第3話 召喚獣捕獲の儀式
村を出る最大の試練、成人の証とされる「召喚獣捕獲の儀式」に挑むことになった。この儀式は、この村において大人になるための重要な試練であり、村を離れて新たな人生を始める前に必ず成し遂げなければならないものであった。
儀式の前日、村長が村の中央広場にレオたちとその親たちを集めた。村長は厳かな声で語り始めた。
「皆、この時を迎えることができて、心から嬉しく思う。召喚獣捕獲の儀式は、この村にとって、そしてお前たち自身にとって非常に重要な意味を持つものだ。この試練を乗り越え、お前たちは正式に成人として認められ、新たな人生を歩む準備が整うのだ。失敗を恐れることなく、己の限界に挑み続けることが大切だ。皆、お前たちの成長を見守っている。」
村長の言葉に続いて、レオたちの親たちも一人ひとり子供たちに声をかけた。
「レオ、君ならできる。ずっと努力してきたことを信じて、自信を持ちなさい。」レオの父がそう言い、肩を軽く叩いた。
「アルティ、あなたは私たちの誇りよ。どんな困難があっても、自分を信じて進みなさい。」アルティの母が優しく微笑みながら言った。
他の仲間たちもそれぞれの親から激励の言葉を受け、目に涙を浮かべながらも、決意を新たにしていた。
「頑張ってね、エヴァ。私たちはいつもあなたを応援しているわ。」エヴァの母が温かく抱きしめながらそう言った。
「ヴィンス、お前は強いんだ。自分の力を信じて、立ち向かえ。」ヴィンスの父は厳しい表情を浮かべながらも、その声には深い愛情が込められていた。
それぞれの親たちからの激励を胸に、レオたちは深呼吸をして、明日への決意を固めた。
召喚獣捕獲の儀式は年に一度、白龍が月から降りてくる時期にしか行われない。その期間はごく短く、失敗すれば次に挑むまでに再び一年を待たなければならない。成功率はわずか30パーセント以下という厳しいものだった。レオたちは緊張しながらも、この儀式を乗り越えて本当の意味での「冒険者」になることを夢見ていた。
試練の当日、レオたちはまず自分たちの属性を調べるための「鬼界の紡ぎ」と呼ばれるテストを受けた。このテストは、代々使用されている特別なローブを身にかけることで、自分の属性に合った色に変わるというものだった。
広場の中央に設置された試練の台の前で、レオたちは順番にローブをかけられた。レオがローブをかけると、淡い風の色をした緑色に染まった。
「レオは風属性か…これで召喚獣の住むエリアが決まるな。」村長が静かに言った。
次にアルティがローブをかけると、鮮やかな赤色に変わった。
「アルティは炎属性だね。フレアの住む地に向かうことになる。」村長が微笑みながら告げた。
他の仲間たちも次々にローブをかけ、それぞれの属性が明らかになっていった。
「これで全員の属性が決まったな。皆、それぞれの召喚獣の住むエリアに向かい、試練に挑むのだ。」村長はそう言って、彼らを見守る親たちに一言付け加えた。「お前たちの子供たちを信じ、見守ってほしい。今こそ彼らが成長する時だ。」
試練に向かう途中、仲間たちは緊張を隠しきれず、言葉を交わし合っていた。
「ねえ、みんな、本当に大丈夫かな?なんだかすごく怖いんだけど…」エヴァが弱々しく言った。
ヴィンスは笑い飛ばすように答えた。「怖いのはみんな一緒だよ。でも、俺たちはここまで来たんだ。引き返すわけにはいかないだろ?」
アルティは静かに頷いた。「そうね。恐れはあって当然。でも、私たちがこれを乗り越えたら、もっと強くなれるはずよ。」
レオも心の中で感じていた不安を打ち消すように言った。「そうだ。俺たちは一人じゃない。みんながいるから、きっと乗り越えられる。」
彼らは互いに励まし合いながら、儀式の場へと歩を進めた。森の奥深くに進むにつれて、暗さと静寂が増し、緊張が高まっていくのを感じた。レオは心の中で自問した。「本当にできるのか…?」しかし、その問いに対する答えを求める間もなく、彼は自分を奮い立たせた。「できるさ。俺は強くなるんだ…みんなと一緒に。」
森の奥深くにある儀式の場で、レオたちはそれぞれが自身の属性に合った召喚獣と対峙することになった。レオの前に現れたのは、風属性の巨大な鷹、エアロだった。その鷹は、まるでレオを試すかのように鋭い目で彼を見据えていた。
