第12話 遺跡での大冒険と愉快な仲間たち

 酒場での祝杯を終え、健太たちはついに「異界の鍵」を探しに遺跡へ向かうこととなった。街の地下に広がる古代遺跡には、さまざまな罠や危険が待ち受けているという噂がある。しかし、健太たちはいつも通り、楽観的で、少しふざけたやり取りをしながらその道を進んでいた。


「なぁ、健太。遺跡ってさ、どんな感じなんだろうな?やっぱり、でっかい宝箱とかあるのかな?」

 龍太が期待に満ちた声で話しかけてきた。


「宝箱?まぁ、異界の鍵って言うくらいだから、それが入ってるかもしれないけど…でもさ、遺跡ってたいてい罠とかモンスターが出てくるんじゃないの?」

 健太が少し心配そうに答えた。


「まぁ、モンスターが出てきたら…その時はその時だろ?俺たちで何とかするしかないさ!」

 龍太は軽く笑ってみせるが、亮がすぐに突っ込んだ。


「龍太さん、またそんな無茶なことを言うのですか?俺たち、今まで酒飲んで掛け飲みで勝ってきたけど、さすがに遺跡でその手は通用しませんよ?」

 亮が冷静に指摘すると、龍太は「まぁ、何とかなるだろ」と軽く流した。


「そうね。遺跡では酒を飲んで誤魔化すことはできないわ。でも、私たちならきっと大丈夫よ。」

 ミリアが冷静な声で話し、全員が彼女の言葉に頷いた。


「でも、罠には気をつけないと。俺たち、こういう冒険の経験はあまりないからな。」

 直樹が注意深く言うと、龍太がまたしても無邪気に言った。


「でもさ、罠っていったって、そんなにやばいものじゃないだろ?俺たち、掛け飲み勝負で鍛えてるしさ。酒で鍛えた体力で乗り越えられるよ!」


「いや、酒で鍛えたって言うのはおかしいだろ!」

 健太が即座に突っ込み、全員が大笑いする。


 しばらく進むと、遺跡の入り口が見えてきた。それは巨大な石造りの扉で、古代文字が刻まれており、どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。健太たちはその前で足を止め、一瞬だけ静かになった。


「ここか…これが遺跡の入り口だな。」

 健太が少し緊張した声で呟く。


「でっかい扉だな。でも、これどうやって開けるんだ?」

 龍太が不思議そうに扉を見上げる。


「普通に押すとかじゃないですかね?」

 亮があまり気にしない様子で扉に手をかけたが、びくともしない。


「やっぱり簡単には開かないみたいね。この扉には何か仕掛けがあるわ。ここに書かれている古代文字を解読すれば、開け方がわかるかもしれないわね。」

 ミリアが扉に刻まれた文字をじっと見つめ、ゆっくりと解読を始める。


「ミリアが解読してる間、俺たちはどうする?座って待つか?」

 龍太が軽い調子で言ったが、亮は「いや、何か役に立ちましょうよ」と突っ込んだ。


「確かに、待つのは退屈だが…罠があるかもしれないし、油断はできないぞ。」

 直樹が警戒心を強めているが、龍太はリラックスした表情のままだ。


「おいおい、直樹。そんなにピリピリするなよ。大丈夫だって。俺たち、運はいいんだからさ。」

 龍太が笑いながら言うと、ミリアが古代文字の解読を終えた。


「この扉を開けるには…エールを一杯注ぎ込む必要があるみたい。」

 ミリアが冷静に解説した瞬間、全員が一瞬固まった。


「エール?まさか、ここでも酒が必要なのか?」

 健太が驚きの声を上げた。


「そうみたいね。この扉は、エールを象徴する古代の儀式に基づいて作られているわ。私たち、これまで酒場で飲み比べをしてきたけれど、まさか遺跡でも酒が役に立つとは思わなかったわ。」

