20.滴る汗、揺れる想い
湯あみを終えた一行(リリアーナ、オフィーリア、アイナ、リリィ)は、イシュリアス辺境女伯の城館内にある豪華な浴場施設から隣接する癒やしの間へと移動していた。
その部屋は柔らかな照明と高い天井がもたらす開放感に満ち、繊細な彫刻が施された壁面が目を引く。
所々に配置された植物がさりげなく空間を彩り、香炉から漂う穏やかな香りが心を静かに癒やしていく。
部屋の中央にはふかふかのマットレスが並び、銀のトレイに美しく並べられたアロマオイルが、まさにこの空間の仕上げとして完璧に役割を果たしていた。
リリアーナは、アイナの指先が肩から背中を滑るたびに、体が自然とリラックスしていくのを感じていた。
「ん……アイナ、そこ、気持ちいいわ……」
思わず漏れた声が甘く響き、リリアーナは驚きと恥ずかしさで慌ててタオルに顔を埋めた。
頬が熱くなるのを抑えられない。
それでも、アイナの指が背中を押しほぐすたびに心地よさが全身を包み込む。
「ありがとうございます。リリアーナ様のお身体はとても繊細ですから、丁寧にケアさせていただきますね」
耳元で囁くアイナの優しい声に、リリアーナはふっと体がさらに解けていくのを感じた。
胸を覆うリネンのタオル越しに伝わるマットレスの柔らかな感触に、思わず息を飲む。
(これ……すごく柔らかい……ユーリ様は一体どうやってこんなものを……)
施術台として使われる木製のものとは比べ物にならないその感触に驚きつつ、彼女の胸の奥がじんわりと熱を帯びる。
「リリアーナ様、オイルを塗布いたしますね。少し冷たいかもしれませんが、お許しくださいませ」
アイナの優しい声に促され、リリアーナは緊張と期待が入り混じる中で小さく頷いた。
「ええ……お願いするわ……」
背中に垂らされた冷たいオイルが一筋の滴となり滑り落ちる。
その感触にリリアーナの体がピクリと震えた。
「っ……」
だが、その冷たさもすぐに消える。
アイナの温かな手がオイルを馴染ませるたび、冷たい刺激が穏やかな熱に変わり、心地よさが全身を包み込む。
「このオイルは、薔薇とラベンダーの香りを配合しております。リラクゼーション効果が高いだけでなく、美肌効果も期待できますよ」
優しく囁くアイナの声に、リリアーナは体がさらにリラックスしていくのを感じた。
滑らかな指先が肩甲骨をなぞり、やがて腰へと移るたび、絶妙な圧が硬くこわばった筋肉を解きほぐしていく。
「リリアーナ様、ここが少し張っていますね」
指先が描く円の動きに、痛みはなく、むしろ甘く痺れるような快感が全身に広がっていく。
リリアーナは息を整えようとしたが、胸を覆うタオルが微かにずれるたび、妙に意識してしまい、呼吸が乱れるのを止められなかった。
(なぜか落ち着かない……けれど、気持ちいい……)
隣では、オフィーリアがタオル一枚の姿でふくよかな胸をマットレスに押し付け、しなやかな背中を見せている。
リリィの手が背中を滑るたび、オフィーリアの口から漏れる声が部屋に響いた。
「うぅん……ふっあぁ……気持ちいいわ……」
その上品でありながら艶やかな声が耳に届き、リリアーナは思わず目を閉じる。
(オフィーリア様も……こんな声を出されるのね)
普段冷静で毅然とした彼女の新たな一面に、リリアーナは驚きつつも、不思議と安心感を覚える。
それでもその声は妙に耳に残り、自分の意識を引きずっていくようだった。
「ふふ、オフィーリア様。とてもお可愛らしいお声をお出しになっていますよ」
リリィが微笑みながら背中にオイルを垂らすと、オフィーリアの頬がわずかに赤く染まる。
「リリィ……あまりからかわないでちょうだい。それよりも、少し右側の腰に力を入れてくれるかしら?」
「かしこまりました、オフィーリア様」
マットレスを通り越して、ベッドが微かにリズミカルに軋む音が部屋に響く。
その音に合わせるように、オフィーリアの声が断続的に漏れ出す。
「はっ……はっ……あぁっ……」
普段の毅然とした彼女からは想像もつかない、艶めかしく甘い声。
その声が軋む音と重なるたびに、リリアーナの胸の奥がじんわりと熱を帯びていくのを感じた。
リリィの指が腰に力を込めるたび、オフィーリアの肌が震え、その細やかな動きに伴って、首筋から滴る汗がしずくとなって空中に飛び散る。
しずくが床に落ちるわずかな音までが、部屋の静けさを際立たせ、緊張感を生み出していた。
オフィーリアの艶やかな髪が汗に濡れて額に張り付き、濡れた肌が滑らかな光を放つ。
背中がわずかに反り返り、絞り出すような吐息がさらに濃密な空気を生む。
(なんだか私まで……変な気持ちになってきたわ……)
リリアーナは目をそらそうとするが、耳に届く甘い吐息と汗の滴る音が頭から離れない。
マットレス越しに感じる微かな振動までもが、彼女の意識を揺らしていくようだった。
それでも何とか平静を装おうと、彼女は話題を振った。
「それで、オフィーリア様、先ほどの話の続きをお聞きしても良いかしら?」
ふかふかのマットレスに体を預け、リリアーナは顔を伏せたまま尋ねる。
背中から腰へと滑らかに流れるアイナの手の動きがあまりにも心地よく、声が自然と甘くなるのを止められない。
「もちろんですわ。仕立て工房での一件ですね?」
オフィーリアが落ち着いた声で答える。
その声音には普段の冷静さが保たれているものの、リリィの指が背中を滑るたび、言葉の端にかすかな甘さが滲んでいた。
「ええ、ユーリ様がベルクレア仕立工房を訪れたと伺ったけれど、その詳細が気になりまして……」
リリアーナは話を続けながらも、耳に入るオフィーリアの吐息と、自分に押し寄せる快感の二つに意識が引き裂かれていた。
隣に伏せるオフィーリアの白い肌は、オイルを纏い、滑らかに光を反射している。
腰に触れるリリィの指に合わせて、背中がわずかに震え、その動きが自然と視線を奪う。
「工房では少し厄介な場面もあったようですわ。ローゼンクライツ商会の方々が騒ぎを起こして……」
リリィの指が腰のあたりを押し込むと、オフィーリアの体が軽く跳ねるように反応する。
肩が微かに震え、息を呑むような仕草が目に入った。
そのさりげない動きの一つ一つが妙に艶めかしく映り、リリアーナは胸の奥にざわつきを覚える。
(どうしてこんなに目が引き寄せられるのかしら……私、おかしくなったの?)
