〈28キロの壁〉

この先、さらに人家が少なくなる道へと差し掛かろうとした時、自販機があったので立ち寄る。夜とは言えど真夏の暑さは健在で、汗は止めどなく流れてくる。軽めの糖分を欲した僕は、スポーツドリンクを購入すると同時に、冷たさを喉に流し込む。

キツイなんてもんじゃない。正直、ここまで暑いとは想像していなかったし、そろそろ足も疲労を認識し始めていた。どうやらそれは他の2人も同様で、疲労による沈黙が流れる。

僕はどれぐらい進んだのか気になり、地図を更新する。距離は28km。

「お、もう3分の1は進んだ!」

少し疲労の色が濃くなってきた雰囲気を和まそうと、僕が声をかける。それは友人を励ますためのものであるとともに、僕自身を鼓舞するための、いや暗示をかけるための言葉だった。

しかし、返ってきたのは乾いた「おぅ。」という微かな声だけだった。

夜に活動を始めたことで普段の生活リズムからは大きくかけ離れており、ちょうど睡眠を欲する時間であった。また、灯りがないことによる心の疲れもあった。そして1番大きかったのは、これだけ進んできたのにまだ半分にも達していないという事実である。

自販機の先に目をやると、暗闇に包まれた道が続いている。どこまでも、どこまでも、永遠に続いている気さえした。

時間はちょうど24時を過ぎたところで、日づけは9月3日に変わっていた。こんな時間に、こんな場所で、ママチャリに跨って僕たちは何をしているんだろうか。

少し止まって酸素が頭に行き渡ったことで、冷静な思考を取り戻した。いや、取り戻してしまったのだ。


〜続〜

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