第2話 学校

 『そうぞう』ということは創造魔法適正だ。創造魔法は無能な魔法と言われていた。だからその文字が浮かんだ途端に一部の大人からは蔑んだ目で見られ、変な同情もされた。リンとロンも目を合わせてくれなかった。


 その日は僕にとって最悪な誕生日だった。


「創造魔法ねぇ。まあ帝国内の三パーセント近くはその適正らしいしねぇ」


 などと隣のおばちゃんにも言われた。リンとロンも今日は何も話しかけてくれなかった。誕生日ケーキもなく、お父さんお母さんは僕の適性のことで教会に呼ばれていった。


 翌日、くよくよしていてもこれからこの適性といっしょに生きていかないといけないので、自分の得意なことはないか探してみた。


 すると思いついたのは、基本魔法だ。一〇歳から使っていいとされる基本魔法を本当に使えるか試してみたのだ。それにせっかくもらった杖も試してみたかった。


 本当に初心者用の魔法、火属性の魔法を使ってみることにした。この世界では魔法のイメージが本当に大切だ。庭に行って杖を立てたレンガに向ける。そして炎の玉のイメージをして呪文を唱える。


 熱くて輝いている炎の塊、真っすぐ進んでいってレンガにぶつかる・・・・・・


「ファイアボール《下級近距離火魔法》! 」


 すると杖の先から小さな炎の玉が出てきてそのままゆっくりとレンガにぶつかった。レンガが少し焦げたくらいだったが、僕にはこれまでに感じたことがないくらいの達成感が湧いてきた。


「もしかして、僕普通にすごい? 」


 そうやって自分の明るい未来を信じながら毎日を過ごしていくことにした。 


 そうやって気を紛らわしているのもつかの間、義務教育を受けに教会に行かないといけない日が来た。グレゴレオ帝国では一〇歳と少しから義務教育が始まる。義務教育と言っても読み書き、簡単な算数、そして魔法について学ぶ。


 一〇歳になった少年少女は十三歳までそれぞれの村の教会でほぼ毎日牧師さんから授業を受ける。


 そして誕生日から1週間後、初めて教会へ授業を受けに行った。教会に着くと肩身の狭い思いをした。もちろん僕が創造魔法適性ということは小さな村なのでみんなが知っている。


 リンとロンがあとからやってくると、僕を見るなりさっきまで二人で話していたのに黙ってしまった。


「おはよう」


 話しかけてみても目を逸らして離れていってしまう。ああ、無能の創造魔法適性だからって今まで仲良くしてきた友情も消えてしまうのか・・・・・・


 そして他の同い年の子も集まってきたが、みんな同じような反応だった。僕は一人でじっと席に座っていた。


 牧師さんが来ると授業が始まる。僕は文字の読み書きはできるので授業がつまらなかった。算数だって本当に簡単だ。だから教会の本棚にある魔法の本をずっと読んでいた。


 牧師さんもみんなから無視されている僕を気遣ってか、授業をまともに受けていない僕のことをほっておいてくれた。変に気をかけられるよりずっと気楽だった。


 でも、魔法の授業はしっかりと受けた。魔法は本当に面白い。始めの授業で、こんなことを牧師さんが言っていたのをよく覚えている。


「この世界の六割は魔力でできています。人間はもちろん、他の動物や植物、空気や水にも満ちています。そして魔力を使って、一〇歳のときに与えられた杖を使って、誰でも魔法を使うことができます」


 ここで大事なのは「誰でも」というところだ。魔法は<特別生活魔法>の適正に関係なく平等に使うことができるのだ。現に、誕生日の次の日、僕はファイアボール《下級近距離火魔法》を使うことができた。そして僕は魔法にのめり込んでいった。


 

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