第6話 気になる人
え~、もう、どう言うこと?
逸香はお風呂から上がってスキンケアしている時も、髪の毛を乾かしている時も、何故か公斗の事を考えていた。今日1日、全く考えることも思い出すこともなかったのに…
遡ること少し前。
大学の入学式のあと、仲良くなったお友達と履修届けの相談で集まったり、サークルの新歓があったり、一人暮らしを心配していた母が電話してきたり、憧れの一人暮らしを満喫しているうちにあっという間に4月は終わった。ゴールデンウィークに帰省した時は、家族で夕食を囲んだり、高校時代の友達と会って大学生活の話で盛り上がったりした。そして、この時、京都の別の大学に進学した翔に卒業式以来の再会をして、下宿の電話番号を教えてもらったのだ。
「向こうでもたまには会おうよ。電話するね。」
「おぅ~、かけてこいよ~」
気心の知れた友達が近くにいるってだけで、少し安心だ。行動力のある翔は、テニスサークルの新歓で知り合った先輩の紹介で、すでにアルバイトも始めていた。
ゴールデンウィークが明けると、逸香は翔の話も刺激となりアルバイトを探し始めた。せっかくなら4年間続けたい。アルバイト情報誌を見ると、ファーストフード店や居酒屋などの飲食業やアパレル関係の販売員、塾の講師、家庭教師などたくさんの求人があった。そんな中、ホテルのフロントに憧れていた逸香の目に止まったのがビジネスホテルのフロントだった。数件の募集があった中から条件の合いそうなところをピックアップして、電話をかける。
「もう決まりましたので。」
電話で断られるところもあったが、とりあえず数ヶ所の面接を受けた。どこも結構いい感触だと思ったのにお断りの電話ばかり続き、すっかり凹んでしまった逸香は、誰かに愚痴りたくて翔に電話してみたのだった。そして、逸香が「3」と「8」を見間違えたことで公斗と知り合うことになる。
不思議な縁で知り合った公斗。会ったこともない人なのに公斗の落ち着きのある低音の渋い声に、逸香は安心感を覚えていた。
1日の終わりに公斗のことを思い出したのは、今日のこと、公斗に聞いて欲しいからなのかも!でも、昨日、お互いに連絡先は交換したけど、ホントに連絡しちゃうと迷惑かな…?
そんなことを考えながら明日の授業の準備をしていると電話が鳴った。
「もしもし…」
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