step1
第1話
眠たい目を擦りながら、枕元に無造作な状態で置いてあるスマホのアラームを止めた。あー眠たい。布団から出たくない…。このままこの温かい布団の中で包まれていたい…。そう思いながらも、遅刻だけはしたくないからもう一度スマホを確認する。
12月1日水曜日6時20分。水曜日ってイマイチやる気が出ない曜日ではある。まぁ。起きるか。私は少しだけベッドの中で体を伸ばすと布団をはいで、寝室を後にした。
廊下に出ると毎朝安定のコーヒーの香りがする。この香りがするといよいよ出勤の準備をしなくてはと自分を奮い立たせてくれる。
「栞~!今日帰ってくるの遅くなるから、先寝ててね」
『ん?分かった!』
いつもの朝。
リビングでする章吾との会話はいつも同じ。
今日は何時に帰ってくるだとか、夕飯は外で食べてくるだとか…。ただただ、日常の中で必要最低限の情報交換をしている。一緒に朝食を食べて、準備をして、そしていつも章吾が先に家を出て、その前に必ず…
「行ってきます!ぎゅっ」
『行ってらっしゃい!』
玄関で靴を履いた後、振り返って私を全力でハグしてから出勤していくのだ。それは同棲を始めて3年経った今も変わらない。
章吾と出会ったのは5年前…23歳の時。友達との飲み会。同い年とは思えないくらい、可愛らしい少年が座っていた。大学生感が抜け出せない彼は、ザ子犬キャラ。彼の潤んだ瞳に引き寄せられ、私は付き合って今に至る。
そう、5年経った…。28歳。同棲歴3年。結婚の気配なんて微塵も感じない。
「栞に迷惑かけないように、奨学金ちゃんと返してから結婚したい。だから待ってて欲しい。」
そう言われた。売却済みの土地にいつまでも建設費用が足りず、施工工事が始まらなくて雑草が生えているような状態だ。それが今の私…。
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