第10話 灯火の影裏
矢が突き立てられた弓丸の脚。白い袴がじわじわと赤く染まっていく。
「な、にを……」
「これで、大丈夫……だから」
弓丸は
「これは、己を
「だ……だめだよ、そんなことしちゃ」
「どうして」
「どうしてって……」
「傷はすぐに治る。ほら」
弓丸は
「あんまり使うと反動が大きいから、一日に一回までって決めてる。別に問題はないだろう。今の人間がよく飲んでる、えーっと……そう、エナジードリンクみたいなものだと思ってくれればいい。効果が消えれば、またこの首飾りのところに現れるし。こうやって手首につければ、ブレスレットにもなるから便利だし」
「そういうことじゃないの、私が言いたいのは、そうじゃなくて」
文字が頭の中でもつれ合って、何を言えばいいか分からない。私が固まっているのを見てとると、弓丸は
***
右側の壁に
「ねぇ、ライト付けてもいい?」
「うーん……」
弓丸は壁の灯火を見つめていて、生返事しか返してこない。もう一度尋ねようと口を開いたとき、コツン、とつま先に何かが当たった。
「……
拾い上げてみれば、外側の
一つは、殻の色が白いこと。もう一つは、なぜこんな洞穴の中に落ちているのかということ。
コツン。
からん。
さらに一歩踏み出せば、また靴の先で乾いた音が転がる。
「ねぇ弓丸、変なものが……」
拾おうとしてしゃがんだそのとき、弓丸が太刀を抜きながら鋭く叫んだ。
「そのまま伏せてっ!」
ぱあん、と銃声にも似た破裂音が鳴り、何か大きな
「こっちに!」
打ち砕かれた岩の
「な、なんなの今の」
「構えて。次が来る」
今度ははっきりと視認できた。棘の生えた蔦が
「これ、かすりでもしたら」
「ああ。間違いなく皮は裂け、肉もごっそり持っていかれる。出血多量で死ぬんじゃないか」
「だよねぇ!」
通路から飛び出した先には、
弓丸は、太刀を
「すまないが、道を
出入り口の前には、死体のようにうつろな目をした年齢不詳の男が一人——その体を岩肌に投げ出して、うつ伏せに寝そべっていた。男の頭の近くには、手頃な石と割られた殻、取り出された実がいくつも転がっている。
穴の空いたTシャツ、ほつれた半ズボン。そこから伸びる両脚は、すでに人の肉の形をしていなかった。
「あ——あぁ。
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