体温

いよか

体温

君の部屋に着いたのは晴れた寒い朝だったのを覚えている。

花の中で冷たくなった君が眠りについた、その翌朝のことだった。

カーテンが開いたままの部屋はあまりに見慣れた場所のままだったので、まだ冷えていた部屋の中で私は言葉に詰まらせる。

ついに置きっぱなしとなってしまったテーブルの上の化粧入れと飲みかけのコップ、ハンガーの服が家主の帰りを待っていた。

これらの待ち人からの期待が気まずくなって思わず目を逸らしてしまう。

君はもういない。

無言で片づけていくほかに、この事実をどう伝えれば良いのか思い浮かばない。

少しずつ記憶の場所から変わっていくこの場所で、ベッドの上で陽に照らされるぬいぐるみと目が合った。

私はこのぬいぐるみに近寄り手に取って抱きしめてみる。

やわらかく、あたたかい。

確かにここにまだ君がいることを理解した。

「おかえり。」

この体温を忘れないように私は今でも強く抱きしめている。

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体温 いよか @Pseudo_iyoka

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