第30話
次なる目的地は、険しい山岳地帯にある洞窟だった。この辺りには、特に凶悪な下級妖魔が巣食っていると聞いていた。強さを求めるための試練は確実に難易度を増している。だが、俺たちはこの道を進むことを決めた以上、もう引き返すことはできない。
「足元に気をつけろよ。この洞窟は古くて、崩れやすいところもあるみたいだ」
真が洞窟の入り口で周囲を確認しながら言った。彼の目には慎重さが見え、俺たちも無駄に緊張が高まっている。狭く暗い洞窟の中、妖魔がどこに潜んでいるか分からない状態では、集中力を保つのが難しい。
「闇が深い……何かが待っている感じがするわ」
霞が低く呟いた。彼女の瞳は暗闇の中をじっと見つめ、まるでその先に何かを感じ取っているかのようだった。
俺たちは各自、武器を構えて慎重に足を進めた。狭い洞窟内では、足音が響くたびに緊張が高まっていく。すると、突然、先頭にいた小夜が立ち止まった。
「気をつけて、ここから奥に何かの気配が……」
その言葉が終わる前に、洞窟の奥から鋭い鳴き声が響き、薄暗い闇の中から数体の妖魔が現れた。鋭い爪と牙を持ち、黒い体毛に覆われた異形の姿。その目には、狂気と殺意が宿っている。
「ここで決めるぞ、みんな気を引き締めて!」
真の号令と共に、俺たちは一斉に戦闘態勢に入った。妖魔たちは唸り声を上げながら、俺たちに向かって突進してくる。洞窟の狭い空間では回避が難しいが、その分、的確な連携が求められる。
俺は瞬時に魔銃「焔」を構え、魔力を込めて弾丸を放つ。弾丸はまっすぐに妖魔の胴体に命中し、爆発のような火が散る。しかし、妖魔はそれだけで倒れることなく、さらなる攻撃を仕掛けてきた。
「しぶといな……真、援護を頼む!」
俺の叫びに応え、真が剣を振り上げ、正面から突っ込んできた妖魔に斬りかかる。その一撃は妖魔の肩を切り裂き、黒い血が飛び散った。しかし、それでも妖魔は怯まず、鋭い爪で反撃してくる。
「くっ、こいつら本当にタフだな!」
真が苦悶の表情を浮かべながらも、決して後退せずに戦い続けている。彼の気迫が伝わり、俺もさらに気合を入れて攻撃を続けた。
その間、小夜は素早い動きで洞窟の壁を使って妖魔の背後に回り込み、強力な蹴りを放って妖魔のバランスを崩す。霞もまた、薙刀を振りかざし、妖魔たちの攻撃を受け止めながら冷静に対処している。
「私が前を引き受けるから、後ろから援護して!」
霞の声が響き、俺たちはその言葉に従って各自の役割を果たした。俺は少し離れた位置から援護射撃を続け、真と小夜が直接攻撃で妖魔を追い詰める。そして霞が、止めを刺すように薙刀を振り下ろす。
「よし、これで一体は片付けた!」
霞の一撃で一体の妖魔が地面に倒れた。しかし、次の瞬間、さらなる妖魔が洞窟の奥から現れ、鋭い叫び声を上げながら突進してくる。
「まだいるのか……」
俺たちは再び警戒を強め、残る妖魔たちに向き直った。妖魔の数は予想以上に多く、次から次へと現れては襲いかかってくる。そのたびに体力が削られていき、息が荒くなってくる。
「拓真、無理をするな! 無駄に魔力を消費するんじゃない」
真が俺に声をかけてくれるが、俺もここで引くわけにはいかない。強くなるためには、この試練を乗り越えなければならないんだ。
「大丈夫だ、俺だって強くなってる。見てろよ!」
俺は再び「焔」に魔力を込め、妖魔の群れに向かって一斉に弾丸を放った。次々と命中した弾丸が妖魔の体を貫き、炎が立ち上がる。しかし、すべての妖魔が倒れるわけではなく、しぶとく生き残った者たちが再び襲いかかってきた。
「こいつら、どこまでしつこいんだ……!」
小夜が息を切らしながらも、鋭い目で妖魔たちを睨みつける。その目には決して負けないという強い意志が宿っていた。
「くそっ、ここで負けるわけにはいかない!」
俺たちは全力で戦い続け、少しずつ妖魔たちを追い詰めていった。洞窟内の狭い空間を利用して妖魔の動きを制限し、全員の連携で攻撃を仕掛けていく。
やがて、最後の一体が倒れると、洞窟には静寂が訪れた。俺たちは息を整え、ようやく一息つくことができた。
「ふぅ……これでひとまずは片付いたか」
真が剣を下ろし、安堵の表情を浮かべる。全員が疲労の色を隠せずにいるが、互いに微笑み合い、達成感を共有している。
「少しずつ、強くなっているのがわかるわ」
霞が小さく微笑みながら言った。その言葉には、自信と誇りが込められているようだった。
「よし、この調子で進もう」
俺たちは再び隊列を整え、洞窟の奥へと歩を進めていった。この先に何が待っているのかは分からないが、確実に成長していることを感じていた。
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