず伐採できる

  レベル9 :木の成長促進が可能

  レベル10:切った木が自分のイメージした物に変化


 特性:


 能力:木登り

 ------------------------------------------------------------------------------


「これは実際にスキルが樵の方のステータスウィンドウを参考に作っています。

内容は編集していますし、レベル5以上は予想して書いています」


 と、前置きして以下のような説明を始めた。

 ------------------------------------------------------------------------------

 ・自身のレベルは1~100


 ・スキルレベルは1~10


 ・自身のレベルが10上がるとスキルレベルが1上がる


 ・自身のレベルが100になっても、条件を満たしていなければスキルレベル10は

獲得できない。その条件は不明


 ・自身のレベルは魔物を倒すことで上昇する


 ・自分より弱い相手をいくら倒してもレベルは上昇しない


 ・その代わりレベル上昇によって受ける恩恵は凄まじい


 ・自身のレベルが10以上あっても、スキルの詳細を認識していないとスキルは発

現しない


 ・スキルを得ると、自動的にスキルの使い方や知識が身に付く


 ・レベル20になれば達人級、レベル10も殆どいない


 ・レベル100は歴史を遡っても両手に収まるくらいしかいないらしい

 ------------------------------------------------------------------------------


 スキルやスキルレベルについてはさらに秘密があるのだが、ここでは割愛する。


「こんな感じですね。例えばマエラさんが、トレジャーハンターという言葉の意味

を知る前にレベル10になっても、スキルレベル1は発動しませんでした」

「ということは、今はトレジャーハンターが何なのかを知っているので、私のレベ

ルが10になれば自動的にスキルレベル1が発動するということですね?」


「その理解で合っています。ということで、マエラさんには今からレベル10に

なってもらいます」

「はい、わかりました。あれ?…レベルを上げるには…魔物…」


「ええ、魔物を倒してもらいます。リビール商会の従業員は全員経験しているの

で、頑張って下さい!もちろん私も経験済みですよ」

「私、戦いなんてしたことないのですが…」

 今まで魔物から逃げ回って来たマエラには、戦闘経験などあるわけがない。


「大丈夫です!リビール商会には”誰でもなれるレベル10”、通称”誰10”という育成

プログラムがありますので」

「ぷろぐらむ?ですか?」

 聞き慣れない言葉が度々出てきて戸惑うマエラ。


「プログラムというのは教育課程という意味です、リビール商会では独特な言葉が

色んな所で使われるので、それにも慣れて下さいね」

「はい…わかりました」

 マエラは力なく頷いた。


 だが、マエラは心の中でほくそ笑んでいた。強くなれるなら教会の力を利用して

やると。


 話はこれで終わったが、マエラには確認しなければならない、切実な問題が残っ

ていた。


「ポメラ支店長、一つ確認というかお願いがあるのですが。あの…私、恥ずかしな

がら今日から住む場所が無くなってしまいまして、社員寮はあったりするのでしょ

うか?なければ住む場所があればご紹介頂きたいのですが」


 今、マエラは宿無しなのである。


「以前ご説明していませんでしたね、リビール商会には無料の社員寮が完備されて

いますのでご心配なく。この後ご案内しますね」


 その回答にマエラは驚愕する。


「む、無料ですか!ありがとうございます、とても助かります。それと、私には敬

語は不要です、もうポメラ支店長の部下ですので」


「そうですよね、では私も支店長じゃなくてポメラさんでいいですよ。まだ私も自

分の立場に慣れていなくて」

 「いつも注意されるんですよ~」と、人懐こい笑顔で「えへへ~」と首を傾け

た。


 マエラは、この人の元でなら、とても充実した日々が過ごせるのではと、期待に

胸を膨らませていた。


 そこでマエラは、違和感を覚える。


 ”私、なんでこんなに心を許しているの?”と。警戒心が無くなってきているの

だ。


 ここは敵陣営、従業員全員が操られていたり、行動を縛られているかもしれない

のだ。表面上はともかく、心の中では敵と見做して行動すると決めたはず。


 それなのに、まるで親友と話すかのように接してしまっている。


 これは…既に自分も何かしらの影響を受けているのかもしれないと、青ざめる。


 しかしマエラは気づいた、気づけたのだ。今気づけたことはよかった。さもなけ

れば、精神操作によって教会に服従させられていたに違いない。


 マエラは気を引き締めて、寮へと向かった。


 そして翌日の午前中にスマホやタブレットの操作方法などをレクチャーされ、午

後の魔物討伐で簡単にレベル10に達し、トレジャーハンターのスキルレベル1を手

に入れたのであった。


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