「やってやるさ...!」
レオは覚悟を決めてエアロに向かっていった。しかし、エアロは最初、彼を軽く見ているかのように上空を飛び回り、レオの攻撃をかわし続けた。その動きは俊敏で、レオの剣の振りはことごとく空を切った。
「まだまだそんなものか?お前は俺を捕まえられない!」
エアロはまるで挑発するかのように鋭い声を発し、レオの周囲を飛び続けた。その声に奮起したレオは、さらに集中して動きを読み、風を使った一撃を放つことに決めた。しかし、その挑戦は簡単ではなかった。息が切れ、足もふらつく中で、レオは何度も立ち上がり、エアロの動きを追い続けた。
「こんなに速いなんて...でも、絶対に諦めない!」
レオは心の中で叫び、自分の限界を超えるために何度も剣を振り下ろした。エアロは上空から彼を見下ろし、冷笑を浮かべながら翼を大きく広げた。
「愚かな人間よ、これが限界か?」
その言葉にレオは歯を食いしばり、思わず叫んだ。「俺は、仲間たちと一緒にもっと強くなるんだ!お前にだって負けるもんか!」
レオはエアロの動きを見極め、一瞬の隙をついて跳び上がり、エアロの足を掴むことに成功した。その瞬間、エアロの目が変わり、まるでレオの覚悟を認めたかのように、その鋭い目が柔らかくなった。
「…よくやった、人間よ。お前の覚悟を認めた。お前と共に成長しよう。」
エアロの声が変わり、少し優しさが混じる。レオは大きく息をつき、疲労を感じながらも笑みを浮かべた。「ありがとう、エアロ。これからは一緒に強くなろう。」
一方、他の仲間たちもそれぞれの召喚獣との試練を迎えていた。アルティの前には火の属性を持つフェニックス、フレアが現れた。フレアは最初、燃え上がる翼を広げて人間であるアルティを威圧していた。
「弱き人間よ、我を屈服させることができるのか?」
アルティは冷静にフレアを見つめ、その炎の中に飛び込む覚悟を決めた。「私を侮らないで、フレア。私は、もっと強くなりたい。」
フレアは燃え盛る翼を激しく振り、アルティを拒むように火柱を立てた。しかし、アルティはひるまずにその炎の中へと進んだ。その熱さに耐えながらも、彼女はフレアの胸に手を差し出した。「私を信じて。あなたと共に戦いたいの。」
フレアはしばらく彼女を見つめた後、炎の勢いを和らげてアルティの手に触れた。「お前の心の強さ、見せてもらった。我はお前と共に歩む。」
他の仲間たちも同様に、それぞれの属性に合った召喚獣と向き合い、必死の覚悟で戦い、心を通わせることで契約を果たしていった。
試練を終えた後、森を抜けて村に戻ってきたレオたちを、親たちと村長が出迎えた。村の中央広場で、彼らは召喚獣と共に立ち並び、それぞれが誇らしげに自分の召喚獣を紹介した。
「レイの召喚獣、グラウンド。地属性の狼で、とても頼もしいんだ。」レイが誇らしげに紹介すると、グラウンドは鋭い目をして静かに頷いた。
「私の召喚獣はフレア、火属性のフェニックスよ。」アルティは優しくフレアの翼を撫でながら言った。
「エアロも、これから俺と一緒に成長するんだよな。」レオが笑顔でエアロに語りかけると、エアロはその翼を軽く広げて応えた。
親たちはそれぞれの子供たちの姿に涙を浮かべ、村長は静かに言った。「よくやった、皆。それぞれの召喚獣と共に、これから大人としての道を歩んでいけ。お前たちの未来に幸あれ。」
仲間たちは互いに召喚獣を見せ合いながら、試練の時にどれほど苦労したかを笑いながら語り合った。その光景は、彼らがこれから共に冒険者として歩む新たな一歩を象徴するものであった。
「本当に大変だったけど、こうして召喚獣と一緒にいられることが何より嬉しいよ。」ヴィンスが笑いながら言うと、他の仲間たちも頷いた。
「これからはみんなと、それぞれの召喚獣と一緒にもっと強くなるんだ。」レオはそう言って、仲間たちと共に拳を突き上げた。
こうしてレオたちは、召喚獣との契約を果たし、大人としての第一歩を踏み出したのだった。そして冒険者になるため養成所のある街に向けて歩み始めるのだった。
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