〈絶景に“ブル”っと〉

9月4日。6:30。起床。

なんともタイトなスケジュールであるが、これまた理由があった。夜行のせいで2日目の朝に食べ損ねたホテルの朝食をなんとしても食べたかった。というわけではない。(いや、もちろんそれも楽しみで、実際非常に美味しかったことは事実である。)ただ、それ以上の目的があった。

昨日のチャレンジで失敗した四国カルストに行くためである。もちろん今回は車で。ただ、問題は13時から仁淀川でSUPの予約をしてしまっていたのである。当初の予定では1日目、2日目に四国カルストを達成し、3日目はその疲れも考慮して遅めの起床を予定していた。故に、ノルマを達成できなかった僕らは、早朝出勤をせざるを得なかったのである。

ただ、大変大変とは言いつつも、本当に大変なのは運転してもらうRとKである。(今まで僕の投稿を見てきてくださった方はご存知かもしれないが、免許はあっても運転できないのである。そう、技術的に。故にこういった場合には金魚の糞になるしかない。これを俗に、トイレットペーパードライバーという。知らんけど。)

まあ、とにかく本当に2人には頭が上がらない。運転してくれること然り、こんな狂った旅に同行してくれること然り。


8:00

朝食後、僕らはレンタカーを借りて出発した。

その後は順調に、というわけにはいかなかったが、なんとか昨日にギブアップした地点までは辿り着くことができた。ここに来るまで何度か危険があったのはRの運転技術がどうこうという話ではなく、単に道の問題だった。

そしてこの後、道は更に困難を極めた。細い細い山道を登らざるを得なかったのだ。すれ違うにも一苦労。そんな険しい道が延々と続いていた。しかし驚くことに、Rはすぐにそれに順応し、スラスラと登っていった。そして到着予定時刻を少し巻いた11:00に、遂に四国カルストに到着した。

そこには本当に日本かと疑うほどの絶景が広がっていた。眼科に広がる山の稜線と力強い緑の命の色、そしてその上一帯に広がる雲と空の蒼さ。さらに一度深呼吸をすれば澄んだ空気が体中に拡がり、肺だけでなく悩みなどの非物質さえも浄化していくのを感じた。

僕らは周囲にあった展望台なども周り、山々の景色にしばらく見惚れた後、車に乗って先に進むことにした。というのも、この四国カルストは東西の全長が25kmで、歩いていては日が暮れるためである。

そして進み始めてすぐ、また先ほどの山々の景色とは違った景色に感動した。進行方向の右側に石灰岩群が顕れたのだ。四国「カルスト」という名前から、そういった地形があることを僕は事前のリサーチで一応把握はしていたが、やはり実際に行ってその場の雰囲気を味わうと、これまた感慨深いものがあった。

そしてそのまま進んでいくと更なる驚きが待っていた。有刺鉄線の向こう側で、牛が悠然と草を食んでいたのである。僕らは猛烈(“モウ”れつ)に感動した。そして僕は「ウッシッシ」とでも笑いながら会話を試みようとしたが、感嘆の息を漏らしながら感動している友人がいる手前、流石にそれは憚れたのでここに記すだけにしておく。

その後も、草の絨毯に石灰岩が生い茂り、その奥に風車が佇む絶景など、見所ばかりで僕らは所々で下車して風景を楽しんだ。

11:40。姫鶴荘着。ここで一旦、カルストの絶景は落ち着いた。

「んで、SUPはどこだっけ?」

「仁淀川アウトドアセンターってとこ。」

運転するRの問いかけに僕が答えた。

ナビに表示された予想時間を見る。

1時間20分。

「え、ツアーの集合時間て?」

「13:00。」

「「「ヤバくね?笑」」」

僕らはすぐさま次の目的地に向けて出発した。


〜続〜

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