第8話 初討伐

冒険者ギルドに登録を終えたレオたちは、次々と依頼を受けながら冒険者としての技術を磨いていった。初めての正式な依頼は、小さな村の近くに現れる魔獣の討伐だった。簡単そうに思えた依頼だが、実際には想像以上に困難で、彼らは現実の厳しさを実感することとなった。


道中、彼らは道端で休憩をとりながら次の作戦について話し合った。道の途中には小川が流れており、アルティがその水面を見つめて少し微笑んでいた。「こういう風にのんびりするのも悪くないわね」と彼女が言うと、レオは頷きながら「そうだな。でも油断は禁物だよ、いつ何があるかわからないからな」と答えた。


レイが笑いながら、「レオ、お前は少し緊張しすぎじゃないか?初めてのクエストなんだから、もう少し楽しもうぜ」と言うと、ヴィンスも同意するように「そうそう、リラックスも大事だろ?」と肩をすくめた。


その時、バルが川の向こうに目を向け、何かを見つけたように指を差した。「おい、あそこに何か動いてるぞ。」


全員が振り向くと、小さなウサギのような生き物が茂みから顔を出していた。それを見たエヴァがほっとしたように笑い、「ただの動物みたいね。危険はなさそう」と言った。


レオは少し緊張を解き、「まあ、こういうこともあるんだな。とにかく、次に進もう」と仲間たちに声をかけた。アルティは少し微笑みながら、「君がそんなに心配してくれるなら、きっと大丈夫ね」とツンとした態度で言ったが、その顔には安心感が見えた。


再び歩き出した彼らは、道中で互いの武器や魔法の確認を行いながら進んでいった。ヴィンスが冗談を交えながら、「レオ、次の敵はお前に任せるからな。俺は後ろで応援してるよ」と言うと、レオは苦笑いしながら「お前が応援してる間にやられたら困るんだけどな」と返した。


バルは仲間たちを見守りながら、「俺たちはチームだ。誰か一人が頑張るんじゃなくて、みんなで協力して進むんだ」と力強く言った。その言葉に全員が頷き、再び気を引き締めて森へ向かう道を進んでいった。


森の入り口に到着すると、彼らは一度立ち止まり、それぞれの装備を確認し合った。


「みんな、準備はいいか?これが俺たちの冒険者としての初めての試練だ。慎重に行こう。」


レオが仲間たちに向かって声をかけると、レイが力強く頷いた。「もちろんさ、レオ。俺たちは訓練でしっかり準備してきたんだ。この試練もきっと乗り越えられる。」


「よし、みんな!注意を怠らずに進もう。」レオが皆に声をかけ、パーティーは整然と進んでいった。彼の隣ではエアロが翼を広げ、空から周囲を警戒していた。「敵の気配があればすぐに知らせるからな。」エアロの声がレオの頭に響く。


森の奥へと進む途中、レオたちは何度も立ち止まって周囲を確認した。木々の間から差し込む光が不気味に揺れ、どこかから動物の鳴き声が聞こえてくる。風が木々を揺らし、葉の擦れる音が耳に入るたびに、皆の視線が鋭くなる。


「気を引き締めていこう。森の奥は何が潜んでいるかわからないからな。」レイが低い声で仲間たちに呼びかける。


アルティは集中した表情を見せながら、杖を片手にいつでも魔法を放てるようにしていた。「なんだか、空気がピリピリしてるわね。油断はできないわ。」


ヴァンスはボルクスと共に前方を注意深く見ていた。「この先に何か動いている気配がある…。ボルクス、お前も感じるか?」


「感じているよ、ヴァンス。何かが近くにいる気がする。」ボルクスが警戒を強めると、ヴァンスは周囲に手信号を送り、全員が武器を構えた。


道中、レオたちは時折立ち止まって地図を確認し、森の中の正確な位置を把握するように努めた。「この辺りで魔獣が目撃されたらしいが…、みんな、いつ襲われてもいいように準備しておけ。」レオが言うと、仲間たちは一層緊張感を高めた。


