第9話 昇格試験

数々の依頼をこなして成長してきたレオたちは、ついに冒険者ランクの昇格試験に挑むこととなった。彼らはこれまで青ランク—狼の紋章—として活動してきたが、次の緑ランクである熊の紋章を目指すため、今回の昇格試験に挑むこととなった。




冒険者ランクの仕組みには7種類のランクが存在する。冒険者として活動するための最初のランクである白ランクはウサギの紋章を持ち、初心者が基本的な経験を積むためのものだ。次が青ランクで、狼の紋章を持ち、ある程度の経験を積んだ冒険者が属する。続いて緑ランク(熊)は中堅の冒険者で、より高度な任務に挑戦する段階だ。


さらに上位には、熟練の冒険者が属する黄ランク(鷲)、難易度の高い魔物の討伐や重要な任務に従事する赤ランク(虎)、エリート冒険者で都市や国家の依頼を受ける紫ランク(龍)、そして伝説とされる冒険者のみが到達できる黒ランク(鳳凰)。このランクは国家レベルの問題にも関与し、その名声は他の冒険者たちの憧れである。


昇格試験当日、レオたちはギルドの試験会場へと向かった。今回の昇格試験は個人ごとの試験であり、それぞれの冒険者に一人ずつ審査員がつくことになっていた。試験内容は指定されたエリアで対象のモンスターを討伐することだ。


試験が始まる前、レオたちは集まって最後の話を交わしていた。「みんな、ここまで来たんだ。絶対に緑ランクに昇格しよう!」レオがそう言うと、仲間たちは大きく頷いた。


「レオ、お前がやるなら俺もやるぜ!」レイが拳を突き出し、他の仲間たちもそれに続いた。


「絶対に負けないわ、みんなで次のステージに行くのよ!」アルティが強気な笑顔を見せ、エヴァやヴァンス、バル、リスもそれぞれの決意を込めた表情を浮かべた。


「また後で会おうな、みんな!」レオが声をかけ、全員で笑顔を交わし合った後、それぞれの試験エリアへと向かっていった。


レオは砂漠エリアに配属され、彼の担当審査員であるカイロスと共に移動を開始した。「君の成長を見せてもらうよ、レオ」とカイロスが穏やかな口調で言うと、レオは少し緊張しながらも頷いた。「はい、全力を尽くします。」


砂漠エリアに向かう道中、カイロスはレオに色々と質問を投げかけていた。「これまでに多くの依頼をこなしてきたが、その中で一番印象に残っているのは何だ?」


レオは少し考え、「やっぱり初めての魔獣討伐ですね。あの時は仲間たちと協力してやっとのことで勝利を収めました。自分一人では絶対に無理だったと思います」と答えた。


カイロスは満足げに頷き、「仲間との絆か。それは大切なことだな。今日の試験も、君自身の力と同時に、召喚獣であるエアロとの連携が試されるだろう」と言った。


レオはエアロを振り返り、「エアロ、今日は頼むぞ」と声をかけた。エアロは空中を舞いながら、「もちろんさ、レオ。僕たちは一緒にやってきたんだ。今日も全力でサポートするよ」と答えた。


砂漠エリアに到着すると、レオは周囲を警戒しながら進んでいった。砂嵐が吹き荒れる中、審査員のカイロスは少し離れた場所からレオの行動を見守っていた。「砂漠は視界が悪い。周囲の状況に気を配りながら進むんだ」とアドバイスを送る。


エアロが上空から警戒を続ける中、突然砂の中から巨大な砂蠍が姿を現した。「来たぞ、エアロ!」レオが叫び、エアロはすぐに空中で位置を取り直した。


砂蠍はその大きなハサミを振り上げ、レオに向かって攻撃してきた。レオはその攻撃をかわしながら、「エアロ、風の刃で牽制してくれ!」と指示を出した。エアロは風のエネルギーを集め、鋭い風の刃を放ち、砂蠍の動きを制限しようとした。


しかし砂蠍は驚くほどの耐久力を持ち、風の刃を受けても怯む様子はなかった。レオはその様子を見て、「くそ…硬いな。どうやって突破口を見つければいいんだ…?」と心の中で焦りを感じた。


