7

それから数週間経ったある日の休日。


「そんじゃ!」

「翡翠、柘榴君に迷惑かけるんじゃ無いわよ?」

「大変そうならいつでも帰って来て良いからな!」


オレは、柘榴と共にルームシェアをする事に決めた。


「それじゃあ、行こうか!」


柘榴の用意した車に車椅子と少量の荷物を詰め込み、助手席に乗るオレは、見送る両親に手を振った。


両親に挨拶をしてから乗り込んだ柘榴は、慣れた手つきで運転する。


「お前、いつの間に免許取ったんだ?」

「かなり前だよ。大学入って間もなくの頃かな?」

「へぇー」


安全運転を心掛ける柘榴を横目に、オレは今から向かう新居地に思いを馳せる。


初めて向かう其処は、バリアフリーの平屋建て一軒家だと聞いた。


車椅子でも生活がしやすくなっており、家のあちらこちらに手摺りが付いているのだとか。


前に住宅の間取りやらを見せて貰った事があったが、まさかアレに住まう事になるとは夢にも思わなかったが……。


「それより、ヒスイ……」


柘榴が信号待ちしている最中、唐突に口を開いた。


「ん?」


顔を向けると、柘榴は信号を見ながらポツリと告げる。


「よく承諾してくれたね。あの時、あんなに怒っていたからてっきり断られるかと……」

「あぁ……その事か」


申し訳無さそうな顔をする柘榴に、オレはあの時に見た夢の話をした。


「実はさぁ、懐かしい夢を見たんだよ」

「懐かしい夢?」

「うん。昔にお前と喧嘩した時の夢……」

「あぁ、あのブランコ事件の?」


どうやら柘榴も覚えていたらしい。


事件なんて物騒な物言いするぐらいには、印象的だったのかも知れない。


「そうそう。んで、あん時にルリちゃんが言ってたんだよ」

「琉璃が?」

「お前も悪気があったわけじゃないから許してやって欲しいって……」


柘榴は一瞬目を見開き、それから青に変わった信号を見て車を走らせた。


「だからオレ、ルリちゃんにお前と仲直りしてって言われてるみたいに思えてさ、それで今回の件を承諾したってワケ」

「そうなんだ……琉璃がね……」


柘榴の横顔が心做しか嬉しそうな、それでいて優しい表情に見えたのはきっと気の所為では無いだろう。


「まぁ。両親にあんまり世話になるのも気が引けるってのもあるけどな?」


付け足すように告げれば、柘榴は笑いながら『君らしいね』と呟き、車を走らせた。

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