愛の代わりの散文詩

篠生五日

呼吸

 

 こんなんじゃない、こんなはずじゃなかったなんて絵空事を、いつだって鼓動に刻み続けている。こんなのはぜんぶ紛い物だから、世界をなぞっているだけじゃずっとほんとうになんてなれない。いつか、あなたの横顔に恋したように、あたしの剥き出しの内側を傷つける日を太陽の沈むたび夢見ている。

 切り刻んだ青の季節、きっといまここに存在していること。あなたはいつかピアノの音色に想いを馳せていた。あたしのためじゃない秋の風が、片耳を撫ぜてからあの日の記憶はおかしい。かわいくて氷菓に未来を委ねたら、願いはいつの間にか崩れ去ってしまった。あたしの愚かさを、あなたなら愛してくれていたのに、こんな世界では。


 

 なんだって覚えて、桜の下のあなたを誦じていた。その笑顔が溶けて肺で混ざり合って、そうしてようやく呼吸の意味が解りました。愛するだなんてとんでもない。消失を祈ることで救われるのなら、現在以外を失ってしまえたら、あなたにもう一度会えるのだといつからか間違っていたのです。こんな日もあなたが笑っていたように過去になれてしまうのなら、今度こそ愛することを、ご教授ください?









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