第4話

 アパートの扉に手をかけるが、頭に過ったのは放射能汚染だった。恐らく核兵器が使用され、辺り一面が焼け野原になったのだ。世紀末さながらで、一歩でも外に出ると放射能に汚染されて死んでしまうと思った。掛けた手を引っ込めると、再びゲーム機のコントローラーを呼び出した。


 ショップを開き、飛行船の購入をしてみる。恐らくこれがないとこの部屋から脱出できない。100のマスターポイントを消費した。手持ちのポイントはなくなり、ステータスを開いてみた。


 所有物


『飛行船』


 という項目が加わり、操作してみると、飛行船を選択することができたのだ。


『ステータス』


 飛行船 


 レベル1


 耐久 1

 射程 1

 速度 1


 …出撃 


 1という数値が低いのか高いのか判断がつかなかった。スキルの欄を見てみると、同じように『飛行船』という項目があって操作してコントローラーのボタンを押し込んでみると、飛行船のスキルが現れた。


『スキル』


 飛行船


 レーザーガン レベル1

 ステルス機能 レベル1

 ワープ移動  レベル1


 同じように数値が並んでいるのを見て、少し考えて結論が出た。1という数値は低いのではなく、初期値のようなものだろう。つまり性能は低くはないが、成長は見込まれるということだ。飛行船のスキル項目を閉じると、再びステータス画面を開いて、出撃の項目を押し込んでみた。


 周りの景色ががらりと変わり、薄暗くなった。明かりは灯っているが、ぼんやりとした暗さがあった。前方に大そうな椅子があった。黒くて、パイプ椅子のような安っぽい代物では全然なかった。その前にハンドルと、操作パネルのようなものがあった。透き通った中に文字が羅列してあるのだ。

 観察していると、ふと後ろから声を掛けられた。


「マスター」


 振り返ると、小さな女の子が立っていたのだ。青髪のツインテールに、耳には何か機械のようなものをはめていた。ヘッドフォンをより小さくしたものだ。綺麗な顔立ちをしていて、思わず見とれてしまった。服は白くてすらっとしてる。綿繊維ではなかった。女の子は再び口を開いた。


「アクセスコードを確認。プログラムを制御中。GP19456。呼びやすい名前を選んでください」


 呼びやすい名前と言われ、恐らくこの女の子はこの飛行船の管理者なのだろう。操縦もこの子がしてくれるのだろうか。


「エリでいいかな」

「エリ、確認が取れました」


 エリとは昔飼っていた猫の名前だった。人懐っこく、黒い猫だったが、十年前くらいに突然といなくなってしまった。

 

「マスターのお名前をお聞かせください」

「井上でいいよ」

「井上様ですね」

「様とか敬語を使わなくていいから」

「分かりました。飲み物は何か飲まれますか」

 

 エリはそう言って操縦席とは反対側のほうへと向かった。俺はその後ろ姿を目で追った。


 


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