 ミリアが真剣に言うと、龍太は大声で笑い出した。


「ほら見ろ!俺の言った通り、酒は万能なんだよ!酒があれば何でもできるんだ!」

 龍太が誇らしげに胸を張る。


「いや、それはただの偶然ですよね!」

 亮がまたしても即座に突っ込み、全員が笑いに包まれた。


「じゃあ、エールを注げば扉が開くってことか?」

 健太が疑問を投げかけた。


「そうね…でも、街で仕入れた荷物の中に、確かエールの瓶があったはずよ。それを使いましょう。」

 ミリアが静かに言い、彼女はバッグからエールの瓶を取り出した。


「よし、エールで扉を開けるなんて、こんな面白いことはないな!さあ、注いでくれ!」

 龍太が興奮気味に言い、ミリアはエールを慎重に扉の中央にある小さな溝に注ぎ始めた。


 すると、扉がゆっくりと音を立てて開き始めた。重々しい石の扉が完全に開くと、その向こうには暗く広がる廊下が現れた。


「よし、開いたな!やっぱり酒は偉大だ!」

 龍太が叫んだが、亮は呆れた顔で言った。


「龍太さん、いつも酒のことばっかりですね…。でも、今回は確かに役に立ちました。」


「これで中に入れるわね。でも、油断しないこと。遺跡の中にはきっと罠や魔物が待ち受けているわ。」

 ミリアが真剣な表情に戻り、全員が気を引き締めて遺跡の中に足を踏み入れた。


 遺跡の内部は想像以上に広大で、薄暗い空間が広がっていた。古代の壁画や彫刻が所々に見られ、時折、どこからか不気味な風が吹き抜ける。


「なんか、こういうところって、いきなり何かが飛び出してきそうだよな。」

 龍太が緊張しながら歩き出す。


「お前、そう言ってると本当に何か出てきそうだぞ?」

 健太が冗談交じりに返すが、内心は少しビクビクしている。


「それにしても、さっきのエールの扉は面白かったけど、この遺跡の中に他にも酒に関連する仕掛けとかあるんですかね?」

 亮が壁を軽く叩きながら言った。


「酒に関連する仕掛けなんて、さすがに他にはないだろう…と思いたいけど、この異世界じゃ何が起こってもおかしくないよな。」

 健太が少し不安げに答えると、龍太が笑いながら肩を叩く。


「大丈夫だって!俺たちにはこれまでの飲み比べ勝負で培った経験があるんだ。どんな仕掛けでも俺たちなら突破できるって!」


「龍太さん、本気でそう思っているのですか?罠と酒は関係ないですよ。」

 亮が冷静に指摘するが、龍太は全く気にせず「まぁ、なんとかなるさ!」と明るく言い放った。


「でも、本当に何か飛び出してきたら、どうするつもりなの?」

 ミリアが少し真剣な声で話しながら、辺りを警戒している。


「その時はその時だ。俺たち、意外と逃げ足は速いからな。」

 健太が軽い調子で答えると、亮が「それじゃ、冒険者として失格ですよ」と突っ込んだ。


「でも、ここに来たからには、何か手掛かりを見つけないといけない。異界の鍵を探し出さないと、帰れないからな。」

 直樹が冷静に状況をまとめ、全員が頷いた。


 しばらく進むと、突然、龍太が床の上に刻まれた模様に気づいた。


「おい、これ見てみろよ!何か古代文字が書かれてるぞ!」

 龍太が叫び、全員が駆け寄ってその文字を覗き込んだ。


「えっと、これは…『ここを踏むと、痛い目に遭う』って書いてあるわね。」

 ミリアが冷静に解読し、全員が一瞬静まり返った。


