5
退院してから数ヶ月後。
オレは実家で療養していた。
未だに車椅子生活は馴れないが、何とか自分で出来る範囲の事をやりながら毎日をごろごろと過していた。
通っていた大学は休学しており、アルバイトは辞めてしまった為、ほぼニートと変わらない生活を送っている。
そんな中でも、柘榴は暇さえあれば家にやって来た。
未だ一緒に暮らす事を諦めて無いのか、話す内容が物件の話だったり在宅ワークの利点や介護の話ばかりだ。
「あっ、因みに介護の資格取ったよ?」
笑顔でそう言われた時には絶句した。
「それはお前の両親が年行った時に発揮しろ」
そう返すと、彼は不機嫌そうに顔を顰めるばかりだった。
しかしながら、オレは丁度良い暇潰しが出来て良かったと思っていた。
だがある時、両親に告げられた言葉でオレはアイツの策略に嵌った事を知った。
「翡翠、あんた柘榴君と一緒に暮らすんだってねぇ?」
「は……?」
正直何を言ってるのか分からなかった。
「柘榴君が言ってたぞ?二人で決めた事だって」
「いや、それは……」
「私等に迷惑掛けない様にと思っての事なら心配せんでも良かったのに」
「だから違ッ……」
「でももう家も決めてあるんだろう?バリアフリーの使い勝手が良さそうな家なんだってなぁ?」
「え?」
「まぁ、この家よりは広くて住みやすい様だし……あんまり柘榴君に迷惑かけんようにね」
「そうだぞ。いくら柘榴君が介護資格あるからと言っても、自分で出来る事は自分でやりなさい」
両親は結局、オレと柘榴が暮らす事を承諾した。
「──────ごめんね……こうでもしないと一緒に暮らしてくれないと思ったんだ」
後日、柘榴が来た時に洗いざらい吐かせた。
今まで遊びに来ていた時に、両親を言葉巧みに誑し込んでいたらしい。
「なんでそこまでしてオレと暮らしたがる!?」
「だって、ヒスイは家族同然だって……」
「赤の他人だろッッ!!」
「違うよ。ヒスイは琉璃の旦那さんであり、僕の義兄弟だよ」
「あんなの結婚したうちに入らないだろッ!?お前はただ自分の罪悪感をオレで満たしたいだけだろッッ!!」
柘榴は、その言葉に何かを言いかけたが口を継ぐみ、代わりに反論を示した。
「……でも、君の両親はもう承諾してくれたよね?だったらもう一緒に暮らすしか無いだろ!?」
「ッ……もういい。勝手にしろ!」
オレはそれ以上、柘榴と話すのをやめた。
柘榴は『お邪魔しました』と踵を返して部屋を出ていった。
「ふざけんなッ……クソッ」
オレはベッドに横になり、目蓋を閉じて不貞寝した。
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