第5話 アルバイト初日

翌日、授業を終えた逸香はバスに乗り、バイト先へ向かった。時間より20分も早く着いてしまったけど、とりあえず昨日面接してくれた中田係長にご挨拶に向かった。


「今日からよろしくお願いします!」


周りの人達の視線を感じ、面接の時より緊張して、少し足が震えた。


「ちょうどよかった、みんなに紹介するよ。」


近くにいた社員の方はみんな手を止めて、逸香に挨拶してくれた。


いい人達ばかり、よかった~。


研究所内で着用する白衣と名札を渡され、準備をする。白衣なんて何だか本格的。いよいよ働くんだと言う実感と責任感を感じ身が引き締まる思いがした。ユニフォームの効果ってすごい!!


逸香の担当する入力業務は受付管理と言う部署で、研究データの入力ではなく、研究所に届いた検体のカルテを作る仕事だった。検体番号や名前、生年月日などを入力していく。タイピングをマスターすればそんなに難しい仕事ではなかった。が、パソコンがド素人の逸香はキーボードのどこにどの文字があるのかさえ「?」で、一文字ずつ探しては打ち込み、探しては打ち込み…隣でブラインドタッチで作業を進めているベテランの佐野さんに圧倒されながら四苦八苦で初日を終えた。


「あ~~~~~~~、疲れたぁ~~~~」


慣れない仕事と緊張で疲れ果て、下宿に帰って自炊できる気がしなかったので、とりあえずお腹も空いたし、帰り道のスーパーで値引きシールが3枚重ねて貼ってある半額のお弁当を買った。


初日でこれかぁ~続くかな、、、、、?


テレビのニュースを見ながらお弁当を食べ、いつもはシャワーで済ませていたが、久しぶりに湯船にお湯を張ってゆっくり沈みこむ。想像以上に肩が凝っていた。


働くって大変…


湯船で肩を揉みながら、逸香はふと、バイト探しに苦戦したことがあると言っていた公斗のことを思い出していた。あの人はどんなバイトしてるんだろう?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る