「えっ、そんな直接的な警告あるのかよ!」

 健太が驚きながら後ずさりし、龍太は慌ててその場から飛び退いた。


「痛い目って…具体的には何が起こるのですか?」

 亮が不安げに尋ねるが、ミリアも「具体的なことは書いてないわね。ただ…『とにかく踏むな』ということは明白ね」と冷静に答える。


「まぁ、言われた通り、踏まないようにしよう。俺たち、こういう罠にはあんまり強くないからな。」

 直樹が再び冷静に指示し、全員がその場を慎重に避けて通り過ぎようとした。


 だが、その瞬間――


「ぎゃっ!」

 龍太が足を滑らせて、警告された床の模様に思いっきり踏み込んでしまった。


「龍太さん、何やっているんですか!」

 亮が叫び、全員が一斉に龍太を振り返ると、突然、床がガタガタと揺れ始めた。


「しまった!罠が発動したぞ!」

 健太が慌てて叫ぶが、すでに遅かった。壁から大きな石の球が転がり出してきて、彼らの方に向かって転がり始めた。


「おいおい、これはまさに映画のワンシーンじゃないか!」

 龍太が叫びながら走り出し、全員が一斉にその後を追って逃げ出した。


 巨大な石の球が彼らの背後から迫り来る中、健太たちは必死に廊下を駆け抜けた。


「どうして、こうなるんだよ!」

 健太が息を切らしながら叫ぶ。


「罠に引っかかったからですよ!」

 亮がすぐに突っ込みながら、同じく必死に逃げている。


「でも、こんな石球に追いかけられるなんて聞いてないぞ!」

 龍太が絶叫しながら走り続けるが、全員が息も絶え絶えだ。


「前方に出口が見える!そこまで逃げ切るんだ!」

 ミリアが冷静に指示を出し、全員が一斉にその出口に向かって猛ダッシュを始めた。


「俺たち、間に合うのか?!」

 直樹が少し焦りながらも冷静に走り続け、全員があと少しで出口に到達するというところで――


「ジャンプだ!」

 健太が叫び、全員が一斉に飛び込むように出口から飛び出した。その瞬間、背後で巨大な石の球が壁に激突し、轟音を響かせた。


「ふぅ…危なかった。」

 健太が息を整えながら、地面に倒れ込む。


「もう少しで潰されるところだった…ほんと、龍太はおっちょこちょいですよ。」

 亮が苦笑しながら龍太を見つめると、龍太は恥ずかしそうに頭を掻いていた。


「いや、あれは…俺がわざとやったわけじゃないんだって!」

 龍太が言い訳を始めるが、全員が「それでも気をつけろよ」と軽く笑っていた。


 石球を避けて何とか一命を取り留めた彼らは、遺跡の奥へとさらに進むことにした。道中にはまだまだ危険な仕掛けがありそうだが、健太たちは相変わらず楽観的だった。


「よし、次は何が待っているか分からないけど、今度はもっと慎重に進もうな!」

 健太が前を見据えて言うと、全員が「了解」と返事をした。


「でも、さっきの石球みたいな罠、また出てくるのか?」

 龍太が少し怯えながら聞くと、ミリアが冷静に答えた。


「この遺跡には、きっと他にも古代の仕掛けが隠されているわ。でも、私たちが慎重に行動すれば大丈夫よ。」


「そうだな。罠は避けつつ、目的は異界の鍵だ。それを見つけて、さっさとここを出よう。」

 直樹が簡潔にまとめ、全員が気を引き締めて進む。


 しばらく遺跡を探索していると、再び龍太が何かを発見した。


