第11話 ヤドリ蔦の切望
チャ、と弓丸の
「で、歩道橋にいた妙なガキが
「ゆ、弓丸、この人と会ったことあるの?」
「いや。藍果は?」
「私もない……と思うんだけど」
なんとなく、なんとなくだけれど、どこかで見たことがあるような。ただ、これだけは断言できる。私は、この男に名前を教えたことは一度もない。
男は、笑みとも
「藍果ちゃんもどうだ? こいつはヤドリ
周りの壁の
「あ、の……っ! 瀬名は、アヤちゃんは、無事なんですか!」
「藍果」
弓丸が、刺激するなとでも言うように小声で私を制する。けれど、黙ってなんていられなかった。
「瀬名ちゃん、
コツン。
からん。
棘の先から
「なぁ。俺のこと、助けてくれよ」
「えっ……え?」
肘を立て、男がゆっくりと上体を起こす。
「あの女の子達のことをさぁ、心配するみたいに。俺にも、大丈夫かって言ってくれ」
穴が空き、薄汚れたTシャツにほつれた半ズボン。それから、毎朝のゴミ出しで嗅ぐにおい。
「……ふ、ふ。俺の身の上バナシってやつ、教えてやろうか。なぁ」
ざんばらに切られ、使い古した
「この実を渡してくれた
「……あ」
思い——出した。私は、この男を知っている。
いつも通り抜けする公園のそばに、
彼はヤドリ蔦の実を投げ捨てて、肩を
その声に一瞬気を取られ、弓丸の反応がわずかに遅れる。
圧倒的な攻撃の密度——太刀の一振りでさばききれる量ではない。
弓丸は止めたのに、私が、この男を刺激してしまったから。そもそも、もう失うものがない彼に、もう人の体さえ
「動くな藍果!」
弓丸の声が響き、次の瞬間視界が黒く塗りつぶされた。
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