第6話

 ぱっと見では赤いトカゲだった。身体は大きく、十メートルはある。いやもっと大きいかもしれない。対になる二枚の羽を生やしていた。眼光は鋭く、三日月のように尖っていた。それが飛行船から見たドラゴンの様子だった。もちろん、拡大して遠目から見ているので、すぐそばにはいなかった。


「旋回ってどうやってやるんだ?」


 俺はエリに尋ねた。


「旋回はそちらになります」


 俺はエリに言われた通りに旋回のボタンを押そうとした。


「ドラゴンを倒すとポイントを得られますが、飛行船のステータスだと、こちらが撃墜される可能性は10%もありません」


 俺にドラゴンと戦えと言っているのだろうか。そんな危険はごめんだ。あるゲームでは10%でも敵の攻撃を受けたことがある。俺は確率というものを信じないのだ。


 旋回のボタンを押し込むと、エリが一歩そばに寄ってきた。


「ドラゴンは10000ポイント手に入れられます。この先、ポイントがなければ人生に詰む可能性もあります」

「人生にはもとから詰んでるから」

「左様でございますか」

「あ、もううるせえな」


 俺はエリに八つ当たりをし、飛行船を旋回させた。飛行船の視界は360度ぐるりと見回すことができるのだが、後方から赤い物体が接近しているのがわかった。


「エリ、ドラゴンきてるじゃん」

「戦うしかありません」

「戦うって」


 エリは隣の席に腰掛ける。


「操縦と射撃、どちらが得意ですか?」

「どちらかといえば射撃だけど」

「操縦権限を頂きます」


 エリが操縦をすると、ぐるりと飛行船が旋回し、目の前に大きなドラゴンが現れた。ドラゴンは大きな口を開き、こちらに向かって火を吐いてきた。視界が真っ赤に染まり、俺は手で目を覆った。


「井上さん」


 エリに呼ばれる。飛行船はぐるりと移動し、ドラゴンを振り払おうとした。


「ドラゴンを迎撃してください」

「どうやって、その、ボタンだよ」

「コントローラーを召喚してください」


 俺は言われるがままに、コントローラーを呼び出す。適当にボタンを連打すると、視界が反転した。エリは慌てて操縦をして、ドラゴンを追った。俺が再度ボタンを押すと、再び景色がぐるりと回転したが、次にはドラゴンの背中を捉えていた。そしてドラゴンに向かって真っ白い閃光が飛んでいった。ドラゴンは消滅し、俺はふうっと息を吐いた。


「井上さん、◯ボタンがレーザーガンで、他のボタンを押すと、ワープやステルスを使用してしまうので、注意してください」

「倒したからいいだろ」

「もっと強力なモンスターが待っているかもしれないので、井上さんも上手になってください」

「わかったよ」


 ドラゴンを倒し終えると、視界には家々が映り込んでいた。広い空地がある。そこに飛行船を着陸できそうではあった。

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