「落ち着け、レオ。相手の動きをよく観察するんだ」とカイロスが冷静に声をかけた。その言葉にハッとしたレオは、砂蠍の動きをじっくりと観察し始めた。


「エアロ、もう一度上空から視界を確保してくれ。こいつには隙があるはずだ。」レオがそう言うと、エアロは砂蠍の周囲を旋回し、その動きを見極めた。「レオ、腹部の下が隙だらけだ!あそこを狙え!」


「よし、わかった!」レオはエアロの指示に従い、砂蠍の攻撃を避けながら一気に腹部に向かって突進した。剣を渾身の力で振り下ろし、砂蠍の柔らかい部分に深く突き刺すと、砂蠍は大きくのたうち回り、そのまま力尽きた。


レオは息を切らしながら立ち上がり、砂に覆われた剣を見つめた。「やったか…?」


カイロスが近づき、満足げに頷いた。「よくやった、レオ。君の冷静な判断とエアロとの連携が勝利をもたらしたんだ。」


レオはエアロに微笑みかけ、「ありがとう、エアロ。お前がいなかったら無理だったよ。」エアロは羽ばたきながら、「僕たちはチームだろ?これからも一緒に頑張ろう」と応えた。


カイロスはレオの肩を軽く叩き、「これで君も緑ランクに昇格だ。次のステップでもこの調子で成長していけ」と激励した。


レオはカイロスに感謝の意を示し、砂漠エリアから共に戻っていった。


レオが無事に昇格試験を終えた後、他の仲間たちもそれぞれの試験に挑んでいた。


レイは山岳エリアに配属され、彼の担当審査員であるオルフェウスと共に試験を受けていた。山の険しい地形を進む中、レイは地属性の召喚獣グラウンドと共に巨大な岩ゴーレムに立ち向かった。


「レイ、ゴーレムの動きは鈍いが、その分力は強力だ。正面からの攻撃は避けるんだ」とオルフェウスがアドバイスを送る。


レイはグラウンドに指示を出しながら、岩ゴーレムの弱点を探った。「グラウンド、あいつの足元を崩して動きを鈍らせるぞ!」


グラウンドは地面に力を送り、ゴーレムの足元を揺るがした。岩ゴーレムがバランスを崩し、その隙にレイは鋭く剣を振り下ろし、見事に弱点を突いて勝利を収めた。


オルフェウスはその戦いぶりに目を細め、「見事だ、レイ。チームプレイだけでなく、個々の力も強くなったな」と賞賛した。


アルティは火山エリアでの試験に挑んでいた。彼女の審査員であるセリーナは、炎のエリアでの戦闘に適応するための指導を行った。


「アルティ、このエリアの熱さを恐れずに魔法の力を使うのよ」とセリーナが励ました。


アルティは火属性の召喚獣フレアと共に、炎の魔物であるマグマスネークに立ち向かった。フレアが火の盾を作り出し、アルティが魔法で魔物を攻撃する連携で、徐々にマグマスネークを追い詰めていった。


