〈3つの理由〉

改めて、僕らが征く旅路は片道83km、獲得標高1842mである。

そして、今回僕らが使うアプリが示すルートによると、10km付近までは街が、そして30km付近までは町が続いていた。ただそれ以降は一気に山の雰囲気に近づいていき、所々に家がある程度である。さらに50km付近では前座、そして70kmほどから最後の10kmは本命の山である。

ちなみに、アプリによる予想タイムは6時間34分である。そのため僕は休憩込みでも8時間ほどで到着できるだろうと見積もっていたのだ。

 

最初、僕らは順調に進むことができた。というか、最初のエリアは街であり平坦が続くため、ここで音を上げていては話にならない。

ただ以前僕が神奈川で試走した際は、平坦にも関わらず片道17kmで諦めて引き返してしまった。その理由は3つあった。まず1つ目は、道案内通りに進むと自動車専用道路に類似した道路に行き着くことが多々あり、その度に別の道を探さなければならず面倒だったのだ。2つ目は時間帯と天候的に稲村ヶ崎での夕陽を見ることが絶望的だったということである。そして3つ目は、独りだったということである。

しかし今回はどうだろう。道は真っ直ぐ道なりで、道変更を迫られることもない。そして時間的にも天候的にも絶景は確定である。さらに心強すぎる友人が2人。諦める要素はどこにもない。


その勢いのまま、僕らは順調に進んで行った。

辺りは次第に街から町へと移り変わり、灯りが減っていった。そのせいで一度道を間違えることがあったものの、不幸中の幸いですぐに元の道に戻ることができ、体力を消耗しすぎることはなかった。

そして順調にペダルを回していた足が止まったのは、28km地点のことだった。


〜続〜

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