謎の爺「お前、あの祠を壊したんか!?」←即通報

真狩海斗

⛩️

「お前、あの祠を壊したんか!?」


 塾帰りに見知らぬ爺から謎の説教を受けたものだから、俺は即座に警察へと通報する。あー、もしもし、変な爺に絡まれました。逮捕してどうぞ。


 ものの数分でパトカーが現場に到着すると、何やら意味不明な言葉を喚き散らす爺をその車内へと押し込み、ウーウーとサイレンを鳴らして去っていった。すげーな警察。優秀だぜ。


 ひとり、現場に残った警察官が「災難でしたね」と苦笑している。いえいえ、全然大丈夫ですよ。ほな、事情聴取に進みましょか。


「お爺さんが言うには、昨夜、貴方が祠(?)を壊したとのことで。何か心当たりあります?

 夜中まで時間をとらせて申し訳ない」


「いえいえ。いやー、祠ですか?身に覚えがないですね。そもそも昨夜の記憶自体ないんですよね。

 気づいたら朝になってたって感じで」


 ふむふむ、と警察官が手帳を確認する。


「あのお爺さん曰く、祠を壊すと大変なことになるらしいんですよね。

 アメリカが広島に原爆を落としたとき以上の、とてつもない悲劇が世界に起きるとか何とか」


 あまりにも大仰な物言いで、思わず笑ってしまう。


「ないでしょ(笑)

 そもそも、って何なんですか?国?も知らない言葉ですね」


「ですよねー(笑)

 それをいうなら、ソ連だろってね」


って何ですか?」


 警察官は、一瞬キョトンとすると、恥ずかしそうに頭をポリポリと掻いた。


「あれ?本当だ。私はいったい何を言ってるんだろう。すみませんね」


 目が合い、互いに噴き出した。

 変な爺に絡まれた直後とは思えないほどに、辺りは長閑のどかな空気に満ちている。

 平和だなー。


 夜空には、綺麗な満月と、巨大な手が浮かび、いつもと変わらず町を優しく照らしていた。

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謎の爺「お前、あの祠を壊したんか!?」←即通報 真狩海斗 @nejimaga

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