エヴァは周囲の植物を観察しながら、「この辺り、動物たちが逃げているような気配があるわ。魔獣が近いのかもしれない…」と不安げに呟いた。


森の奥深くへと進んでいくと、突然、エアロが鋭く鳴き声を上げた。「危険だ、何かがこちらに向かってくる!」


「みんな、構えろ!」レオが叫び、全員が即座に戦闘態勢に入った。緊張が走る中、茂みの中から低い唸り声が聞こえた。次の瞬間、大きな影が飛び出してきた。


「来たぞ!」レイが叫び、グラウンドが前に立ち塞がり、低く唸り声を上げて地面に力を込めた。「俺に任せろ、レイ。」


魔獣は鋭い牙を見せながら彼らに突進してきた。アルティは瞬時に杖を掲げ、炎の魔法を唱えた。「フレア、やるわよ!」


フレアは空高く舞い上がり、炎の翼を広げて魔獣に向けて火の玉を放った。「俺たちがやるべきことをしっかりやるだけさ。」


魔獣の動きは激しく、ボルクスは俊敏に駆け回りながら魔獣の注意を引きつけた。「もっと速く動いて、あいつを混乱させろ!」ヴァンスが叫ぶと、ボルクスは雷を纏いながら魔獣の周りを駆け巡った。


「任せとけ、ヴァンス!」ボルクスが駆け抜ける音と共に、魔獣の注意は完全にボルクスに向けられた。


戦闘が激化する中、リスは冷静に仲間たちの状況を観察し、ミストラルに回復魔法を使わせていた。「ミストラル、傷を癒してくれ。」


ミストラルは水の力を使い、仲間たちの傷を癒していった。「大丈夫、もっと回復が必要なら言ってくれ。」


激しい戦いの中、レオたちは互いに声を掛け合いながら、魔獣に立ち向かっていった。それぞれの召喚獣が持つ特性を最大限に活かし、連携を深めることで、彼らは魔獣に対抗していった。


「もう少しで倒せる!みんな、あと一息だ!」レオが叫ぶと、仲間たちは全力を尽くして攻撃を続けた。


「行け、フレア!」アルティが指示を出し、フレアは再び空高く舞い上がり、最後の一撃を魔獣に放った。その瞬間、魔獣は大きなうなり声を上げて倒れ込んだ。


「やったか…?」レイが息を切らしながら確認すると、魔獣はついに動かなくなっていた。


レオたちは互いに顔を見合わせ、そして微笑んだ。「みんな、お疲れ様。本当に良くやった。」レオがそう言うと、仲間たちは疲れながらも満足げに頷いた。


「俺たちがこれまでやってきたことが少しずつ形になってるよな。」レイが焚火を見つめながら言うと、アルティも「ええ、そうね。これからも力を合わせて、もっと成長していきましょう」と頷いた。


エヴァが静かに微笑んで、「召喚獣たちも本当に頼りになるわね。私たちだけじゃなくて、彼らも一緒に成長している感じがする」と言った。ユニセが光のオーラを纏いながら、「もちろんだ。私たちも君たちと共に歩んでいるんだから」と静かに語った。


レオたちは討伐を終え、魔獣の証拠を持ってギルドへと戻った。冒険者ギルドの入り口に足を踏み入れると、受付嬢のミレイが彼らを見つけて微笑んだ。


「おかえりなさい!無事に戻ってこれて何よりです。結果はどうでしたか?」


「無事に討伐を終えました。これがその証拠です。」レオが証拠品を見せると、ミレイは感心した様子で頷いた。


「素晴らしいですね!初めての依頼でここまでやり遂げるとは。皆さん、本当にお疲れ様でした。」


彼女の言葉に仲間たちは安堵の表情を見せ、互いに微笑み合った。ミレイが手続きを進める間、レオたちは酒場へと足を向けた。


酒場では、他の冒険者たちが彼らの帰還を祝福してくれた。「おい、新米たちが帰ってきたぞ!」と声が上がり、酒場全体が歓声で包まれた。


「やったな、レオ!これで一人前の冒険者だ!」


「ありがとう、でも俺たちだけじゃなくて、みんなの支えがあったからだよ。」レオが照れくさそうに応じると、仲間たちもそれぞれ声を上げた。


「フレアがいなかったら、あの魔獣は倒せなかったわね。」アルティが笑いながら言うと、フレアも誇らしげに羽を広げて見せた。「俺の炎を使えば、どんな敵だって焼き尽くしてやるさ。」


