第2話
いつものように満員電車に揺られながら出勤する。電車に乗った瞬間私の頭の中はようやく切り替わる。今日の仕事のスケジュールを思い浮かべながら午前中の作戦会議を脳内でする。今日は19時には家に帰りたいな…。水曜日だし。
そんな事考えてるうちに会社の最寄り駅に着いた。ザ・オフィス街のこの場所で私は人の群れに埋もれていく。
いつものように出社するとまだ誰も来ていないのかオフィスは真っ暗だった。だいたい私が一番に出社して電気をつけることから一日は始まる。
この会社に入社しマーケティング部に配属されて早6年目。仕事にも慣れ、後輩も少しずつ増え、責任のある仕事も任せてもらえるようになってきた。プライベートには不満が少しばかりあるが、仕事は慣れてきたし満足。仕事はね…
『はぁ。』
まだ時間あるし…私は自分のデスクまで行き、座ると私は昨日ポストに入っていた、友人の結婚式の招待状をため息交じりに開けた。返信するか…。喜んで出席しますっと…
大学時代の友達がここ最近一気に結婚ラッシュになっている。私もこの大卒王道結婚ラッシュに乗るはずだった。
しかし、今ゴールの見えない同棲を続けている。結婚の練習で同棲してるもんだと思ってたんだけどな。人から見たら彼氏がいるからいいじゃん。とか、同棲なんてゴールも同然じゃん!とか言われるけど、3年も同棲すると、恋人から家族みたいになっちゃって、改めて恋人として向き合い、結婚しましょう!なんてテンションにはならない…。
そのきっかけさえ見失ってしまう…。せめて同棲して1年がタイミングだったと思うな。
だけど章吾にそんなこと言ったら結婚のプレッシャーをかけて、章吾が変な気を起こしかねないから何も言えない。ただただプロポーズしてくれるって信じて待つだけ。
『なーにため息ついちゃって。』
トン…
私の目の前には淹れたてのコーヒ―の香りと共に奈々が現れた。奈々は年齢も同じで同期。私が配属されてから奈々は移動して来た。だから付き合いとしては3年。
マーケティング部が少しずつ拡大して、営業から移動して来た。ベリーショートで身長は172センチとすらっとしていてモデルみたい。奥二重できりっとした長目で色気がある。仕事もバリバリこなし、男前な奈々は女性社員にファンがいるくらい。
『また一人結婚していったよ。奈々ー私どんどんおいてかれていく』
『まーだ章吾君からないの?いい加減けりつけたら?こっちからフってやればいいのに』
奈々は彼氏はいないし、結婚なんてしても無駄だと思っている。仕事と旅行とお酒があれば生きてけるっていつも言いながら、結婚で頭がいっぱいの私を鼻で笑ってくる。そもそも私たちは価値観が違うんだ!
『もうさ結婚なんてしないでお金貯めてさ、海外に移住しようよ。その方が楽しいって。』
『確かにそれはそれで楽しそう…いやいや。私はウエディングドレス着たい!家庭ももちたい!家族で旅行とかしたいよ!』
『ふーん。』
奈々は隣の席に座ると、鼻と唇の間にペンを挟んで唇を尖らせながら自分のPCを開き始めた。
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