みんなから貞子と呼ばれている根暗女の子が実はめちゃくちゃ……

冬雪樹

貞子にストーカーされています

 最近、俺はある女に懐かれ……ストーカーされている。

 これがまだ、可愛い女の子ならまだいいけど、可愛いどころか髪が長過ぎて、前か後ろかさえ分からない。


「なんで、あの“貞子”に懐かれたんだよ」


 貞子……あのテレビから「く~る、きっとく~る」でお馴染みのあの貞子だ。

 見た目も雰囲気も貞子そのものであり、周りからは貞子と呼ばれている。


「あー……多分、この前ノートを職員室に持って行くのを手伝ったからだと思う」

「ほーん。なんで、また」


 あれは三日前――俺は、放課後職員室に呼ばれていた。だが、俺はうっかりと寝てしまい、だいぶ遅れてしまった。

 このまま行けば、確実に怒りに怒りを上乗せするはめになってしまう。


 でも、これで行かなければ、さらに怒りを買うことになる。

 はぁー、嫌だなー。怖いなー。また、怒られるなー。


 憂鬱になりながらも、超ヘビー級な足取りで職員室に向かっているときに、噂の貞子を見掛けた。


 貞子はノートを持っていたんだ。俺は、あれが噂の貞子か、ぐらいしか思わず、無視するつもりだった。

 けど、あいつは何も無いところで足を挫かせ、持っていたノートを全部を廊下にぶちまけたんだ。


 別に他クラスだし、どうでも……いや、待てよ。

 もし、ここで手伝ってやり、一緒に職員室に持っていたったら、この子を手伝っていましたって言う言い訳ができるんじゃね?

 そしたら、そうかって怒りを抑えられるはずだ。もしそれでも、怒られたら、


「困っている人を放っておくって言うのが、この学校の教えなんですね!」


 って大声で言ってやろう。しめしめ、やっぱ俺って、勘と運と金運だけはいいよな。


 ということで、俺は別の意味で下心を隠しながらお困りの貞子に近づいた。


「手伝うよ」


 できる限りの爽やかな顔で俺はそう言った。最初、貞子は戸惑っていたが、小さくコクと頷いた。相変わらず、顔は見えなかった。


「よし、行こうか」

「コク」


 そうして、俺はノートを半分持ってやり、職員室に向かった。

 入るときはわざとらしく大きな声で、「失礼しまーす」と言った。

 俺を呼出しやがった教師に、俺はこの子を手伝っていましたアピールをするためだ。


「おい、やっと来たか山河」

「すみません、遅れちゃって」

「何してたんだ? あ?」


 見てわかんねーのか。てめーの目は節穴か、エロ本しか見えねーのか。


「いえ、ちょっとこの子を手伝っていたら遅くなって」

「手伝い? そーなのか?」

「コク」

「それなら、仕方ねーな。今回は許してやる」

「はい(あざーっす!)」


 と言うわけで、怒りを抑えることに成功したって訳だ。

 我ながら、完璧な作戦だ。


「つまり、お前お得意の人を利用したって訳か」

「ノンノン。手伝ったついでに手伝ってもらったんだ。ギブアンドテイク。人聞きの悪いことを言わないでくれます?」

「物は言いようだな」

「はっはっは!!」


 それから、放課後――俺は、押し付けられた図書委員の仕事をしに、図書室にいた。

 俺が寝ている間に、いつの間にか俺が図書委員になっていた。


 まあ、別いいけどさ。どうせ、この学校に本を読む奴なんていないだろうし。

 それよりも、図書委員は二人で一組な訳なんだが、俺のペアはあの前髪激長の貞子だ。


 顔が隠れているせいで、どこを見て、どんな表情をしているのか分からない。

 んー……ここまで、顔を隠されてると、その仮面の下の素顔が気になってくるな。


 でも、急に見せてくれなんて言ったところで、見せてくれる訳もないしな。


「はぁー」


 ほんと、誰も来ないのはいいけど、暇だし、気不味いな。

 暇だし、スマホでもしてよ。本当は駄目だけど、こいつならチクったりしねーだろ。


 なんか、視線を感じる。隣の貞子なのか? 貞子なのか!? み~る、きっとみ~るの貞子さんなのか!?


 隣をチラッと見ても、髪のせいでわかんねー。

 いや、でも、よーく見れば、若干顔がこっち見ている気がするな。


「え、えーとどうかした?」


 俺は掛けで訊ねてみた。すると、貞子は元々隠れている顔をさらに手で隠した。

 仮面の上乗せする意味あんの?


