第10話 名声の広がり
数々の依頼を次々とこなしていく中で、レオたちの名は徐々に冒険者ギルド内外で知られるようになっていった。その腕前とチームワーク、召喚獣との連携の見事さが評判を呼び、ついには国境を越えて彼らの名声が広がり始めた。
ある日、ギルドでの依頼掲示板を見ていたレオたちに、見知らぬ冒険者が声をかけてきた。
「お前たちが最近話題のチームか?熊ランクであのウォータードラゴンを倒したって話、聞いたぜ。」
その冒険者は興味深げにレオたちを見つめ、続けて言った。「俺たちの国でも、お前らの噂が広がってるんだ。近頃は誰もが『光と影の旅団』って名前を耳にしてるよ。」
レオは少し驚きながらも照れくさそうに笑った。「そんなに有名になったのか。俺たち、ただ全力で依頼をこなしていただけなんだけどな。」
アルティが横からくすっと笑って、「有名になるのはいいことだけど、無理をしてはダメよ」と軽く釘を刺した。
「そうだな。でも、もっと強くならないとな。もっと高いランクの依頼も受けられるように、頑張らないと」とレオは決意を込めた表情で答えた。
ギルド内では、レオたちの実力が噂になっており、特に黄ランクである「鷲の紋章」でも苦戦するジャイアントパイクスネークの討伐や、西にあるゼンキの洞窟で新たなルートを開拓するなど、緑ランクの「熊の紋章」では達成が難しいとされていた依頼を次々とクリアしていたことが話題となっていた。他の冒険者パーティーやギルド職員たちがその噂話をしている場面も増えてきた。
「おい、聞いたか?あの『光と影の旅団』、ジャイアントパイクスネークを倒したらしいぞ。緑ランクじゃ普通は無理だろうに…」
「しかも、ゼンキの洞窟で新しいルートを見つけたんだってさ。あいつら、本当にただ者じゃないな、ついこの前まで駆け出しだったのにさ。」
ギルド職員も感心しながら噂をしていた。「あのチームは着実に強くなっているわね。次は黄ランク以上もこなせる可能性があるのじゃないかしら。」
そんな折、ギルドマスターからレオたちに特別な依頼が舞い込んできた。それは隣国の都市からの依頼で、ホビット遺跡の調査とそこに巣食う魔獣を討伐してほしいというものだった。遺跡には様々なトラップが仕掛けられており、そのために国を越えて優秀な冒険者を求めていたのだ。
「これが君たちへの依頼だ、レオ。隣国のホビット遺跡の魔獣討伐だが、君たちならやり遂げられるだろう。隣国の信頼を得るいい機会だ」とギルドマスターは真剣な眼差しで語りかけた。
レオは仲間たちと視線を交わし、うなずいた。「一度仲間たちと相談します。僕にとっても大きな挑戦ですけど、ほかのメンバーの話を聞いてから決めようと思います。返事はまた今度でもいいですか?」
ギルドマスターの言葉を受けた後、レオたちはギルドの一角に集まり、国際依頼を受けるべきか真剣に話し合った。
「ホビット遺跡って、かなり危険な場所だって聞いたことがあるわ」とアルティが不安げに言った。
「俺たちならやれる。ここまで数々の依頼をこなしてきたし、実力もついてきてるはずだ」とレイが自信満々に答える。
「でも、今回の依頼は隣国からのものだ。失敗すれば、俺たちだけじゃなくギルド全体の評判にも影響する」とヴァンスが慎重に意見を述べた。
「だからこそ、成功させる価値があるんだ」とレオが力強く言い、仲間たちはそれに頷いた。
「みんなで協力すれば、きっと乗り越えられるはずだよ」とエヴァが優しく微笑んだ。
最終的に、レオたちは依頼を受けることを決断し、ギルドマスターにその旨を伝えた。
「そうか、君たちの決意は固まったようだな。期待しているぞ」とギルドマスターは満足げに微笑んだ。