「でも、それだけじゃなくてリスとミストラルの回復がなかったら、俺たち全員無事で帰れたかどうかも分からなかったよ。」レイが感謝の言葉を述べると、リスは少し照れたように肩をすくめた。


「いや、俺たちも仲間の力があってこそだから。どんなに強い力があっても、チームワークがなければ生き残るのは難しいからな。」


ヴァンスもボルクスと乾杯しながら、「俺たちがこうして笑って話せるのも、みんなで頑張ったからこそだな」と微笑んだ。


「俺様がいなかったらあの魔獣はあのまま暴れ放題だっただろうよ。」フレアが誇らしげに声を上げると、酒場にいた他の冒険者たちも笑い声をあげた。


「それに、レイとグラウンドが前線で頑張ってくれたおかげだな。」レオが視線をレイに向けると、レイは肩をすくめながら笑った。


「まあな。あいつの突進には焦ったけど、グラウンドと一緒なら怖くないぜ。」グラウンドが力強く頷き、「俺も、レイと一緒に戦うのは好きだ」と低い声で応じた。


酒場の片隅では、ヴァンスがボルクスと乾杯していた。「おい、ボルクス、あの雷の使い方は見事だったぞ。俺たちがもっと強くなるには、お前の力が欠かせないな。」


ボルクスは「当然さ、ヴァンス。俺はお前とならどこまでも走り続けるぞ」と、頼もしく応えた。


エヴァもユニセに感謝の言葉を伝えながら笑顔を見せた。「あなたがいてくれたからこそ、私たちは安心して戦えたわ。」


「それは私の役目だからね。でも、君たちの勇気が本当に素晴らしかったんだよ。」ユニセが柔らかな声で語りかけ、エヴァは感動したように頷いた。


仲間たちは酒場のテーブルを囲みながら、自分たちの冒険を振り返り、次の挑戦について語り合った。彼らは、自分たちが冒険者として一歩一歩成長していることを感じていた。


その中で、レイがレオにからかうような笑みを浮かべて言った。「で、レオ、お前とアルティのあの連携、まるで二人だけの世界が出来てたんじゃないか?」


レオは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに顔を赤くしながら反論した。「そんなことはないさ。俺たちはチームだし、全員で戦ったからこそ勝てたんだよ。」


しかし、アルティが少し笑いながら「ええ、でもレオがもっと頼りがいのあるリーダーになれたら、もっと簡単に勝てたかもしれないわね」と冗談めかして言うと、周囲から笑い声が広がった。


「私たち、今日一つの山を越えたって感じね。」アルティが微笑みながらグラスを手に取り、レオに目を向けた。「レオ、あなたも頑張ったわね。」


「いや、みんながいてくれたからこそだよ。」レオが照れ笑いを浮かべて答えると、隣にいたヴァンスが「おいおい、謙遜するなよ。レオだっていい動きをしてたぜ!」と肩を叩いた。


焚火のように温かい雰囲気の中、仲間たちは今日の冒険の反省や、面白かったこと、驚いたことなどを語り合った。バルは豪快に笑いながら、「あの魔獣が突進してきたときのレオの顔、忘れられないよ!」とからかうと、レオは苦笑しながら「いや、あれはさすがに怖かったんだって」と返した。