 貞子はポケットからスマホを取り出し、何やら文字を打ち、その画面を俺に見せてきた。


『この間はありがとうございました。とても、助かりました。

 あの、何かこの間のお礼がしたいです』

「あー、別に気にしなくていいよ」


 なんだ? ずっと、それを言いたくてストーカーしていたのか。律儀な奴だな。他の女子も見習えよ。当たり前みたいな態度しやがって。


『いえ、何でもいいので何かお礼をさせてください』


 どうしてもお礼をしないと気が済まないタイプの子らしいな。

 って言われても、別にお礼してほしいことなんてないしな。


 う~ん……何でもいいなら、パンツぐらい見せてもらうか? いや、やっぱ……胸か? いや、触らせてもらうか? よし、決めた!


「じゃあ、顔見せてよ」

「…………っ!」


 やっぱどうしても、顔が気になる。なら、お礼に顔を見せてもらおう。

 まだ、パンツやら胸を見せるよりはマシだろ。比較するものが最低ということは受け付けていない。


「か、顔ですか」

「う、うん」


 は、初めて声聞いた。これ、この学校で俺が初めて声聞いたんじゃね? 噂では、授業で当たられても、無言のままで答えないらしい。だから、最近ではどの教師も当てなくなったとか。


 それにしても……可愛い声だな。何かもっと、なんかこう……喉が死んでいるような声をしていると思ってた。

 ギャップってエグいな。それより、皆知ってるか? 古代より伝わりし古を――素顔を隠しているやつ程、声が可愛かったら、めちゃくちゃ可愛いという伝説がある。


 もっさりとした陰キャ眼鏡女子が、髪を上げて、眼鏡を外すと実は超可愛いかったという、磨けば光るタイプの原石論だ。


 これは、今から期待値がぐんぐんと上がってきた。


「うぅ~……は、恥ずかしいから、あまり見ないでね?」

「うんうん」

「じゃ、じゃあ……はい」

「っ――――」

「お、終わり」


 や、や、や、ヤバヤバヤバ!! え? なに? 何で? うそ? これは、俺の妄想? 幻想?

 ――めっちゃ可愛いじゃねーかぁぁあああ!!!!


 伝説は……大秘宝実は超可愛いは実在したぁぁ!!


 よし、決めた。もう、決めた。誰が何て言おうと、世界が滅ぼうと、ゴム人間が大秘宝を見つけようと……俺はこの子を彼女にする!!


