第8話

 コントローラーを操作し、ダンジョンのカーソルを合わせる。後ろを振り返り、エリに確認すると彼女は無表情で俺を見つめていた。仕方ない。エリの言う通りにダンジョンを作成してみるか。俺はダンジョンにカーソルを合わせたまま、ボタンを押し込んだ。確認の文字が現れたので、再度ボタンを押し込む。画面上に、地図のような地形が現れ、民家と畑が点々と並んでいた。十字キーを押すと、☓印が動いた。


「井上さん」


 俺はエリに呼ばれ、彼女を見る。


「私たちが今いる空地があります。そこに合わせてください」

「なるほどね。これは上空から見た地図なんだ」

「その通りです」


 俺は空地に☓印を合わせ、決定ボタンを押した。『ここにしますか』と言われ、ボタンを押し込んだ。


「井上さん、あちらまで移動しましょう」

「どうして」

「ダンジョンの出現地点に近いからです」


 エリに言われるまま木の側に移動した。すると地響きのような音がし、遠くで犬が数匹吠える声が聞こえてきた。


 地面から黒くて巨大な物体が現れ、それは塔のように高くそびえ立った。見上げると、建物の頂上があり、その高さを眺めるのは首が痛くなるほどだった。


「現段階で、ダンジョンに入室するためには井上さんの許可が必要になります。設定で公開にするか、非公開にするか決定できます」

「公開とかよくわからんが、とりあえず中に入ってもいいのか?」

「あれが入り口になります」


 俺は黒い塔にある長方形の枠を眺めた。高さは三メートルほどだろうか、横は人が二人通れるほど。豪華な家の玄関の扉という感じだった。俺はその門に近づいた。


『ダンジョン作成のボーナスポイントを差し上げます』


 俺は機械音を聞いた。


「なんかボーナスポイントをもらったけど」

「ショップで確認してみてください」


 コントローラーを出現させ、ショップを開いてみると、1000ポイントの余りがあった。


「1000ももらってるぞ」

「そのポイントで、ダンジョン内にモンスターを配置できます」

「面白そうやん」


 俺はさっそくダンジョンに入った。中は真っ白で、壁も床も天井も白かった。階段が奥にあり、天井の上にさらなる階層があるように見えた。振り返り、エリを探すが彼女はダンジョン内にはいなかった。少し待ってみるが、付いてくる様子はない。そういえば、エリは許可がいるとか言っていたな。エリの入室許可が必要なわけか。ダンジョンを出ると、空き地に立っていた。犬が勢いよく吠えていて、犬から少し離れたところでエリは突っ立っていた。犬はリードに繋がれ、懸命にリードを引っ張っている少女がいた。短髪で、十歳くらいの子供だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る