「おい、見てみろよ!なんかここにも仕掛けがありそうだぞ!」

 龍太が壁に刻まれた模様を指差して興奮気味に言う。


「またかよ。頼みますから、今度はちゃんと慎重にしてくださいよ?」

 亮が冷静に注意し、全員が一歩下がりながら様子を見守る。


「俺は今度こそ大丈夫だ!見てろよ!」

 龍太が胸を張ってその模様に手を触れた瞬間――突然、壁がスライドし、隠し通路が現れた。


「おっ、すごいじゃないか!今度は当たりだな!」

 健太が驚きの声を上げたが、その隠し通路の奥から、何やら奇妙な音が聞こえてくる。


「ちょっと待ってください、その音…何か嫌な予感がします。」

 亮が顔をしかめて言ったその瞬間、通路の奥から一気に風が吹き抜け、何かが転がり出てきた。


「また石球か!?」

 健太が驚きながら後ずさるが、転がり出てきたのは…大量の小さな酒樽だった。


「なんだ、これ!?酒樽かよ!」

 龍太が大笑いしながら転がる樽を避ける。


「この遺跡、酒がテーマなんじゃないんですかね?」

 亮が冗談を言うと、全員が一瞬驚きの表情を見せた後、大笑いした。


「酒がテーマの遺跡なんて、さすがに聞いたことないよな!」

 健太が笑いながら言うと、龍太もお腹を抱えて笑い出した。


「でもさ、これが現実に起こってるってのがすごいよな。酒樽が転がってくるなんて、普通あり得ないだろ!」

 龍太が楽しそうに樽を蹴飛ばしながら、全員で次の進行を考えていた。


「でも、慎重にしないと。また本物の罠が出てきたら、笑ってられなくなるぞ。」

 直樹が冷静な声で警告する。


「分かってるよ、直樹。けど、なんかこの遺跡、俺たちにとって都合が良すぎる気がするんだよな。酒がらみの仕掛けが多すぎる。」

 健太が不思議そうに周りを見渡した。


「もしかしたら、この遺跡自体が酒と何かしらの関係があるのかもしれないわ。異界の鍵を見つけるためのヒントになるかもしれない。」

 ミリアが冷静に考察を始め、全員がその言葉に耳を傾けた。


「酒と関係のある異界の鍵か…。なんか俺たち、酒で全てを解決しようとしてませんか?」

 亮が冗談めかして言うと、また全員が笑い出した。


 先へ進むと、奇妙な部屋にたどり着いた。部屋の真ん中には大きなテーブルがあり、その上にはエールのカップがずらりと並んでいた。


「なんだこれ?宴会でも始まるのか?」

 龍太が目を輝かせて言う。


「待て、これは罠の匂いがするぞ。」

 健太がすぐに警戒したが、ミリアは近づいてカップの中をじっと見つめた。


「これは…ただのエールね。特に毒や魔法がかけられているわけではないみたい。でも、これを飲んで何かが起こる可能性はあるわね。」

 ミリアが慎重にカップを手に取って観察している。


「エールか…どうする?これ、飲んでみるか?」

 龍太が冗談めかして言うと、亮が「いや、さすがに罠ですよ」と突っ込む。


「でも、ここまで来て酒が置いてあるだけってのもおかしいよな。」

 健太が疑わしげに言いながらも、全員がどうすべきかを考えあぐねていた。


「でも、飲まなければこの部屋から先に進めないような気がするのよ。もしかしたら、エールを飲むことで次の道が開かれるのかもしれないわ。」

 ミリアが冷静に推測し、全員が顔を見合わせた。


