第2話  冒険者の始まり 仲間の出会い

朝日が昇ると同時に、辺境の小さな村に活気が戻ってきた。草木に覆われた村の広場には、人々が集まり始め、日々の仕事に取りかかっていた。ここは特に特徴もない辺境にある小さな村 おとぎ話もなく英雄が出たわけでもない何もない場所  




レオポルド・フォン・グラフ、愛称レオ。3歳。 


この村は静かで平和な場所だった。レオは父親に連れられて村の広場に行き、訓練を眺めることが日課となっていた。父は村の守り手であり、幼いレオにとって憧れの存在だった。




「父さん、僕も剣を振りたい!」




まだ幼いレオの目には、父や大人たちの訓練がとてもかっこよく映っていた。父は優しく笑い、小さな木の剣を渡してくれた。




「まずはこれで練習してみるんだ。勇気を持って挑戦すれば、いつかきっと立派な剣士になれるさとおもちゃの木剣をくれた。」




その言葉を胸に、レオは毎日庭で手の皮がむけても素振りを繰り返すようになった。父の厳しくも愛情に満ちた教えにより、レオはどんどん剣の基礎を学び、勇気というものを教わっていった。




5歳になった頃、レオは近所の子どもたちと遊ぶようになった。その中でもひときわ体が大きく、力強かったのがラインハルトだった。彼とは最初、村の広場でかけっこをして遊んだのがきっかけだった。




「僕、ラインハルト! レイでって呼んでよ、君も一緒に遊ぼうよ!」




元気いっぱいに声をかけられたレオは、すぐに彼と友達になった。ある日、二人で森の中を探検していた時、レオが小さな崖から落ちそうになったことがあった。そのとき、真っ先に手を差し伸べてくれたのがレイだった。




「大丈夫か、レオ?」




彼の力強い手に支えられたとき、レオはレイがただの遊び仲間ではなく、本当に頼りになる存在だと感じた。そしてその日から、レイのような強い存在になることを目指して、彼を兄のように慕うようになった。




6歳の時、レオは村で唯一の魔法使いの家系に生まれたアルテミシアと出会った。愛称はアルティ。彼女は他の子どもたちとは違い、静かで落ち着いた雰囲気を持っていた。アルティ。の家には古い魔法の書物がたくさんあり、レオたちはその本を囲んでよく魔法の話に夢中になっていた。




「見てて、レオ。この魔法、少しだけできるようになったの。」




アルティは手のひらに小さな火を灯して見せた。レオは驚きと尊敬の眼差しで彼女を見つめた。




「すごいな、アルティ!僕もそんな風に魔法が使えたらなあ。」




アルティは微笑んで答えた。「レオにはレオの得意なことがあるわ。それに、あなたは勇気があるもの。」その言葉は、いつもレオを勇気づけてくれた。




7歳の時、レオはヴィンセントと出会った、愛称:ヴィンス。 ヴィンスは好奇心旺盛で、村中を走り回り、時には大人たちを困らせることもしばしばあった。ある日、レオが村の畑で遊んでいると、ヴィンスがこっそり近づいてきて、リンゴを一つ差し出した。




「ねえ、これみんなで食べようよ。絶対に美味しいからさ。」




もちろんそれは良いことではなかったが、ヴィンスの「みんなで食べたほうが美味しいだろ?」という言葉に、レオたちは思わず笑ってしまった。




「でも、次からはちゃんと許可を取るんだぞ。」




レオがそう言うと、ヴィンスは悪びれた様子もなくウインクした。「はいはい、お利口さんのレオにはかなわないな。」そんなヴィンスの姿に、レオは仲間との絆を強く感じていた。




8歳の頃、レオはエヴァンジェリンと出会った、愛称: エヴァ。 彼女は優しくて、怪我をした動物たちを世話するのが得意だった。ある日、レオが訓練中に転んで膝を擦りむいたとき、エヴァはすぐに駆け寄り、その小さな手で治療を施してくれた。




「痛くなくなるおまじないをしてあげるわ。」




彼女が優しく微笑みながらそう言ったとき、レオは彼女の手の温かさに心が安らいだ。そして、エヴァの優しさが、彼らのパーティに欠かせないものだと強く感じていた。


辺境の小さな村々が隣接して一つの地域を形成しているサクルーセ。その中でレオは中央の村ヨクリに住んでいた。同じ村の幼馴染はレイ、西の村ロエンに住んでいる幼馴染アルティ、北の村ワセブに住んでいるエヴァ、東の村キルハに住むヴィンス。彼らはそれぞれ異なる村に住んでいたが、一つの地域としての結びつきは強く、幼少期から共に成長してきた。



9歳から13歳の間、レオと仲間たちは共に多くの時間を過ごし、冒険者としての基礎を学び始めた。村には協会があり、そこでは基礎的な教育や簡単な魔法を学ぶことができた。彼らは協会に通いながら読み書きや計算、基礎的な魔法を習得し、それぞれの職業に向けた準備を進めていた。


学校に通うようになった頃、レオは新たな仲間たちと出会った。


バルドル、愛称バルは、盾使いの家系に生まれた強固な体を持つ少年だった。協会で初めて出会った時、バルは体が大きく、堂々とした風貌をしていたが、その実、心優しく仲間想いだった。彼は常に仲間を守ることを第一に考え、訓練中も他の仲間たちが危険にさらされないように目を配っていた。


「みんな、俺が守るから心配しないでいいぞ。」


バルはそう言って笑い、仲間たちに安心感を与えていた。レオにとってもバルの存在は心強く、彼と共に訓練を重ねることで、自分たちが冒険者として一歩ずつ前進していることを感じていた。


もう一人、リュサンダー、愛称リスとも学校で出会った。リスは賢者の家系に生まれ、幼いころから知識を蓄えてきた。協会では優れた成績を持ち、特に魔法理論に詳しかった。彼は物静かで穏やかな性格をしており、困っている仲間を見かけるといつも手を差し伸べていた。


「この呪文はこうやって唱えるともっと効果的になるよ。」


リスはアルティに魔法の使い方を教えたり、ヴィンスに戦術的なアドバイスをしたりして、仲間たちの成長を助けていた。彼の知識と優しさは、仲間全員にとってかけがえのないものだった。


訓練場での剣術練習や、アルティの家での魔法の勉強、ヴィンスと一緒に行った村の周囲の探索、エヴァと共に動物たちの世話をすること──そして、バルの盾による防御訓練や、リスの知識を活かした助言──それら全てが、彼らを成長させる重要な経験となった。




訓練場では、レオとレイが剣術の技を磨いていた。レイはいつもレオに言った。




「レオ、お前ももっと体全体を使って剣を振るんだ。力だけじゃなく、技術が大事なんだぞ。」




レオは頷きながら、レイの動きを真似て剣を振った。その姿を見て、アルティが遠くから声をかけた。




「レオ、頑張って!私も新しい魔法を覚えたから、今度見せてあげるわ!」




ヴィンスは木陰から二人を見て、「お前たちが戦っている間に、俺は宝物を見つけてくるさ」と冗談を言いながら笑っていた。




エヴァは彼らの様子を見守りながら、小さな笑みを浮かべていた。「みんなが怪我をしないように、私がちゃんと見てるからね。」




このようにして、レオと仲間たちは互いに支え合いながら修業に励んでいった。彼らはただの遊び仲間ではなく、お互いの夢を共有する大切な存在となっていった。




冒険者を目指して




「さあ、今日も一日、気合を入れていくぞ!」




時が経ち、13歳になったレオは目の前の剣を握り締めながら、自分自身に言い聞かせるように大きな声を出した。彼の周りには、幼少期から共に過ごしてきた仲間たちが集まっていた。剣士レイ、魔法使いアルティ、盗賊ヴィンス、治癒術師エヴァ、盾使いバル、賢者リス──彼らは冒険者を目指して修業を続ける仲間であった。




「レオ、あまり気合い入れすぎると体が持たないぞ。


そうだぞ、レオ。俺がしっかり守ってやるから、無理はするなよ。


盾使いのバルも、レオの肩を軽く叩きながら優しく言った。バルの存在は、いつも仲間たちに安心感を与えていた。


それに、冷静な判断が必要な場面も多いんだ。無理に突っ込むのは良くないよ。


リスも冷静に助言を加えた。賢者である彼の言葉には、いつも説得力があった。」




剣士レイがにやりと笑いながら言った。彼はレオよりも一つ年上で、その力強い剣技と豪快な性格から、村の訓練場では頼れる兄貴分として知られていた。




「そうよ、レオ。もっと冷静にならなきゃ、魔法をうまく使えないわよ。」




アルティも微笑みを浮かべながら、杖を構えてレオにアドバイスを送った。彼女は知的で冷静、そして圧倒的な魔法の才能を持っている。幼馴染である彼女にとっても、レオは特別な存在だった。


そうそう、バルやリスの言う通り。みんなで協力すれば、もっと効果的に戦えるわ。


アルティの言葉に、リスは頷きながら続けた。


戦いは一人で成り立つものじゃないからね。僕たちはチームなんだ。




「まあまあ、二人とも。レオの気持ちもわからないでもないさ。俺たちはいつか冒険者になるんだからな。」




ヴィンスは肩をすくめて笑い、持っていた小さなナイフを軽く回して見せた。盗賊としての技能を持つ彼は、素早さと知恵で仲間たちを何度も助けてきた。


それにしても、バルがいればどんな敵だって安心して突っ込めるよな。


ヴィンスが冗談交じりに言うと、バルは大きく頷いた。


任せとけ、俺はみんなを守るのが役目だからな。




エヴァも穏やかな笑みを浮かべながら、周囲の仲間たちに優しい声をかけていた。「大丈夫、みんなならきっとできるわ。どんな怪我をしても私が治すから、安心して戦ってね。」




レオはそんな仲間たちを見て、胸の中に温かいものが広がるのを感じた。この村で、彼らと共に修業を積んできた日々。彼らはまだ村を出てはいないが、冒険者になるための準備は着実に進んでいた。




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