祠壊しコラム2 何故祠は「壊され」たのか

 前回「因習村ミーム」に関しての説明をしました。ところで「ミーム」って何よ、と今更聞けない人のために「ミーム」の説明を少しと、祠壊しが急速に流行した理由の要因について考えていきます。


 まず「ミーム」とは、かなりざっくり言うと「流行のコンテンツ群」くらいの意味合いがちょうどいいと考えます。細かく言えば、模倣されることで広まる情報網という感じなのですがつまるところ、「拡散されることで改変が起こり、流行したコンテンツ」という理解でいいかと思います。


 要は「拡散されて改変されることで成立する概念」というところです。少し前に流行った「猫ミーム」も同時期に一斉に猫の切り抜き動画を使って作品が作られました。改変されたコンテンツを見た者が更にコンテンツを改変し、原形がわからなくなっても「ミーム」として繋がっているわけです。


 このように「因習村」もインターネット上でミームと化し、様々な要素が生まれました。座敷牢に村のつまみ者を閉じ込めておく、地主や村長に絶対的権力があり、跡目争いが血で血を洗う抗争になる、土着の神を祀っていて生贄などの要求があって下手をすると祟られる、などがあります。これらは明確にすべてを含む作品があるわけではありませんが、あるあるとして広まるうちに「因習村の要素」として広く伝わることになりました。


 そういうわけで、主催者の記憶の限りでは「祠を壊したのか」という前段階で「あの禁足地(みだりに足を踏み入れてはいけないとされる場所)に入ったのか!?」や「あの怪異を目撃したのか!?」というやりとりがあったと思います。最初から祠は壊されていませんでした。ここ大事です。


 それでは何故祠が破壊されるようになったのかと言えば、影響が強いのが「因習村破壊RTA」というフリーゲームのような気がします。異論は認めます。こちらのゲームは上記の因習村のミームとRTAを面白おかしく組み合わせたもので、「いちはやく因習村の祠を破壊して村長に叱られる」ということを目的にしているようです。


 ちなみにRTAとはリアル・タイムアタックの略で、どれだけゲームを早くクリアできるかを競うものとなっています。その競技内容も例えば華麗なテクニックで難しいアクションステージをクリアしていくものだったり、とにかく早くクリアするためにバグ技を駆使して進行するものなど様々です。「any%(なんでもいいからエンディングを見ることを目的にすること)」「完走した感想」など独特の文脈も存在するので、興味のある方は「RTA」で検索してみてください。「マリオ64」「ゼルダの伝説時のオカリナ」などは今でも新たなバグ技が発見され、全世界でタイム短縮が繰り広げられるアツい世界となっています。


 話を戻すと、「因習村ミーム」と「RTA」の相性がとてもよかったみたいです。あるあるのお約束をぶっちぎって話を進め、力業で問題を解決するというミームが大喜利に最適でした。「祠に向かわず、まずは村長を殺害します。するとバグで最後の日付までストーリーが一気に進みます」というように、適度に残酷でギャグになりそうな事象が次々とミーム化していきました。


 実際「祠を壊す」というミームは爆発的流行の前から存在していました。そこに文町氏の「祠壊したんか爺」と「君死ぬよおじさん」が合体して、新たなミームが生まれたことで「祠壊し」が大流行となりました。特に「君死ぬよおじさん」はホラー界隈などでは存在していた「気だるげな霊媒師」という属性を一言で表現した秀逸なもので、非常にキャッチ―であったためホラー界隈以外にも広まっていったと想像できます。


 そんなこんなで、次回は「祠壊したんか爺」について考えていきます。彼は一体何者なのでしょう。

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