ラヴソング
あなたが好きだと言ったあのラヴソングのあの歌詞を、あたしならひと月で理解し尽くした気がしたのに、あなたはそんなことにひとつも関心がない。さようなら、退屈な人。思い出して、思い出すたび消費する。あなたはよかった人になる、あたしの檻の中の、やさしい人。やさしいから好きなんかじゃなかったのきっと。
素敵なことしか思い出せない、思い出せるから素敵だった。あの曲を夜に流し出して、ようやくあなたは初めから檻の外にいたのだと気づく。まっすぐにしてほしかった癖っ毛と、猫背と、粗雑な話し方も!ぜんぶ受け入れられるなんて、妄想癖で自己満足だから恋情でした。
仕掛けた期待に裏切ってくれるのをずっと待っていた。嫌いになれたらずっと良くて、そのエゴイズムがあたしに弱った時、偽りで空腹が満たされた確信になった。月日が恋慕を保障するのなら、世界のだれよりもきっとあなたを愛していたのに。だれよりもまっすぐで、嘘のつけなくて、人間の体温のするひややかなひと。歩幅すらずらしたあの東京駅で、ひとりで別れを告げた気になりました。別れ際に手を合わせたこと、やっぱり少しだけ上がった口角が、整いすぎないかんばせの上で不思議なくらい、いつだって愛らしかった。
関心が合わないことさえ、当たり前に隣にいられたら運命だとすら思えた。否定をされないなら肯定なんてことじゃない。あたしはいつまでもここにはいないから、おわりが近くたって最後がくるまでは、これはずっと恋情だったのでした。
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はじめの方は、FINLANSのラヴソングを聴きながら書きました。音楽の歌詞にはあまり関心を持たない好きだった人に勧められたので。
愛の代わりの散文詩 篠宮五日 @shinousomeday
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