第6話
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鏡台の前に座った私は、先が尖った黒曜石を手に持ち、胸の下あたりまで伸びていた自分の髪の毛をばっさりと切った。
黒い髪がはらはらと床に落ちていくのを見つめてから、私は鏡台の上に置かれていたはさみを手に取って見つめた。
――お母さんは砂浜で拾った古びたはさみを持って帰ってきて、こっちのほうがよく切れる、と喜んでいたけれど、私は小さい頃から使い慣れた黒曜石のほうが好きだ。黒曜石のほうが、ざくざく切れるから気持ちがいい。
お母さんは、人間の文化を真似るのが好きだった。誰かが捨てたベッドや箪笥などを、地上からいちいち拾ってきては――それと似たものを自分で作って他の人魚たちに配り、みんなにも人間の文化を普及させようとしていた。
自分の耳が見えるぐらいまで髪を短くすると、私は鏡をまっすぐに見つめた。
――そこには、まったく見慣れない姿の自分が映っていた。
「大丈夫。もう、願掛けは終わったから」
鏡の中の自分に語りかけるかのように、私はきっぱりと言い放った。
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