「フレア、あと少しよ!全力で行くわ!」アルティが叫び、フレアが燃え上がる炎を纏って突進し、魔物を一気に倒した。


セリーナは満足そうに頷き、「素晴らしい連携だったわ、アルティ。炎を操る力がますます強まっている」と評価した。


バルは森のエリアで試験を受けていた。審査員であるルーファスと共に、バルは金属性の召喚獣アルケンと共に巨大な森の番人トレントと対峙していた。


「バル、相手の動きを止めることが鍵だ。アルケンの突進でバランスを崩すんだ」とルーファスが指示を出した。


バルはアルケンに向かって指示を送り、アルケンはその巨体を活かしてトレントに突撃。トレントの動きが鈍った瞬間を逃さず、バルはその隙に全力で攻撃を加えた。


「よし、決まったな!」バルは息をつきながら、アルケンに感謝の言葉をかけた。


ルーファスは笑みを浮かべ、「勇気ある判断だったな、バル。君の成長を感じたよ」と声をかけた。


エヴァ、ヴァンス、リスもそれぞれ自分のエリアで試験を受けていた。彼らもまた自分の召喚獣と連携し、それぞれの戦いを繰り広げ、無事に試験を終えることができた。


レオたちは試験が終わった後、再び集まり、お互いの健闘を称え合った。「みんな、無事に昇格できてよかったな!」レオが笑顔で言うと、仲間たちも次々に笑顔を見せた。


「これからは緑ランクだね、次はもっと難しい依頼が待ってるかもしれないけど…みんなで頑張ろう!」アルティがそう言うと、全員が力強く頷いた。


試験終えた後、レオたちはいつも通り酒場に集まっていた。皆の顔には達成感が満ちており、お互いの健闘を称え合う声が飛び交っていた。


「お疲れさま、レオ!お前も見事だったな!」レイがグラスを掲げて言うと、レオは照れくさそうに微笑み「ありがとう、レイ。お前も最高だったよ」と返した。


「レオもよくやったよ。砂蠍なんて大変だっただろ?」とヴァンスが肩を叩いた。「ああ、エアロの助けがあったから何とかなったよ」とレオは笑顔で応じた。


アルティも隣で「フレアと一緒に頑張ったわ。次はもっと強い魔獣でも負けないわよ」と自信たっぷりに言った。レオは彼女に向かって頷き、「そうだな。俺たちならやれるさ」と応じた。


周りにいた他の冒険者たちも、昇格試験を無事に終えたレオたちを祝福し、賑やかな雰囲気に包まれていた。「よう、新米ども、緑ランク昇格おめでとう!」と祝いの言葉をかけつつも、皮肉交じりに「次はもっと大変な任務だぞ、覚悟しとけよ」と茶化す冒険者もいた。笑顔でビールジョッキを掲げる先輩冒険者たちの姿に、場の雰囲気はますます和やかになった。


「まあまあ、今日くらいは楽しませてくれよ!」とレイが豪快に笑いながらジョッキを掲げ、みんなもそれに応じて乾杯した。


酔っ払ったレイ、ヴァンス、バルは次の難易度の依頼について熱く語り合っていた。「今の難易度じゃ物足りないんだよな、もっと刺激が欲しいぜ!」とレイが不満を漏らすと、エヴァが少し苛立った表情で「無茶をするんじゃないわよ、まだ練習が必要なんだから」と反論した。


ヴァンスもレイの意見に同調した。「そうだ、もう今の難易度じゃ物足りないんだよ!」


バルも勢いに乗って、「もっとデカい獲物を狙わないと成長しないだろ?」と言い、三人は酔いに任せて高難度の依頼を主張し始めた。


「ちょっと待ってよ。まだ早いんじゃない?」アルティが冷静に言うと、「何だよ、アルティ。ビビってんのか?」とヴァンスが冗談交じりに言い返した。


「ビビってなんかいないわ。ただ、無謀な挑戦をして全滅したら元も子もないでしょう?」アルティの言葉に、リスも頷いた。「俺たちはまだ経験が足りない部分もあるし、無理してもいいことはない。」


しかし酔いが回っていたレイたちは、「そんなこと言ってたらいつまで経っても強くなれないだろ!」と声を荒げて反論し、口論はヒートアップしていった。


レオはその様子を見てため息をつきながら、仲間たちの間に入った。「みんな、落ち着けって。アルティの言うことも一理あるし、無理は禁物だ。でも、レイたちの言う挑戦したい気持ちもわかる。」


その言葉に全員が少しずつ落ち着きを取り戻し、バルがぼそりと「まあ、酔って言い過ぎたかもな…」と呟いた。レイとヴァンスも「悪かった、アルティ。少し熱くなり過ぎた」と謝り、アルティも「いいのよ、私も言い方がきつかったわね」と微笑んだ。


ヴァンス真顔で「でもさ、俺たちは成長してるんだぜ?もっと挑戦する価値はあると思うんだ」と言い返し、バルも「そうだ、俺たちならできる」と続けた。そのやり取りを見ながら、リスは「まぁ、もっと高みを目指すのはいいけど、ちゃんと計画的にやろうぜ」と冷静にまとめ、口論が落ち着いた。


酒場での夜が更けていく中、レオたちはこれからの冒険について話し合っていた。「次はどんな依頼にしようか?」とリスが問いかけ、エヴァが「無理のない範囲で、でも成長できるものがいいわね」と提案した。


「そうだな、俺たちならもっとできる。だけど慎重に行こうぜ」とレオが言うと、全員が同意して頷いた。


こうして、レオたちは次の冒険に向けて気持ちを一つにし、再び新たな挑戦を始める準備を整えたのだった。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る