※ 第2話 罰ゲームの代償


「うりゃー! とりゃー!」


「動くなって」


「自然にそうなるんだからしょーがないだろー!」



塁はゲーム中よく動く。それで上手いんだから不思議なもんだ。



「ぶへぇ……」



そんな訳だからガス欠も早い。

7月というのもあって、塁はすっかり汗だくになってた。



「あっちー!」


「ちょ、おま……っ」



塁は汗をTシャツの裾で拭った。

贅肉の欠片もない腹が露出するけど……それだけでは終わらなかった。

コイツは、花の女子高生になった筈の天宮 塁は……着ている服を何の躊躇いも無く脱ぎ出した。

Tシャツも短パンも脱いで色気の無いスポブラと、これまた地味極まりないボクサーパンツ。



「お前なぁ……恥じらいとかねーのかよ」


「ギンしか居ないんだからいーじゃん」



私しか居ないから駄目なんだよ! なんて声に出して言える訳も無く。


何時頃からだろうか。塁を“そういう目”で見てしまうようになったのは。

我ながらどうしてこのガキっぽい性格のつるぺた女に目を奪われているのかは分からない。

ただ現実として私は下着姿の塁に欲情し、興奮で身体が熱くなり生唾を飲み込んだ。



「さ、続き続き!」


「お、おう……」



塁はそんな私に気付く素振りも無く、再びコントローラーを手にする。

そんな塁を見て……私はちょっとだけ悪戯心が沸いてしまった。



「んひゃっ⁉︎」



脇腹をつつく。

不意打ちだったせいか塁の素っ頓狂な声が部屋に響く。



「ちょ、何すんだよギン! あひゃ、くひひっ……! やーめーろー!」



私と違って本当に華奢だ。少し力を入れたら折れてしまいそうな……そんな訳無いってのに。



「ゲームの恨みはゲームで晴らせ! 実力行使はヒキョーだぞ!」


「はいはい」



早く早く! と言いた気に、まるで散歩を催促する子犬のようにゲームのコントローラーを私の手元にグイグイと押し付けてくる。

正直有り難い。ゲームに集中すれば塁の方を見なくて済むから。



※※※※※



「へへ、アタシの勝ちっ!」


「おー、もう良い時間だなー。そろそろ帰るわ」


「えー! ウチで夕飯食ってかねーの?」


「今日私ん家すき焼きなんだよ」


「すき焼き……すき焼きかぁ……!」



『ならしょうがない』と言う思いと『それでももうちょっと遊びたい』と言う思いがせめぎ合うような表情を浮かべる塁。



「じゃあ後一回だけやろーぜ! ウチはまだ母ちゃん帰ってこないから寂しーんだよー!」


「そんな事言って何回も後一回だけを繰り返すだろーが」


「ホントに後一回だけなんだってー! お願い!

あ、じゃあこうしよ! 罰ゲーム対決! 負けた方がなんか罰ゲーム受けるって奴!」


「……まぁ、それなら。後一回だけな」


「やーりぃ! じゃあやろーぜ!」



塁は嬉しそうにコントローラーを握る。それに続いて私も握った。



「やー! とぁー!」



最後の試合だけあって塁は益々ヒートアップ。動きも大きくなる。そして……



「あ⁉︎」



コードが抜けた。



「チャーンス」


「ちょちょちょ、タンマ!」


「無理」



塁がコードを付け直す間に気持ち良く相手のキャラをボコボコにした。



「しゃっ! 私の勝ち!」


「ぐぬぬ……!」


「さーて、どんな罰ゲームを食らわせてやろうか」


「うー……分かったよ。で、何すんの?」


「そうさなぁ……」



私はニヤニヤと笑いながら右手の人差し指と中指を立ててしっぺの姿勢を取る。

それを見た塁は分かりやすく怯えた表情を見せた。



「な、なんだよ! 痛いのは駄目だからなっ⁉︎」



そういえば小学生の頃にしっぺを食らわせた時は大泣きしてたな。

それ以来しっぺは断固拒否だったっけ。

私は左手でもしっぺを構えてジリジリと近付いていく。

それに反して塁は立ち上がって後退り。



「ま、待てギン! 落ち着け! 話せば分かる!」


「いーや、塁。私は残念ながらお前と分かり合えそうにない」


「待っ……わふ!?」



背後まで気が回らなかったのか、ベッドに躓いてそのまま仰向けに倒れ込む。

下着姿で無防備にベッドに身を沈める塁。

少し……ほんの少しだけイケナイ思いが過ぎって、私はそんな塁の腹の上に跨り、左手で塁の両手首を掴んでベッドに押し付けた。



「しっぺと擽り、どっちが良い?」


「こちょこちょ!? や、止めろよギン!」


「じゃあしっぺ?」


「〜〜〜っ!」



塁は20秒程ジタバタ暴れた後、観念したように「こちょこちょ……」と答えた。



「りょーかい」



私は右手を塁の脇腹に伸ばす。塁は身体を強張らせて目を瞑った。



「うりうり〜」


「あひゃ、うひひひっ!?」



塁は反射的に身体を跳ねさせるけど、私に馬乗りにされてるせいで碌な抵抗も出来ない。

今度は腋。更にはヘソと場所を変えて擽っていく。

下着姿だから何処でもくすぐり放題だ。



「うひひっ! や、やめ……あひゃははは!」



塁は足をバタつかせる。でも抵抗そのものは弱々しい。

昔っからそうだ。塁は罰ゲームでしっぺと擽りの二択を迫られると、決まって擽りを選ぶ。

そして適当にじゃれ付いて、本当に限界が来たら本気で抵抗して振り払って、そこで罰ゲームは終わり。

昔っから、ずっとそうなんだ。



「ほらほら!」


「きゃひひぃっ! だ、だめ……あはははっ!」



こうやって擽るのは久しぶりだけど、塁も我慢強くなったもんだ。

今までだったらそろそろ本気で暴れる事なのに。

もうちょっと強く擽っても良いか?



「うりゃ!」


「あひゃはははは! や、やめ……あははははっ!!」



塁は身体を大きく仰け反らせて笑い悶えた。

その反応に気を良くした私は更に強く擽る。

塁は今まで以上に激しく暴れ出した。



「ちょ、おま……! あははっ、ひひっ……!」


「ほらほら、嫌なら脱出してみろー?」


「やってるって……! くひゃはは!

も、もう無理! ホントに無理!! 無理だからぁ……っ」


「だからぁ、嫌なら振り解けって……んお?」



不意に、尻に温かい感触。

疑問に思って腰を上げると、べったりと布が肌に張り付く感覚。

視線を下ろすと、塁の下半身を中心にベッドに沁みが出来ていた。

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