「よし、じゃあ俺がまず飲んでみる!もし何かあっても、俺が最初に試してみればいいだろ?」

 龍太が勢いよくカップを手に取ろうとするが、亮がその手を押さえた。


「龍太さんが飲んで倒れたら面倒です。ここは慎重にいきましょう。」

 亮が慎重に言うと、直樹も「無理する必要はない。何か他に手掛かりがあるかもしれないから、調べてからにしよう」と提案した。


 結局、全員でカップや部屋の中を詳しく調べたが、特に罠らしいものは見つからなかった。そこで、健太たちは「やはりエールを飲むしかない」という結論に達した。


「ここまで来たら、やっぱり飲むしかないだろ!俺が先陣を切る!」

 龍太がまたしても張り切ってカップを持ち上げ、勢いよくエールを飲み干した。


「うまい!」

 龍太が笑顔で言ったが、その瞬間、部屋の壁が突然動き出し、新たな通路が現れた。


「やっぱり正解だったみたいね。エールを飲むことで道が開かれたわ。」

 ミリアが満足げに言い、全員がその先の道を見つめた。


「でも、なんかさっきから酒に頼りすぎてる気がするんだよな…。異界の鍵って、本当に酒と関係があるのか?」

 健太が不安そうに呟くが、龍太が再びカップを掲げながら言った。


「まさか!俺たちの運命は酒と共にあるんだよ!酒があればどんな難関でも突破できる!」

 亮が呆れた顔で「それが通用するのはここだけですよ」と言いながらも、全員が笑い出した。


 新たに開かれた通路を進むと、さらに奥に大きな部屋が見えてきた。部屋の中心には、異界の鍵を象徴するような大きな石柱が立っている。


「ここか…いよいよ鍵が見つかるかもしれないな。」

 健太が真剣な表情で言い、全員が慎重に部屋の中を確認しながら進む。


「でも、こんな簡単に手に入るわけがないわね。何かが待ち受けている気がするわ。」

 ミリアが警戒しながら進み、亮も「確かに、こんな都合よく鍵が転がってるとは思えない」と冷静に言った。


「まぁ、どんな罠でも俺たちなら乗り越えられるさ!」

 龍太が無邪気に言いながら、異界の鍵がありそうな石柱に近づこうとしたその瞬間――


 突然、部屋全体が揺れ始め、床が崩れ落ちた。全員がとっさに反応してその場から飛び退いたが、龍太が一瞬遅れて穴に落ちかけた。


「おい、龍太!危ない!」

 健太が叫び、龍太は間一髪で壁に手をかけて持ちこたえた。


「うわぁ!これ、また罠だろ!?」

 龍太が必死に叫び、亮が「当たり前でしょ。もう少し慎重にしてください!」と冷静に助けを求める。


「ほら、これがあるから気をつけないといけないのよ。」

 ミリアが軽くため息をつきながら、健太と一緒に龍太を引き上げた。


 こうして、一つ一つの仕掛けや罠を突破しながら、健太たちは遺跡の最深部へと進んでいった。


「さて、次は何が待ってるかな。俺たち、酒で乗り切れる限りは何でも来いって感じだよな。」

 龍太が元気よく言うと、亮がすかさず「その楽観的な態度が、逆に危険なんですが」と冗談を言いながら笑った。


「でも、次はもっと慎重に行きましょうね。私たち、まだやるべきことがたくさんあるわ。」

 ミリアが冷静に言い、全員が気を引き締めた。


 健太たちはなんとか龍太を助け上げたものの、全員が緊張感を取り戻していた。彼らは、次に待ち受ける罠に対して注意を払いながら、さらに遺跡の奥深くへと進むことを決意した。


