コラム
祠壊しコラム1 因習村ミームについて
祠壊し文学に参加された皆さん、お疲れ様でした。これから短評と分析記事を作成するので少々お待ちください。それまでこのミームを観測してこなかった方のために「祠壊しとは何ぞや?」という話をしますので、しばらくお付き合いください。
※大前提として、今からする話は全部が独断と偏見による完全な与太話です※
裏付けとか研究があるわけでもなく、なんとなく主催者が観測してきた事象を少し愉快にまとめたものです。もし有識者の方で「こちらの説の方が有効」みたいな感想をお持ちの方は是非コメントなどで教えてください。
まず、祠壊しの前に「因習村ブーム」について話をしないといけません。そもそも「因習村」とは何なのか、と言ってズバリと答えられる人もあまりいないと思います。それだけ「因習村」はかなり広範囲に意味が拡散された言葉です。
大まかな意味としては『八つ墓村』が一番わかりやすいと思われます。村の成り立ちに不穏な歴史があり、その歴史に縛られるような惨劇が起こる場所というのがありがちな展開です。横溝正史作品でよく登場するストーリーですが、『八つ墓村』の作品自体には今から紹介するミームはあまり含まれていないと主催者は考えます。ただ、1977年公開の映画で使用された「祟りじゃー!」というキャッチ―なフレーズが流行語になったことなどが「因習村ブーム」の根底には存在するのではないかと推測しています。
そこから時代が下って2000年、「インターネットで話題」としてテレビ番組で『杉沢村伝説』が紹介されます。青森県にあったとされる「杉沢村」ではかつて一人の村人が発狂して村人全員を殺害、そのまま廃村となったという噂がありました。杉沢村が実在するかどうかを確かめるという番組内容に当時の若者は恐怖しました。ちなみにこの『杉沢村伝説』と『八つ墓村』はどちらも1938年に起きた「津山事件」をモデルにしています。なかなか凄惨な事件ですので、調べる際はご注意ください。
そして、その頃からインターネット上で昨今の「因習村」にまつわるような都市伝説が急速に広まっていきました。
中でも有名なものは現在映画化もされた『犬鳴村伝説』で、実在する閉鎖された「犬鳴トンネル」という心霊スポットを舞台に様々な話が作られました。「この先日本国憲法適用されず」などと不穏な看板が入り口にあるというものや、村に立ち入った者は二度と外へは出られないと言ったおどろおどろしい内容がまことしやかにささやかれ、当時のインターネット上では「こういった異世界のような場所が存在するのだろうか」とロマンにも似た語り口で広まっていきました。
そこから時代は更に下り、因習村は『ひぐらしのなく頃に』『SIREN』などホラー要素のあるゲームの舞台となったり『TRICK』などのドラマで文脈として受け継がれていきます。2019年に公開された映画『ミッドサマー』にて「因習村」の文脈がインターネット上で更に広まり、2023年『鬼太郎誕生ゲゲゲの謎』にてこのミームは確かな地位を得ました(この2つの映画の影響についての異論は認めます)。
都会から村に迷い込んだ主人公。しかしその村は、村ぐるみで古くから伝わる悪い風習に縛られていて主人公がピンチになる。なんやかんやあって主人公は村から脱出する、または死亡したり村の風習に取り込まれて帰れなくなってしまう。このような物語を「因習村ミーム」と呼び習わし、しばしばネット上で大喜利が開催されるようになりました。
しかし、この「因習村ミーム」は大変危ういものです。最初から怖がらせようという意図で創作されたものではなく、実在のものに向けて使うのは大変好ましくない言葉だからです。一歩間違って「あの村は因習村だ」と実在の村に対して発言してしまうと、それは完全に差別になってしまいます。「あそこは犬を食うから行ってはいけない」にすると、この発言がどれだけ危ういかが想像できると思います。
更にこの「因習村」という言葉の意味も拡大され、もともとホラーの文脈で使われるものだったのが「単に気に入らない田舎の風習」くらいに希釈される傾向にもあります。「村の風習で結婚式では〇〇をする」というものまで「村の風習=因習」と直結してバカにしたりするような使用例も見受けられます。特に「田舎で親戚が集まってする宴会」を「因習」と見下すこともあり、これは地域差別につながりかねません。
そういうわけで、「因習村ミーム」は存在していても意味が広く、更に取り扱いが案外面倒だという点があり大喜利に発展してもそれ以上のブームにはなりませんでした。次回は「何故祠壊しが急に流行したのか」について解説します。
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