「そういえば、召喚獣たちもすごく頑張ったわよね。」エヴァが静かに言い、ユニセが影から顔を出して微笑んだ。「私たちも君たちと一緒に戦えて光栄だよ。」


ボルクスが雷のエフェクトを軽く出しながら、「次はもっと派手にやるからな、覚えておけよ!」と言い、仲間たちは笑い声を上げた。


夜も更け、酒場の騒がしさも少しずつ落ち着いてきた頃、レイがふと真剣な顔をしてレオに尋ねた。「そういえば、次の依頼はどうするつもりだ?」


レオは少し考え込んだあと、仲間たちを見渡して言った。「次はもっと難易度の高い依頼に挑戦したいと思ってる。もちろん、みんなが賛成ならだけど。」


アルティは微笑みながら「もちろん賛成よ。これからもっと強くなるためには、挑戦が必要だもの」と頷き、他の仲間たちも次々に賛同の意を示した。


「よし、じゃあ明日も頑張ろう!俺たちはこれからも成長し続けるぞ!」レイが大きな声で言い、それを合図にみんなは再び乾杯の声を上げた。


「まあまあ、お前たち二人のコンビネーションもなかなかだったぜ!」ヴァンスが仲裁に入るように言い、みんなが再び笑った。


夜が更ける中、酒場での笑い声と歓声は続き、レオたちは新たな冒険者としての誇りと、仲間たちとの強い絆を深めていった。


依頼をこなすたびに、仲間たちとの絆も強まり、彼らは一層結束を固めていった。焚火を囲みながらの夜、レオたちは次々と成功した依頼について語り合った。「今日の戦いは、本当にみんなのおかげで乗り越えられたよ。」レオが感謝の言葉を述べると、仲間たちも笑顔で頷いた。


ギルドに戻った翌日、レオたちは再び次の依頼を受けるためにギルドの掲示板の前に集まっていた。討伐を成功させたことで自信をつけた彼らだったが、次の依頼の選定については意見が分かれていた。


「鉱山に魔獣退治ってのがあるぞ。どうする、これ?」レオが掲示板を指さして言った。


ヴァンスが少し顔をしかめて、「鉱山の中って狭いだろ。俺たちみたいに召喚獣がいると、動きづらくならないか?」と心配そうに口を開いた。


「確かに狭い場所だとフレアも自由に飛び回れないかもしれないわ。」アルティが同意するように言いながら、杖を軽く振ってフレアに意見を聞いていた。


「そんなこと言ってたら、いつまでも挑戦できないだろ?」レイが腕を組んで口を開き、「俺はどんな場所でも対応できるように成長したい。それに、鉱山なら素材も手に入るかもしれないしな。」


バルは大きな体を揺らしながら、「そうだな、鉱山であればアルケンも活躍できるかもしれないし、守りは俺たちに任せてくれよ」と頼もしげに言った。


「それに、鉱山の魔獣退治って、中級冒険者にとっては結構いい挑戦になるって教官も言ってたわよね。」リスが冷静に言葉を挟むと、ミストラルが頷いて「挑戦は私たちに必要だと思う」と静かに応えた。


レオは皆の顔を見渡しながら、「うん…確かに、どこかで一歩踏み出さないと強くなれない。だけど、ちゃんと準備していかないとね。」と結論付けた。


アルティが微笑みながら、「じゃあ、決まりね。鉱山の魔獣退治を受けて、全力で挑んでみましょう」と言うと、全員が頷き、次の挑戦に向けて気持ちを固めた。


ミレイが彼らのやり取りを聞いていて、依頼の書類を準備しながら「鉱山の依頼ですか?この依頼は確かに挑戦的ですが、あなたたちならきっと大丈夫でしょう。気をつけて行ってきてくださいね」と励ましの言葉をかけた。


レオはその言葉に応え、深呼吸をしてから仲間たちに向かって、「さあ、準備をして出発だ!」と声を掛けた。































































「次はもっと上手くやる。みんなで成長していこう。」レオが静かに言うと、アルティは「そうね、私たちはまだまだこれからだもの」と真剣な表情で頷いた。


その後、冒険者たちは再び酒杯を交わし、それぞれの健闘を称え合った。「次の依頼も楽しみだな!どんな敵が出てきても、俺たちならやっていけるさ!」とレイが笑い声を上げた。


レオたちは、仲間としての絆を一層深めながら、新たな冒険に向けて心を新たにしていた。


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