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「イ……ヒスイ……」
誰かが呼んでる気がした。
目を開けると、柘榴がいた。
「あれ……ザクロ?オレは……」
柘榴は目に涙を溜めながら、オレの手に縋る。
「良かった……ほんとに、、」
ワケが分からず辺りを見ると、白いカーテンに周りを囲まれていた。
此処は間違いなく病室だ。
「あの日、君が事故にあって……一周間も目覚めなかったんだ」
柘榴に聞かされて思い出した。
あの日、柘榴の家から帰る途中、横断歩道を渡っていた処にトラックが突っ込んで来たのだ。
それからずっと意識が無い状態だったと、両親や柘榴に聞かされた。
「そうだったんだな……」
「うん。でも、意識が戻って良かったよ……!」
柘榴はオレの左手を握って言った。
しかし、その手には感覚が無かった。
『左半身が麻痺しております』
医者にそう言われた時、納得した。
「そうですか……」
オレは何処か他人事の様に呟き、両親は泣いていた。
それからリハビリが始まり、徐々に体力を回復させて行ったが、やはり半身の麻痺はそのままだった。
「ヒスイ……」
柘榴は度々見舞いに訪れては、車椅子生活のオレを悲しげな顔で見つめていた。
「そんな顔すんなよ!」
「でも……」
あの日、あの事故でこうなってしまったオレに負い目があるのか、何度弁解しても柘榴は落ち込むばかりだった。
挙げ句の果には、突飛な事まで言い出す始末。
「ねぇ、ヒスイ。大学を卒業したら僕と一緒に暮らさない?」
「はぁっ!?」
「僕、在宅ワーク出来る会社に就職が決まってるんだ……だからヒスイの面倒も看られるし、アルバイトで結構お金貯めてあるからそこそこいい処に暮らせるよ?」
「いや、ちょっ……」
「何ならバリアフリーにしたっていいし、それならヒスイも心置き無く暮らせるよね!」
「一旦落ち着け!!」
笑顔で世迷い言を話す柘榴を隙かさず制すると、彼はしょんぼりとした顔を見せた。
「駄目……?」
「駄目も何もオレまだ入院中だし、退院してからは暫く実家で暮らそうと思ってるんだけど?」
「じゃあ、その後は?」
「まぁ、この身体に慣れて来たら一人暮らしも考えなくは無いけど……てか、何故にオレと暮らしたがる?」
「だってヒスイはルリと結婚してるから僕にとっては家族みたいなものだし……あっ、なんなら介護の資格も取ろうか?」
「だからそこまでしなくて良いってば!」
何とか暴走する柘榴を宥めて、オレは退院する日まで彼との攻防戦を繰り広げていた。
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