第5話 父の教え
《side朝霧拓真》
田島一の出来事は、俺にとって影を落とした。
これがこの世界の掟であっても、悲しくて……。
縁側に座り、月を見ながら呆然としていると、静かな夜風が流れる中、父である朝霧理一が隣に座ってゆっくりと口を開いた。
「父さん?」
「拓真、友人の話を聞いた。田島家にも色々あるだろう」
「でも……」
「世の中というのは、時に理不尽で、無情なものだ。正しき者が報われず、影に堕ちた者が見向きもされない。しかしな……闇に葬られた者の命も、無駄になどなることはない。人が忘れたとしても、彼の生き様はこの世に刻まれ続ける」
俺は父さんの言葉で顔をあげる。
父さんは、ふっと煙草に火を灯し、静かに息を吸い込んだ。
「田島一君が残したものを、見落とすなよ。それがどんなに小さな光でも、それを拾い上げ、次に繋げるのがお前の役目だ。闇に覆われても、そこから這い上がる強さを、人は持っている。たとえ誰が認めずとも、お前が彼を覚えていれば、田島一君はお前の中で生き続ける」
夜空を見上げ、理一父さんは目を細めた。
「忘れるな、たとえ世が理を捨てようとも、生きている者たちは決して、捨てない。強さは力ではない。心だ。お前が信じるものを見失うな。それが、どんな闇にも負けない光になる」
静かな風が吹き、二人の間に流れる時間が、深い意味を宿すようだった。
「ありがとう父さん」
理一父さんはその大きな手で俺の頭を撫でてくれた。父の偉大さを感じる。
それは拓真の心を震わせてくれる。
♢
そう、気持ちが沈んでいても、俺は封魔学園高等部に行くために勉強や生活に慣れていかなければならない。
妖魔は封魔学園の世界における最も恐るべき存在であり、人間が陥る闇堕ちの象徴でもある。この世界では、闇に堕ちた妖魔と戦うことで、自らの運命や、友人たちを守るために戦い続ける。
封魔学園では、妖魔との戦闘能力を測るために、妖魔の階級が厳密に定められている。
この階級は、主にその妖魔が持つ「魔力保有量」、「耐久力」、「速度」、「攻撃力」などの総合的な戦闘力を基準に分類されている。
・妖魔の階級
1、
微量の魔力しか持たず、耐久力や攻撃力も極めて低い。
一般的な魔法や簡単な物理攻撃で倒すことが可能。単体での脅威は少ないが、大量に出現すると油断はできない。
2、
素早い動きや少量の魔力攻撃を仕掛けてくる。
封魔学園の初級クラスでの訓練相手となることが多く、特定の弱点を突けば倒しやすいが、不意を突かれると危険な存在。
3、
多くの生徒にとっては脅威となる存在であり、単独で討伐できるのは上級魔道士だけだと言われている。
魔法や物理攻撃に対する耐性を持つ個体もおり、個別の戦術が必要。中妖魔を倒せる実力がある者は、学園内で一目置かれる存在になる。
4、
魔道士たちがチームを組んで戦う必要がある。
大妖魔はしばしば集団で出現することもあり、その際には学園全体での対応が求められる。学園にとっても脅威の存在であり、実際の戦場に出る際にはこの階級の妖魔が主要な敵となる。
5、
厄災級とも呼ばれ、過去に封じられてきた強力な妖魔の一部がこの階級に分類されている。
鬼妖魔の出現は、通常時において非常事態とされており、封魔学園の存亡をかけた戦いになる。
6、
あまりにも強いために封印することしかできなかった。また、ゲームでは、封魔によって数々の事件が起きて胸糞な展開が起こってしまう。
解放されれば世界そのものが滅亡するため、決して出現してはならない存在。
「ふう、復讐とはわかっているが、自分の常識にないことを学ぶのは、骨が折れる」
そして、この世界はゲームである以上は
♢♢♢
名前:朝霧拓真(あさぎり たくま)
年齢:十五歳
階級:魔道士見習い
家系:朝霧家(名門武家・魔銃魔道士の家系)
所属:封魔学園付属中学三年
水準
・健康状態:健康(現在の体調を表す)
・魔力保有量:少妖魔級(対抗できる妖魔の持つ魔力保有量で表す)
・知識量:大学卒業級(前世の記憶を持つ社会人相当)
・耐久力:中妖魔一撃分(中妖魔の一撃に耐えられる程度)
・素早さ:小妖魔級(小妖魔と同じぐらいの速さで動ける)
・運 力:豪運
能力:固有魔法(魔銃闘術:初段)
装備:魔銃(
封魔学園では、対抗する妖魔を基準に強さの度合いを判定する。
現在の朝霧拓真は妖魔の階級で言えば、小妖魔下級だ。
小妖魔の上級にあっただけで殺されてしまう。
♢♢♢
広い庭に設けられた訓練所。この場所では、かつて多くの朝霧家の者たちが修行を積み、妖魔との戦いに備えてきた。
祖先たちの力強い意志を感じるこの場所で、俺もまた、戦いに備えることになる。
「よし……やるか」
俺は静かに腰から二丁の魔銃を抜き取る。
先祖が火縄銃を基に魔力を封じ込めたもの、魔銃にはそのまま魔力を込めるだけではなく、使い手の想いをも封じることができると言われている。
現在では、回転式拳銃二丁が俺の武器として手に馴染んでいる。
魔銃は冷たく、そしてどこか生き物のような感覚があった。
祖先たちが、この銃に込めた思いは強い。何年も、何十年も、妖魔を討つための強い意志が今もそこに宿っている。
「俺の相棒たちはすごい奴らなんだよな」
俺は魔銃を握りしめ、深呼吸する。魔銃は特別な武器だ。魔力を込めることで、単なる物理的な弾丸以上の威力を発揮する。
魔銃を扱うには、魔力のコントロールが不可欠であり、ただの力任せでは制御が効かない。さらに俺は六発の違う魔法を二丁、つまり十二発の魔法を使える。
「本来は、一つの家に一つだけの固有魔法が、俺は十二発。まぁゲームでは器用貧乏的な扱いだったけどな」
だが、ゲームでの知識がある俺には、これが重要な武器であることがわかっている。
「まずは……基本からだ」
俺は自分の魔力を魔銃に通し始める。手のひらからじわりと力が流れ込んでいき、魔銃が微かに震えるのを感じた。
祖先たちが使い続けてきたこともあって、朝霧家の血を引く魔力との相性が良い。
「いい感じだな……」
目の前には、訓練用の標的が並んでいる。俺はそれをじっと見つめ、二丁の魔銃を構える。
「焔と凪……お前たちが俺の相棒だ」
そう呟きながら、焔と凪を再び構えた。
目の前の標的に向けて、魔力を込めた弾を放つ。焔からは火のように燃え上がる魔弾が放たれ、凪からは風のように鋭く敵を貫く魔弾が発射された。
「よし……これで戦える」
俺は汗を拭い、魔銃を見つめる。
主人公である神楽真が闇堕ちする運命を変えるためには、この焔と凪が必要不可欠な武器となるだろう。
そして、いつか必ず神楽真を助ける。
この二丁の銃を最大限に生かしてみせるためにも、俺は出来るだけの訓練をする。
「行くぞ、焔、凪」
俺は再び、学園へと向かう決意を固め、二丁の魔銃に魔力を送る。
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