ピンク髪のアイツ。

柊 こころ

なんで?


ある日、夜中にLINEが鳴った。

LINE電話だ。


画面を見ると、元友人の麻美(あさみ)だった。


なんなんだよ、こんな時間に…

と思いながらも出てみる。


「夢!!!助けて!!!」

「何よ」


「薫(かおる)からDVされて、トイレにいるの!」


嘘くさいな〜

と思っていたが、その途端に


『ガチャガチャ!!!』

『出てこい麻美!ゴルァ!!!』



ダンダンダン!

ダンダンダン!



「夢…!助けて…!」


近くで薫の声が聞こえた。




「110番呼んどくわ」

ガチャッ


冷たい人間だと思われるだろう。

でも、麻美にも原因がある。


麻美はとことん嘘つきで

男好き、中絶回数不明、友人の悪口

そんなオンパレードな女だった。



一応…と思い110番を押して

住所と被害である麻美の名前を教えておいた。



そんな事があった次の日

離婚届に証人のサインが必要と言われ

呼び出された。


相変わらず汚い部屋。


座る場所も限られる。



「サインすればいいのね、そしたら帰る」


サクッともう、本籍思い出して

サインして、帰ろうとした時だった。



「ちょっと良いですか?」


泣きじゃくる麻美を横目に

薫が声を掛けてきた。



「良かったら」

と、番号を教えられた。



悪い気がしたけど

とりあえず貰っておいた。


登録もしておいた。

けどLINEには出てこなかったので

まぁいいや、と思った。


そんなピンク髪のアイツと

また再び会うとは思わなかった。





月日は流れ、3年後

私は出張の為に港町に来た。


潮の匂いがする。

ちょっと寒い感じだった。


バスから降りて

キャリーバッグを片手に、指定のアパートを探していた。




すると、その時だった。


「夢さん?」




私は忘れない、ピンク髪のアイツだった。


「なんでいるの」

「いや、こっちのセリフ」


薫は海に近い場所が故郷のようで

あの時とはまるで違う人だった。


更生したというか、やっとまともになった。


「実はさ」

「どうしたの急に」




「麻美も愛してたけど

夢ちゃんのことも気になってたんだ」


「ん?意味わかんない」


戸惑いを隠しきれない。

だけど、バスターミナルにいる訳にもいかず

場所を変えた。



場所は私の提供されたアパート。


多分、お茶とか出せないけど…と言い

座らせた。



「夢ちゃんを、1度でいいから

抱いてみたかったんだ。」


「まって、まって。

麻美どうするの?関わりは?」


「切ったよ、しつこいから。

離婚までして、追いかけてきたんだ。

だから独り身じゃないって言って帰らせた。」



やれやれ、と思いつつ、私も馬鹿で

身体だけなら…と


許してしまった。

これじゃ、麻美と何も変わらない。


「夢…」

甘い言葉を掛けるのは、ピンク髪のアイツ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ピンク髪のアイツ。 柊 こころ @viola666

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画