「へ、変なの見せてごめんね」

「とんでもない! 超可愛かった! もう、俺の前以外で顔を見せるのをやめてほしいぐらい、可愛かった!!」

「そ、そ、そ、そ……そんな……ほんと?」

「ほんとほんと! この命を掛けても言える! 君は可愛いよ!」


 ワンチャン押せばいけるんじゃね? 作戦だ。

 こういう子は、きっと押しに弱いって相場が決まっているんだ。


「じゃ、じゃあ……付き合ってて、言ったらどうする?」

「お願いします!」

「あ、お、お願いします!?」


 作戦成功だ! 無事、俺の彼女にできた。

 よし、これで実は超絶可愛い系女子を俺のものにすることができた。


 他の見てくれに騙されているバカどもが、貞子の仮面の下を知ったころには、俺と愛を育んでいる頃だ。


 今日はライン交換して解散した。その日の夜、ラインがきた。


『これから、よろしくね政樹くん』

「こちらこそよろしくっと」


 あれ? そういや、俺名前なんて教えたっけ? ま、いいっか。


 それから、俺たちは周りには隠しながら、恋人関係を続けていき、一ヶ月が経った。

 その日、こっそりと図書室で一緒に昼ごはんを食べていた。


「あ、あのね」

「どうした?」

「お弁当作ってきたの」

「おー! マジか!」

「よ、よかったらどうぞ」


 渡された弁当を開くと、中身は卵焼き、ソーセージ、ハンバーグ、さばの味噌煮、鮭がかかったご飯が入っていた。

 たまたまなのか、どれも俺が好きな食べ物ばかりだった。


「美味そう! 食べていい?」

「どうぞ」

「いただきます!」


 卵焼きは甘く、ハンバーグはチーズイン、さばの味噌煮はちょうどいい、どれも俺が好きな味付けだった。

 いや、まさか。そんな、入っているものも、味付けも、ドンピシャなことぐらいあるよな。


 世界は広いんだ。きっと、ネットで調べたのが、たまたまこれになっただけだろ。


「すごく美味しいよ」

「えへへ、よかった。頑張って、政樹くんの好物調べた甲斐があったよ」

「へ、へぇー」


 今、調べたって言った? あれだよな、できるだけ俺の好きなものを作ってくれようと……調べようがないよな。


 この子、絶体自分から俺以外の人には話掛けないし、こられても話さないのに。誰かに聞くってことはしない。


「ふふ、私、政樹くんの為なら何でもするからね♡」

「う、うん」


 おっもいおっもいおっもいわ♪ 彼女が俗に言うヤンデレです♪


 なんて言う、巷で有名な歌の替え歌が脳内に流れてきそうだ。

 Ad〇じゃなくて、Omoだな。歌おっもいわ。怒られそうだな。


 まあ、でも……巷で言う、ヤンデレは重いだの、束縛やら独占欲が強いだの言うてますけど、前に俺が某サイト『なろうや』にあったヤンデレ小説を読むと、確かに愛がヘビー級に重そうだけど、その分超尽くしてくれるんだよな。


 一から十まで世話をしてくれたり、頼めばエロいこともしてくれたり……俺の彼女にもそれワンチャン当てはまるんじゃね?


 世の中の諸君、とくにそこの女の子……男はエロがないと、生きていけない生物なのだ。不足すると、エロを求めて海に出て、エロスが残した大秘宝を探しに行くものなのだ。


 かの将軍だって、こういう言葉を残しているだろ?


『鳴かぬならば鳴かせてみせよう女の甘い声』


 いやー、俺はあれ、立派な言葉だと思うね。うん。

 男も女も色んな意味でハッピーになれるんだよ。まあ、もしかしたら、女の方は将軍に気を使って、フリをしているだけかも知れないけどな。


『鳴かせていると思ったら大間違い』


 なんて言葉もいつか作られると思うんだ。まあ、こんな言葉が流行ったら、男みんな、やる気どころか、ヤル気を無くすね。


 ドピュドピュ言わせた股の大砲も、そうなっては弾(玉)も種もなくなるよ。


 という言うわけで? そんな、男の大砲がショボくれ大砲にならないように、俺がある実験をしてやろうじゃねーか。


「本当に何でもしてくれんの?」

「うん。するよ♡ お世話でも……エッチなことでも♡」

「じゃあ――お願い」

「少し恥ずかしいけど……うん、いいよ」


 マジか、やったー! これで、俺のコレクションが増える。


 その日の夜――ラインの通知音が鳴った。見ると、耶実子(貞子の名前)から一枚の写真が送られてきた。


 その写真は、服をはだけさせ、スカートを捲った耶実子のエロ自撮りだ。

 昼休み、これをお願いしてみた。まさか、本当に送ってくれるとは。


 それにしても、あいつ以外と胸あるな。それに、なんかエロい下着着てんな。


「何カップ?」

『Eカップだよ』


 今度、頼めば触らせて揉ませてくれるかな。まあ、その辺は段階を踏んでいこう。


「保存」


 翌日も放課後、図書委員の仕事があり、また二人きりなった。

 前までは気まずくて仕方がなかったが、今ではどうどうとイチャつける時間になっている。

 相変わらず、耶実子はじぃーっと俺のことばかり見ている。


 これは、放課後だけに関わらず、朝も昼もだ。付き合っていることを隠しているため、昼休みや図書委員関係では全く話さないし関わらない。


 流石にこれはやりすぎかなと思ったが、耶実子曰く、遠くから見ているだけでも幸せなようだ。よく分からん。


 けど、別にそろそろ言ってもいいんじゃないかとは思う。

 俺ってなんか、あんまり人からどう思われようか、どうでもよく感じたりするんだよな。


 それは追い追い考えるとして……暇だなー。こうも暇だと、昨日の写真を思い出すな。

 思っていたよりエロかったよな、あの自撮り。


 あの身体が制服によって隠されていると思うと、今度は生で見たくなってくるな。


「なあ」

「どうしたの?」

「パンツ見せてくれませんか?」


 どこぞのソウルキングみたいな言い方になってしまった。

 本家ならここで、見せるか! って殴られるところだ。


 耶実子は体を俺の方に向け、足を開き、スカートを上げた。


「いいよ」

「おー……」


 普段は無防備ながらもスカートに守られているが、今、それが目の前で晒されている。

 惜しげなく、パカッと足を開き見せてくれている。


 これが、女子高生のパンツっ! ありがたや、ありがたや。


「もういいの?」

「うん。いいもの見れた、ありがとう」

「んー……上も見とく?」

「いや、今度の楽しみに取っておく」

「そっか」


 わたし、生きててよかったぁぁ!! また、どこぞのソウルキングみたいなことを言ってしまった。


 それにしても、これは俺だから見せてくれるのだろうか。

 実は、見られると興奮する変態さんで、頼めば誰にも見せるのではないか?