遺跡に挑む前に、手分けして準備を始めた。
ヴァンスとリスはホビット遺跡に関する情報を集めることにした。二人はギルドの図書館や歴史家の元を訪れ、遺跡の構造やトラップの配置に関する資料を必死に探し出した。
「この遺跡にはホビットたちが残した独特な仕掛けがあるらしい。特にトラップの場所は重要だな」とヴァンスが古びた地図を指差しながらリスに説明した。
リスは頷きながら、「この情報を活かせば、少しは進みやすくなるかもしれないね。でも、実際に遺跡の中に入ると状況が違うこともあるから、慎重に行こう」と答えた。
レオ、エヴァ、バルの三人は必要物資の買い出しに出かけた。市場や道具屋を巡りながら、依頼内容について話し合う。
レオは道具屋でロープや松明を手に取りながら、「今回の依頼はかなり厳しいものになりそうだ。」と言った。
バルは同意しつつ、「必要なものは全て揃えておかないとね。少しでも油断すると大変なことになる」と言って荷物を確認した。
「罠を解除するための道具はしっかり揃えておこう。あとは傷を負ったときの応急処置用具も必要だね」とバルが言うと、レオが頷いた。
「それと、食料も必要だな。遺跡内は何日かかるかわからないし、備えは十分にしておかないと」とレオが言い、エヴァも同意して必要な食料を選び始めた。
「こうやって物資を揃えるのも冒険の一部だよね」とエヴァが微笑むと、レオは「そうだな。でも油断すると命取りになるから、しっかり準備しないと」と真剣な表情で答えた。
市場では、騒がしい人々の声が響いており、レオたちはその中でしっかりと必要な物を揃えていった。 三人は市場を歩きながら、少しずつ準備を整え、ホビット遺跡の挑戦に備えて万全の態勢を整えていった
レオたちは、ホビット遺跡への挑戦に向け、十分な準備を整えた後、ついに遺跡に突入することとなった。ホビット遺跡はその名の通り、小柄なホビットたちが築き上げた古代の遺構であり、多くの冒険者たちが訪れては命を落としてきたと言われている場所である。レオたちにとって、これは国際的な依頼であり、初めての大きな挑戦でもあった。
レオたちは3日かけて隣国に向かい、ホビット遺跡へと足を踏み入れた。遺跡の内部は迷宮のように入り組んでおり、様々なトラップが彼らを待ち受けていた。
遺跡の入り口に立つと、レオたちはその壮大な雰囲気に圧倒された。遺跡の門は高く、精巧な彫刻が施されており、どことなく神聖さが漂っていた。
「すごいな、これがホビットたちの遺跡か...」とレオがつぶやいた。
「気を引き締めていきましょう。これから先、何が待ち受けているかわからないわ」とアルティが注意を促す。彼女の言葉に、仲間たちは一層真剣な表情を見せた。
「エアロ、周囲の様子を探ってくれ」とレオが召喚獣である風属性の鷹、エアロに指示を出す。エアロは翼を広げ、空高く舞い上がり、周囲を見渡した。
「問題はなさそうだ。ただ、油断するなよ」とエアロの声が響いた。
遺跡の中は薄暗く、ランタンの光が頼りだった。壁には古代の文字やホビットの絵が描かれており、彼らの生活の痕跡が伺えた。進んでいくと、足元に仕掛けられたトラップが発動し、突然矢が飛び出してきた。
「危ない!」
レイがとっさに盾を構え、仲間たちを守る。「みんな、足元に気をつけろ!ここにはまだまだトラップがありそうだ」とレイが声をかけると、バルが慎重に周囲を見渡した。
「古代のホビットたちはどうやら侵入者を嫌っていたようだな...でも、俺たちは引き下がるわけにはいかない」とバルが意気込んで言った。
遺跡の内部には、これまで以上に複雑で巧妙なトラップが仕掛けられていた。足を踏み入れるたびに床が動き、突然石の壁が迫ってきたり、地面から火柱が吹き上がったりと、彼らは常に緊張を強いられた。