 さらに進むと、彼らは新たな部屋にたどり着いた。部屋の中央には巨大な鏡が立っており、その鏡には何も映し出されていないようだった。


「なんだこれ?鏡か?」

 龍太が鏡を見上げながら疑問の声を上げた。


「なんか怪しいな…普通の鏡じゃないですね。」

 亮が慎重に言い、健太も鏡に近づいていった。


「この鏡、何かを映し出すためにあるのかもしれないな。でも、それが何なのかはわからない。」

 健太が少し戸惑いながら言う。


「もしかしたら、鏡を通して何かヒントが得られるかもしれないわね。慎重に調べてみるべきだわ。」

 ミリアが鏡に近づいて触れようとしたその瞬間――


 突然、鏡がぼんやりと光り始め、中に映し出されたのは…健太たち自身の姿だった。


「おい、これって俺たちが映ってるぞ!」

 龍太が驚きの声を上げ、全員が鏡に映った自分たちを見つめた。


「なんだこれ?ただの鏡じゃないのか?」

 健太が戸惑いながら言うが、ミリアは冷静に答えた。


「この鏡は、私たちの姿だけを映しているわけじゃないみたい。何か別の意味があるのよ。」


「別の意味って…何ですか?」

 亮が少し警戒しながら問いかける。


「おそらく、私たちが鏡の前で何か行動を起こすことで、鏡が反応するはずよ。それが鍵を見つけるためのヒントになるんじゃないかしら。」

 ミリアが慎重に説明すると、龍太がまたしても前に出た。


「よし、それなら俺がやってみる!ちょっとした動きで何か起こるかもしれないだろ?」

 龍太が勢いよく鏡の前でポーズを取るが、鏡は何も反応しない。


「龍太さん、ポーズ取っても意味ないでしょ!」

 亮が呆れて突っ込むが、龍太は「だって試してみないとわからないだろ?」と笑っている。


 しばらくして、ミリアが冷静に鏡を再度調べ始めた。


「どうやら、ただ鏡の前に立っているだけでは何も起こらないわね。もしかしたら、私たちが何か特定の動作をする必要があるのかも。」

 ミリアが考え込んでいると、健太が少し考えながら言った。


「もしかして…酒がまた関係してるんじゃないか?この鏡、俺たちが今までの経験を映し出している気がするんだ。」


「おいおい、また酒ですか?さすがにこの鏡まで酒が絡んでくるなんてないでしょ?」

 亮が半ば呆れたように言うが、龍太はその言葉を聞き逃さなかった。


「いや、でも健太の言うことは一理あるかも。だって、この遺跡、酒が絡む仕掛けが多いじゃん?」

 龍太が再びエールの瓶を持ち出し、鏡の前で飲み干そうとする。


「またそれですか!本当に酒で何でも解決しようとしていませんか?」

 亮が突っ込みを入れるが、龍太は気にせずエールを飲み干し、鏡の前でポーズを取った。


 すると、鏡の表面が再び光り始め、今度は新たな文字が浮かび上がってきた。


「おっ、何か出てきたぞ!」

 龍太が喜びの声を上げ、全員がその文字をじっと見つめた。


「これは…『真実の道を示せ』と書かれているわ。」

 ミリアが解読し、全員が真剣な表情になった。


「真実の道…どういう意味だ?」

 健太が首をかしげると、亮が少し考えて言った。


「たぶん、俺たちがこれまでの旅で学んできたこと、つまり、自分たちの本当の姿を鏡に映し出すことで次の道が開けるってことじゃないですか?」


「じゃあ、どうやってそれを証明すればいいんだ?」

 健太が戸惑いながら言うと、ミリアが静かに答えた。


「たぶん、私たちが一緒にいる理由、これまで一緒に戦ってきた意味をこの鏡に示すことが必要なのよ。」


 全員が深く考え込む中、龍太が静かに口を開いた。


「俺たちが一緒にいる理由?それって、俺たちが仲間だからってことじゃないか?」

 龍太が真剣な顔で言う。


「仲間…か。確かに、俺たちここまで色々なことを一緒に乗り越えてきたな。」

 健太が少し考えながら頷いた。


「それに、俺たちは酒を飲みながら笑い合い、時には命がけで戦った。そんな馬鹿げた冒険をしてきたけど、それが俺たちの本当の姿だってことですね?」

 亮が少し微笑みながら言うと、ミリアも静かに頷いた。