「ううん、私がエッチな姿を見せるのも、するのも大好きな政樹くんだけだよ」

「お、おう、そうか」


 図書委員の仕事も終わり、途中まで一緒に帰る。

 耶実子は俺の腕に胸を押し付けるように腕を組む。そんなに、密着しなくてもいいと思うけど。


「そうだ。明日、休みだしどっか行かない?」

「デート?」

「まあ、そうなるな。どこがいい?」

「政樹くんが嫌じゃなかったら、私のお家はどう?」

「逆にいいのか?」

「うん」


 というわけで、明日、耶実子の家に行くことになった。

 まさか、こうも早く家に行くことになるとは。それに、明日は両親いないみたいだし。


 これは、ワンチャンあるか? よーし、念のために、明日は勝負パンツ履いていくか。


 そして、翌日――家を出ると、前に金持ちが乗っていそうな黒い車が止まっていた。


「高そうな車だな」


 一生乗る機会とかないだろうなと思っていると、車からスーツ姿の男達が数人出てき、いきなり囲まれた。


「君が山河政樹くんだね。我々と来てもらおうか」

「え? え? えぇぇ!?」


 スーツの男達に車に乗せられ、車が発進した。

 まさか、こんな形でこの車に乗るはめになるとは。


 これって、完全に誘拐だよな。ヘルプ警察。


 二十分ぐらい走った所で車は止り、降ろされた。

 目の前にはザ・金持ちの屋敷があり、門が開くと、家から一人の女の子が出てきた。


「こんにちは、政樹くん」

「や、耶実子!? もしかして、ここって」

「はい、私のお家です」


 こいつ……金持ちだったのか。

 というか、磨けば光るタイプの原石とか言ったけど、既にピッカピッカに輝く何十カラットのダイヤモンドじゃねーか!!


 屋敷の中へ案内され、中には十人ぐらいのリアルメイドさんにお出迎えされた。


 そのまま階段を上っていき、耶実子の部屋に通された。


「うわ…………金持ちだ~」


 俺の部屋二つ半ぐらいの大きさの部屋に、天蓋付きのベッド。

 こんなベッド本当に存在したんだ。漫画の中だけかと思ってた。


「くつろいでね」

「う、うん」


 くつろいでね、って言われても、こんな部屋に来たの初めてだし、落ち着かないって。


「もしかして、緊張してる?」

「そりゃな。まさか、金持ちとは知らなかったし」

「そうだったの? てっきり、私がお金持ちなの知ってて付き合ってくれていたんだと思ってた」

「なわけ。耶実子の素顔が可愛かったからだよ」

「っ!! 政樹くん!」

「うおっ!」


 突然、ベッドまで連れてこられ、押し倒された。

 はぁーはぁーと耶実子が息を荒くしている。


「ごめんね。もう、我慢できない」

「え……んっ」


 キスされた。初めてのキスだ。何度も何度もキスされ、舌を入れてきた。

 やばい、なにこれ……キスってこんなにも、気持ちいいのか。


 俺も期待に応えるように、舌を絡ませる。お互いの舌が絡み合い、口を離すと糸を引く。

 耶実子は着ていた服やスカートを脱ぎ、下着だけの姿になった。


 耶実子が着ていた下着は、胸の突起が出る縦の穴が空いており、下半身も胸と同じように縦の穴が空いている。

 男を誘惑するには十分なものだった。


 気がつけば、俺の息も荒くなっていた。

 理性がもう保たない――触りたい。今すぐ触りたい。めちゃくちゃくにしたい。


「政樹くん……きて♡」

「耶実子っ!」


 お母さん、お父さん……ボク、大人の階段を上りました。

 耶実子の下半身から、俺が吐き出した白い液体が流れている。


「ふふ、一つになれたね♡」

「ああ、また愛が深まったな」

「うん♡」


 休み明け――今日も図書委員の仕事があり、相変わらず図書室には誰もこない。

 隣の耶実子を見ると、イタズラぽく笑い、シャツのボタンを外し、スカートを捲った。


「今日もする?」

「ああ、もちろん」



 貞子だと思ってた女の子は、実はめちゃくちゃ可愛いくて愛が重くて少しエッチな女の子だった。

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