第12話 新たな素材とラットのブレイクスルー

翌日、僕たちは早速集まり、家族から得たアドバイスを元に、ラットに新たな改良を施すためのアイデアを出し合った。

僕たちはこれまでにダンジョンから持ち帰ったアイテムを再確認し、どのようにしてラットの性能を強化するか、具体的な計画を立て始めた。


「まずは、魔物の素材を使うことでラットの耐久性と軽量化を図ろう。特に、攻殻素材はダンジョンの魔物たちが持つ甲羅や鱗を使えば、強靭でありながらも軽量化できる」


僕は集めた資料を見ながら説明した。


「確かに、これまで拾ってきた攻殻は金属よりも軽くて硬い。実験してみたが、普通の道具じゃ簡単に傷つけられなかったから、ラットの外装に使えば耐久力も上がるし、少し動きもスムーズになるだろう」


拓也が真剣な表情でうなずく。


「それと、これまでの資金で小型のアイテムバックも手に入るかもしれない。空間魔法が施されたアイテムバッグなら、通常よりもたくさんの物を収納できるから、ラットが拾ったアイテムをダンジョンから運び出すのに使えるんじゃないか?」


洋介も新しいアイデアを提案してくれた。


「そうだね。アイテムバックがあれば、貴重なドロップ品を効率よく持ち帰れるし、仮に大きなアイテムが手に入ったとしても、その場で拾って帰れる。これもラットの拡張性を上げるためには重要だ」


僕たちは意見を出し合いながら、ラットの設計図を新しく書き直していった。



さらに、これまでに回収してきた魔石についても再検討した。

ダンジョン内では、魔力が充満しているため、魔石が非常に有効なエネルギー源となる。

これまでのラットはバッテリーで動かしていたが、ダンジョン内での活動が制限されることが多かった。

しかし、魔石を動力源にすることで、魔力が絶えず供給されるダンジョン内では、持続的な動力が確保できる。


「魔石の力を活用すれば、バッテリーに頼る必要がなくなるし、ダンジョンの中で長時間の探索が可能になるかも。電力の問題を気にせずに活動できるなら、ラットの運用が一気に広がる」


僕は期待を込めて、魔石の可能性を語った。


「じゃあ、さっそく魔石を組み込んでみよう。ちょっと大掛かりな作業になりそうだが、これでラットの活動時間はほぼ無制限になるはずだ」


拓也が早速、ラットの動力システムを再設計し、魔石のエネルギーを利用できるようにするための装置を組み込み始めた。


数日後、僕たちは改良が完了した新しいラットを前に、喜びを噛み締めていた。

ラットは攻殻素材で外装が補強され、見た目も頑丈で、まるで鎧をまとったかのようにたくましくなっている。

さらに、背部には小型のアイテムバックが装着されており、必要に応じてアイテムを回収し、持ち帰ることができるようになっていた。

動力源は魔石に切り替えられ、ラットはほぼ無限のエネルギーを持つかのように動く。


「よし、準備は整った。これでラットがダンジョン内でどれだけ長く、どれだけ深く探索できるか見てみよう」


僕はタブレットを手に取り、ラットの操作を開始した。



ラットがダンジョンの階段を降り始め、僕たちはモニターを通して映像を確認していた。

新しい外装の耐久性は非常に高く、道中の小さな障害物や罠にもびくともしない。

小さな突起に引っ掛かることもなく、滑らかに動き回り、まるで別物のように強化されていた。


「すごい!全然違う。動きがスムーズだし、以前よりもスピードも上がっている」


洋介が感嘆の声を上げる。


「それだけじゃない。ダンジョン内での動力問題も解決したから、これまでの倍以上の時間、探索が可能になっているはずだ。今までなら30分もすればバッテリーが切れかけていたけど、今回は全く問題ない」


僕も感動しながらモニターを見つめていた。


さらに、ラットは探索中に貴重なアイテムを見つけるたびに、背部のアイテムバックを使ってそれを収納していく。

小さな青い宝石や薬草のようなものを次々と拾い集め、その姿がまるで職人のように見える。

僕たちはモニター越しにその様子を眺めながら、思わず歓声を上げた。


「これなら、これまでの探索よりも効率が何倍も上がる。今までなら重さや容量の問題で、アイテムを放置していたけど、アイテムバックのおかげで全部持ち帰れるじゃないか」


拓也が目を輝かせて言った。




ラットは無事にダンジョンの探索を終え、低階層をくまなく探りながら手に入れたアイテムを次々と持ち帰った。

持ち帰ったアイテムをチェックすると、中には今までに見たことがない素材も含まれていた。

これまで以上に貴重なアイテムを入手できるようになり、資金を一気に増やせる可能性が広がった。


「ようやく、僕たちにも突破口が見えた気がする」


僕は持ち帰ったアイテムを手に取り、仲間たちに微笑みかけた。


「この調子で進めば、パワーアーマーの資金も早めに貯まるかもしれない。それに、さらに改良を重ねていけば、深部の探索も夢じゃなくなる」


「そうだな。ここから先もダンジョン素材の力を活用しながら、ラットをもっと強化していこう」


洋介も興奮気味にうなずく。


「僕たちの技術と、ダンジョンから得た素材の融合で、次のステージに進もう」


拓也がその場で拳を握りしめ、僕たちの新たな目標に向けて決意を新たにした。



こうして、ダンジョン素材によって強化されたラットは、僕たちにとっての新しい希望となり、未来への道を切り開いてくれる存在となった。

家族のアドバイスと仲間たちの知恵を借りて、僕たちは一つの大きなブレイクスルーを果たした。

そして、ラットと共に、ダンジョンの深層へと挑む準備を整えた。

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