「そうね。私たちが一緒にいる理由、それは単に旅のためだけじゃなく、互いに信頼し合っているからだわ。それを鏡に示せば、次の道が開かれるかもしれない。」


「よし、なら俺たち全員でこの鏡に立とう!俺たちが仲間であることを証明するんだ!」

 健太が力強く言い、全員が鏡の前に立った。


 すると、鏡がさらに強く光り始め、部屋全体が柔らかな光に包まれた。次の瞬間、鏡の表面が消え、新たな扉がゆっくりと開かれていった。


「やった!これで次に進める!」

 龍太が喜びの声を上げ、全員が一斉にその扉を見つめた。


 彼らは新たに開かれた部屋へと足を踏み入れた。


「これで鍵が見つかるかもしれない。気を抜かずに行こう。」

 健太が前を見据え、全員が準備を整えた。


「ここまで来たら、絶対に鍵を見つけるしかないですね。」

 亮が慎重に言いながら、先頭に立って歩き始める。廊下の先には、かすかに光が漏れている部屋が見える。


「異界の鍵ってどんな形してるんだろうな。宝石がいっぱい付いた豪華なやつかな?」

 龍太が期待に満ちた声で話しかける。


「そんなの、見てのお楽しみだよ。でも、期待しすぎるとがっかりするかもな。」

 健太が笑いながら言うと、亮がすぐに「確かに、そういうのって実際は意外と地味だったりするものですよね」と冗談交じりに答える。


「まぁ、どんな形をしていても、俺たちがこれまでやってきたことが無駄じゃなかったって証になるわけだし、それだけでも十分だろ。」

 直樹が静かに話し、全員が同意するようにうなずいた。


 彼らはついに、遺跡の最奥部にたどり着いた。部屋は広く、中央には大きな祭壇が置かれており、その上に一つの鍵が浮かんでいるのが見えた。


「これが…異界の鍵か?」

 健太が慎重に近づきながら呟く。


「やっぱり、見た目は地味ですね。」

 亮が小声で冗談を言うが、龍太は目を輝かせながら「でも、これで俺たちは元の世界に帰れるんだ!」と興奮気味に話す。


「待って、まだ気をつけて。何か罠があるかもしれないわ。」

 ミリアが警戒しながら祭壇を調べる。


「そうだな。ここまで来て最後に失敗なんてしたくない。」

 直樹も冷静に周りを見渡しながら慎重に動き始めた。


 全員が祭壇の周りをじっくり調べていたが、罠らしきものは見当たらない。やがて、ミリアが頷きながら口を開いた。


「どうやら、特に罠はないみたい。これは私たちが手に入れるべきものだわ。」

 ミリアが言うと、健太は祭壇に手を伸ばし、ゆっくりと鍵を手に取った。


「やった…ついに手に入れた!」

 健太が鍵を高々と掲げ、全員が喜びの声を上げた。


「これで俺たち、元の世界に帰れるんだな!」

 龍太が飛び跳ねて喜びを表現する。


「でも、まだ帰り道がありますよ。こんな簡単に終わるとは思えないです。」

 亮が冷静に言い、全員がその言葉に一瞬静かになった。


「確かに、遺跡の中を戻らないといけないし、これまで通ってきた道に罠が復活してる可能性もあるわ。」

 ミリアが鋭い洞察を述べる。


「いやいや、罠なんかもう一度踏むほど間抜けじゃないって!」

 龍太が笑いながら言うが、健太は額に手を当てて苦笑する。


「お前がそう言うと逆に怖いんだよな。さっきも危ない目に遭ったばかりだし、気をつけて進もう。」

 健太が釘を刺し、全員が出口へ向けて慎重に動き出した。


 遺跡の中を元に戻る道は、予想以上に険しかった。健太たちは慎重に進んでいたが、やはり罠や仕掛けが彼らを待ち構えていた。


「おい、さっきと違って床が光ってるぞ!」

 龍太が驚きの声を上げた。彼らが通り過ぎた廊下の床が再び変化し、光り始めていた。


「もしかして、通るたびに違う罠が発動する仕掛けなのかもしれないわね。」

 ミリアが真剣な表情で廊下を見つめる。


「じゃあ、どうする?慎重に進むしかないか?」

 健太が考え込むと、亮が冷静に提案した。


「少しずつ動いて、反応を確認しながら進みましょう。それしか方法はないでしょう。」


 全員が慎重に動き出し、亮の言う通り、少しずつ一歩一歩を確認しながら進んでいった。途中で小さな罠が発動し、床が崩れたり、石が転がり落ちてくることもあったが、健太たちは何とか無事に対応していった。