「このままだと時間がかかりすぎるな...誰か道を見つける手がかりは?」アルティが苛立ちを隠せない様子で言う。
「リスが集めてくれた資料によると、奥に進むにつれて罠の数が増えるらしい。慎重に行動しよう」とヴァンスが冷静にアドバイスする。
しかし、進んでいくうちに、パーティーメンバーの間で意見が割れる場面も出てきた。「もっと早く進むべきだ」というレイの意見と、「慎重に行動しなければ命取りになる」というヴァンスの意見が対立した。
「俺たちはここで終わるわけにはいかないんだ!」とレイが声を荒げる。
「焦ったら罠にかかるだけだ!慎重に進め!」とヴァンスが反論する。
その結果、一時的にパーティーが二手に分かれて行動することになった。レオは内心、不安を感じながらも、仲間たちの決断を尊重するしかなかった。
二手に分かれて行動している間、レオたちは幾度となくモンスターと遭遇した。孤立した状況での戦いはこれまでとは異なり、非常に厳しいものだった。レオはエアロのサポートを受けながら、巨大なスライムに苦戦し、アルティもまたフェニックスのフレアと協力しながら火属性のトラップを突破していた。
「エアロ、あいつの動きを止めてくれ!」
レオが叫び、エアロが風の刃を放つ。しかし、スライムは再生力が高く、なかなか倒せない。レオは体力が削られていく中で、仲間たちがどれだけ自分を助けてくれていたかを痛感していた。
一方で、ヴァンスとリスのチームもまた、突然現れたゴーレムに苦戦していた。ヴァンスは雷属性の攻撃でゴーレムの動きを封じるが、その反撃で大きな傷を負ってしまった。
「くそっ、やっぱり皆が揃っていないと厳しいな...」とヴァンスは悔しげに呟いた。
そんな中で、レオたちは互いの存在の重要さを改めて感じ取り、再び合流することを決意した。再会した瞬間、レオたちは言葉にならない感動を覚え、自然と笑顔がこぼれた。
「もう二度と分かれるなんて言わないわ。みんながいてこその私たちだから」とアルティが涙を浮かべながら言った。
「そうだな。みんなで力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ」とレオが力強く答えた。
再び一つとなったレオたちは、ホビット遺跡の奥深くへと進み、最後に待ち受ける魔獣との戦いに挑んでいった。
遺跡の最奥には、巨大なリザード型の魔獣が待ち受けていた。その体は硬い鱗で覆われ、通常の攻撃では歯が立たなかった。
「エヴァ、サポートを頼む!」
レオの叫びに応じて、エヴァが治癒の光を放ち、仲間たちの傷を癒していく。「みんな、まだいけるわ。最後まで諦めないで!」
レイが前衛で盾を構えながら、「俺が奴の攻撃を引き受ける!その間に攻撃を集中させろ!」と叫ぶ。バルもまた力強く頷き、金属性の力を込めた攻撃で魔獣の動きを封じた。
アルティが新たに習得した火属性の魔法で一気に攻撃を加え、リスとヴァンスがその隙をついて弱点を狙う。
「今だ、全力で行け!」
レオの指示で、全員が一斉に攻撃を仕掛け、ついに巨大なリザード型の魔獣を討伐することに成功した。
遺跡の出口にたどり着いたレオたちは、満身創痍ながらも達成感に満ちていた。互いに肩を叩き合い、笑顔で労いの言葉を交わす。
「これでまた一歩、成長できたな」とレオがしみじみと言うと、アルティが微笑んで答えた。「ええ、これからも一緒に頑張りましょう、レオ。」
レオたちはギルドへと帰還し、その功績を報告するため、再び大きな街へと向かうのだった。
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