意識を切り替えようと問いを投げかけた。
「それでユーリ様はどうされたの?」
しかし、興味が引かれると同時に、アイナの指が太ももの内側をなぞる。
予期せぬ触れ方にリリアーナは息を詰め、その瞬間、全身が熱を帯びるような感覚に包まれた。
「まあ、いつものユーリ様らしいと申しますか……流血沙汰を演出することで、彼らを追い払ったそうですわ……あっ」
オフィーリアは言葉の途中で小さく声を漏らす。
リリィが腰に力を込めるたび、彼女の表情には一瞬の緊張が走り、次の瞬間にはそれが解ける。
そんな微かな変化が、普段の毅然とした彼女を忘れさせるほどに柔らかく、魅力的に見えた。
「流血……?」
リリアーナの瞳が驚きで見開かれる。
けれど、アイナの指が深い部分に触れると、その言葉は甘く震える吐息へと変わった。
タオルを握りしめた手に自然と力がこもる。
だが、アイナの指が作り出す心地よさは抗いがたく、熱が全身に広がっていくのを止められない。
言葉を続けようとする意識も、その快感にかき消されていく。
「なんでも……ベルクレアのお嬢様を助けるために……顔面で飛び込んで……ホンコンスピンという技を繰り出したらしいですわ」
オフィーリアは吐息混じりの声で言葉を紡ぎながら、リリィの指が腰に力を込めるたび、小さく身を揺らした。
甘い吐息が彼女の唇から零れ落ち、それが空気を震わせるようにリリアーナの耳に届く。
「顔面で……ホンコンスピン?」
リリアーナはその奇妙な言葉に思わず驚き、顔を上げる。
こみ上げる笑いをなんとか堪えようとするが、体に流れ込む快感に意識が引き戻される。
アイナの指がさらに深く触れた瞬間、彼女は思わず声を漏らしそうになり、タオルを握りしめた。
「その結果……騒ぎは……収まったようですわっ……!」
オフィーリアの声は、まるでリリィの手の動きに誘われるかのように甘く震える。
その一言一言が、リリアーナの耳に妙に心地よく響いた。
腰を押し込むリリィの手の動きに合わせて、オフィーリアの肌はオイルの輝きを纏いながら、しなやかに波打つように動いていた。
そのたびに、襟足に張り付いた汗の滴が光を受けてきらめきながら首筋を滑り落ちる。その動きに目を奪われ、リリアーナは無意識に息を詰めてしまった。
オフィーリアの頬には淡い赤みが差し、唇を噛むように引き締める仕草がどこか無防備で、儚げな美しさを際立たせていた。
毅然とした普段の彼女を知るからこそ、この姿には一層の魅力があった。
(こんなにも無防備なオフィーリア様……ユーリ様ともこんな情熱的なのかしら……)
胸の奥にざわつきを覚えながらも、リリアーナの視線はオフィーリアから離れなかった。
「それで、オフィーリア様、その一件でユーリ様は何か怪我をされなかったのかしら?」
自分の気持ちを隠そうと、リリアーナは甘く震える声で話題を振る。
だが、アイナの指がオイルを纏って太ももをじわじわと撫でるたび、全身に広がる熱が彼女の緊張を解きほぐしていった。
「大事には至らなかったようですわ。ですが……ふぅっ……彼のその無茶な行動には、本当に驚かされました……」
オフィーリアは甘い吐息を漏らしながら、微かに目を閉じる。
その声はまるで部屋に漂う香りと混ざり合い、リリアーナの耳に心地よく響いてきた。
(本当に……危険なことばかりして……目が離せない方なのね……)
ユーリの勇敢でありながら無鉄砲な姿が脳裏に浮かび、リリアーナの胸の中に複雑な感情が渦巻く。
それは心配と憧れ、そしてほんの少しの不安だった。
アイナの手が滑らかに背中を撫で、広がる熱が全身を包み込むたびに、リリアーナは次第に抗うことをやめていった。
思考は心地よい快感に溶かされ、ただこの瞬間に身を委ねるしかなかった。
(もう無理……何も考えたくない……)
最後に浮かぶのは、ユーリへの想いが滲む甘い感情。
その気持ちを胸に抱きながら、リリアーナは静かに瞼を閉じ、贅沢な快感に浸り続けた。
◆◇◆ お礼・お願い ◆◇◆
ここまで読んで頂きありがとうございました。
リリアーナ&オフィーリアの百合も欲しい!!
と思ってくださいましたら、
https://kakuyomu.jp/works/16818093086711317837
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