第14話 昆虫型ロボットの開発

橘さんのパーティと偶然遭遇したことで、僕たちの心には深い劣等感が残った。

彼らのように肉体でダンジョンを攻略し、強さを実感していく姿は眩しく、それに比べて僕たちの進め方が、どこか虚しくさえ感じる瞬間もあった。

それでも、僕たちには僕たちのやり方があると信じ、仲間たちとともに再びダンジョンへの挑戦を続ける決意を固めた。



僕たちは、これまでに得た膨大な仮想空間でのデータと、現実でのラットの稼働状況を徹底的に分析した。

その結果、ダンジョンの中には落とし穴や狭い隙間が多数存在し、従来のラット型だけでは対応が難しいことが判明したのだ。

これから深層に進んでいくには、機体のさらなる小型化と、飛行性能の強化が必要不可欠だと悟った。


「やっぱり、ダンジョンの深層に進むにはドローン化が必須なんだな。今回も少し改良した程度のサイズじゃ、落とし穴や狭い空間には対応しきれない」


僕は拓也と洋介に説明しながら、新しい設計図を描いていた。


「確かに…でも、ただのドローンだとダンジョン内の小回りが利かないし、何より耐久性が落ちる。しかも、飛行機能を追加するためにはコストもかさむ」


拓也が悩ましげに頷いた。


「じゃあ、機体を小型軽量化して、昆虫のように素早く動き回れる形状にしてはどうだろう?ダンジョンの隙間をすり抜けたり、落とし穴を飛び越えたりできるようにするんだ」


僕は新しい発想を提案した。昆虫のように小さな体で軽量化し、飛行と地面を這う動きの両方を備えたロボットを開発することに決めたのだ。


「それなら、スピードと機動性がある。しかも、探査能力も大幅に向上できる。見た目には少し抵抗があるかもしれないが、これがダンジョン探索の効率を上げるための最適解かもしれない」


洋介もすぐにその考えに賛同してくれた。




数週間の試行錯誤と実験を経て、僕たちはついに新たなダンジョン探索ロボットを完成させた。

小型で黒光りし、まるで昆虫のように細かな足と触角がついている。機体はダンジョンの魔物から得た素材でできており、耐久性も抜群だ。

飛行機能も備えているため、障害物を避けるために地面から少し浮き上がって移動することもできる。


このロボットは一見するとゴ、いやGのように黒く、ツヤツヤとした外装をしており、スピードと機動性に優れている。

僕たちは冗談半分でこの新型を「G型」と名付けた。

見た目があまりにもリアルで、触覚がピクピクと動く様子にはどこか嫌悪感さえ抱く人がいるかもしれないが、その性能は抜群だった。


「完成したな…これが、僕たちの新たなダンジョン探索の切り札だ」


僕はG型を手に取り、タブレットで操作してみる。

動きは非常にスムーズで、小回りが利き、ダンジョンの迷路のような狭い通路も難なく進めそうだ。


「見た目はちょっとアレですな…けど、これで探索能力が向上するなら、多少見た目がアレでも仕方ないですぞ!」


洋介が笑いながらG型を見つめている。


「それに、ダンジョン内で魔力を充填しながら動力として利用できる魔石も組み込んだ。このサイズならエネルギー消費も少ないし、長時間の探索ができるはずだ」


拓也が自信たっぷりに言った。


「じゃあ、さっそくG型をダンジョンに送り込んで、実地テストをしよう」


僕たちは新しい探索ロボットに期待を抱きながら、再びダンジョンの入り口へと向かった。



ダンジョンの階段を降りると、僕たちはG型の電源を入れ、タブレットで操作を開始した。

G型はスッと滑らかな動きで地面を這い、時折空中に浮かんで飛び上がりながら通路を進んでいく。

モニターには、これまでのラットとは比べ物にならないほど鮮明で機敏な映像が映し出されていた。


「おお、スムーズだ。動きが全然違う!」


洋介が感激した声を上げる。

G型はまるで生き物のように、滑らかに移動しながら次々と障害物を避けていく。


「これなら狭い隙間も問題ないし、落とし穴に落ちるリスクも大幅に減る。しかも飛行機能のおかげで、途中で見つけたアイテムも簡単に拾い上げられるな」


拓也がモニターを見つめながら言った。

G型はアイテムを収納できる小型のバッグも持っており、次々と貴重な素材を集めていた。


「よし、ここからが本番だ。このままG型を深層まで進ませて、これまで行けなかった場所に挑戦してみよう」


僕は胸の高鳴りを感じながらG型をさらに奥へと進めた。




新たに強化された昆虫型ロボットは、まるで生き物のようにすばしこく、トラップを見事にかわしながら進んでいった。

途中、広間の先に大きな落とし穴が見えたが、G型は軽々と飛び越え、向こう岸に着地する。

狭い通路を縫うように進み、壁の隙間をすり抜け、低階層の端から端まで調査を進めていく。


僕たちは、G型の性能に感心しつつも、これまで見落としていた深層の謎に一歩ずつ近づいていくのを感じていた。


「これなら、もっと深く、もっと広くダンジョンを探索できる。橘さんたちが挑む深層にも、これで追いつけるかもしれない」


僕は再び新たな希望を感じ、G型の映像を見つめながらつぶやいた。



僕たちは、今のところ学校でもクラスメイトに見下され、笑われ続けている。

だけど、このG型の成功は僕たちにとっての大きなブレイクスルーだ。

彼らに負けないくらい、僕たちは技術の力でダンジョン攻略の道を切り拓こうとしている。

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