「俺たち、今までこんなにも慎重に動いたことあったか?」

 龍太が冗談めかして言うと、亮がニヤリと笑って返した。


「少なくとも、龍太さんはこれくらいの慎重さが必要ですよ。」


 罠をかいくぐり、ようやく遺跡の出口にたどり着いた健太たちは、息を整えながら再び外の空気を吸い込んだ。


「やった…やっと外に出たな!」

 健太が笑顔で言い、全員がほっとした表情を見せた。


「でも、これで異界の鍵は手に入った。次は元の世界に帰る方法を見つけるだけだ。」

 直樹が冷静に次のステップを確認し、ミリアが頷いた。


「この鍵を使えば、帰還の儀式を行うことができるはずよ。ただ、そのための魔力や場所がまだわからないから、もう少し調査が必要ね。」


「つまり、もう少し酒場でのんびりできるってことか!」

 龍太が満面の笑みで言い、亮が苦笑しながら「またそれですか」と突っ込む。


「でも、確かに少し休息は必要だわ。この冒険でかなり体力を使ったし、次のステップに進む前に準備を整えましょう。」

 ミリアが静かに提案し、全員が賛成した。


 健太たちは街に戻り、いつもの酒場「風のエール亭」に向かった。彼らの帰還を知った酒場の常連たちが次々に声をかけてくる。


「お前ら、無事に戻ってきたのか!また勝利したんだな!」

 店主が健太たちを見て嬉しそうに声をかけた。


「そうだ!俺たちは無敵だ。遺跡の罠なんかじゃ倒れないぜ!」

 龍太が大声で誇らしげに答えると、亮がすぐに「いや、もう少しで本当に危なかったでしょ」と突っ込んだ。


「まぁ、いろいろあったけど、とにかく無事に戻れたってことが一番だな。」

 健太が笑いながら言い、全員でカウンターに腰を下ろした。


「それじゃ、今日も一杯やるか?」

 店主が嬉しそうに聞くと、健太たちは一斉に「もちろん!」と返事をした。


 健太たちは、遺跡からの帰還を祝って再び飲み比べを始めた。店内は賑やかになり、彼らの冒険談や笑い話が飛び交った。


「なぁ、遺跡の中であの酒樽が転がってきた時、俺たち全員で逃げたの覚えてるか?あの場面、映画みたいだったよな!」

 龍太が楽しそうに話すと、亮がすかさず「龍太さんがあの酒樽に飛びつこうとしてたことも忘れていませんよ」と突っ込んだ。


「いや、あの時はほんとにそうするしかなかったんだって!」

 龍太が笑いながら言い訳するが、健太やミリアも笑いをこらえきれない。


「でも、こうしてまた一緒に酒を飲めるっていうのは、やっぱりいいことだな。」

 健太がしみじみと呟く。


「その通り。酒場での一杯こそ、俺たちの冒険の締めくくりだ。」

 直樹が静かに言い、全員が笑顔で杯を掲げた。


 酒場での宴が終わり、全員が疲れた体を休めるために宿に戻った。しかし、健太たちの冒険はまだ終わりではなかった。異界の鍵を手に入れたものの、元の世界に帰るためには、まだいくつかの謎を解き明かさなければならない。


「次はどこへ行くんだろうな。俺たち、また新しい冒険が待ってる気がするぜ。」

 龍太がベッドに倒れ込みながら言う。


「まぁ、その前に少しは休みましょう。次の冒険に備えて、体力を取り戻しておかないと。」

 亮が静かに言い、全員がそれに同意した。


「でも、あなたたちならどんな冒険でも乗り越えられるわ。次のステップに進むのは、そんなに遠くないはずよ。」

 ミリアが笑顔で言い、健太たちもそれを信じていた。


 こうして彼らは、次なる冒険への期待を胸に、しばしの休息を楽しむのだった。

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