第6話
―…
「ただいまー。」
『あっ!お帰りなさい!』
章吾は玄関に座り込むと靴を脱いで、スリッパに履き替えている。振り返ったら気づいてくれるかな…。
「ごめんねー。遅くなって。」
そう言いながら廊下の奥で待つ私の方へと向かってくる。気づけ気づけ…。章吾が私の目の前に立ち、私と目があった瞬間。
『遅くまでお疲れ様』
と言うと、さっと目線を外して玄関の方へと歩いていってしまった。
「うん。疲れたー。ご飯今日何ー?」
ネクタイを緩めながら鞄を置くと、冷蔵庫を開けてビールを取り出した。えっ…。章吾は何も気づいてくれない。今日マツエク着けたんだけど…。髪もちょっと切ったんだけど…。下着屋に行った次の日、つまり今日。溜まっていた有給を使って美容院とマツエクにも行った。しかし全然気づいてくれない…。
「てかさ俺気づいちゃった。」
『えっ!何!?』
章吾の茶碗にご飯を盛っていると、章吾の突然の発言に嬉しくて振り返った。が、私の期待は一瞬で泡となり消えることになった…。
「ちょっと太った?」
あー。もうダメだ…。
今まで恥ずかしながらセックスレスに関しては危機感を覚えてなんどか試みようと努力はした。
出来るだけ素肌を見せないようにお風呂の入るときも出るときも気をつけて脱衣したり、無駄毛処理もサロンに行って完了したり…。
寝転ぶ章吾に引っ付いてみたり、夜ベッドでキスしてみたり…。だけどいつも頭ポンポンってされて「おやすみ」って言って背を向けられた…。
ねぇ、
ねぇねぇ…
半年してないのっておかしいよね…。私を女として見ていないんじゃないかな…。
浮気も心配したけどそれと言った様子もないし、家にいる時間スマホ見てるのチラっと覗いても、漫画かゲーム。
病気かもって2人で何気なく誘って検査したけど異常もなかった…。
後はただ単に私に魅力がないだけじゃないか…。
私は現実を突きつけられたようで悲しい気持ちになった…。
買ったばかりの下着を見せる機会なんてくることも無かった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます