第8話 情報収集
健太たちは、三大魔将との試練を終え、彼らの実力を証明した。異世界の街で一息つく間もなく、次に進むための手掛かりを探るべく、街で情報収集を始めることにした。街にはさまざまな情報が飛び交い、力を証明した彼らにとっても、その次に進むための重要な手掛かりがここにあるはずだった。
「試練は終わったけど、次に何をするかだよな。まずは街で情報を集めよう。」
健太はミリアと仲間たちに向かって声をかけた。
「そうね、力を証明したからこそ、今なら有力な情報が手に入るかもしれないわ。」
ミリアは冷静に答え、街を見渡す。
「よし、じゃあさっそく情報屋を探そうぜ!俺はそのついでに何かうまいものでも食べてくる。」
龍太が元気に言うと、亮は呆れ顔で返した。
「龍太さんは本当に食べ物と酒のことしか考えてないんですね…。でも、俺も腹減ってきたしな、行きましょう。」
健太たちは街の賑やかな通りを歩きながら、情報が集まりそうな場所を探していた。街のあちこちには、露天商や路上パフォーマーがいて、にぎやかな雰囲気が漂っている。そんな中、ミリアが一軒の建物に目を向けた。
「ここに入ってみましょう。情報屋がいるはずよ。」
ミリアが指さしたのは、古びた看板が掲げられた一軒の小さな店だった。店の入り口には、ほこりまみれのカーテンが垂れ下がっており、何やら怪しげな雰囲気が漂っていた。
「ここ、本当に大丈夫なんですかね…?」
亮は少し不安げに呟いたが、龍太はその不安をよそに「面白そうじゃん!」と笑いながら店に入っていった。
店内に入ると、奥から怪しげな男がゆっくりと近づいてきた。彼は細身で、フードを深く被っており、顔はほとんど見えない。
「おやおや、若い冒険者たちか。ここに来たってことは、何か知りたいことでもあるのかね?」
その男――情報屋が、ニヤリと笑いながら問いかけた。
「そうだ。俺たちはここで次の試練や手掛かりを探している。何か知ってるか?」
健太が真剣な表情で質問すると、情報屋は大袈裟に肩をすくめた。
「ほう、試練を乗り越えた者か…なるほど。だが、ただで教えるわけにはいかない。」
情報屋は手をこすりながら、にやりと笑った。
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
龍太が少しイライラしながら問い詰める。
「フフフ、お金でなくとも、情報には情報を。お前たちの面白い話でも聞かせてもらえれば、特別に教えてやろう。」
情報屋の言葉に、全員が一瞬顔を見合わせた。
「俺たちの面白い話…か?」
健太が戸惑っていると、龍太が手を挙げた。
「任せろ!俺に面白い話なんて山ほどあるんだから!」
彼は大きく胸を張り、自信満々に語り始めた。
「よーし、俺の話を聞けよ!これは、俺が初めて酒場で飲んだ時の話だ。あの日は確か、特別な酒が出てくるってことで、俺もガキの頃から楽しみにしてたんだよ。」
龍太が話し始めると、健太や亮が苦笑いしながら聞いている。
「その酒ってのが、もうめちゃくちゃ強くてさ!俺は一口飲んだだけで頭がグルングルン回って、気づいたらテーブルの下に転がってたんだ。しかも、その時俺、店のマスターに『この酒、ぬるいぞ!』なんて叫んでさ、みんなに大笑いされたんだよ!」
「…くだらねぇ。」
亮がため息をつきながら突っ込むが、龍太は全く気にせず続ける。
「それで、店のマスターが『じゃあもっと熱いのを出してやろう』って、今度は火をつけた酒を持ってきたんだ!俺、そんなの飲めるわけねぇのに、また張り切って飲もうとしたら、テーブルごと燃やしちまったんだよ!」
龍太は誇らしげに話すが、周りは呆れ顔だ。
「だから、それ面白いというより迷惑な話じゃねぇか!」
健太が笑いながらツッコミを入れる。
だが、情報屋は龍太の話を聞いて大爆笑していた。「ハハハ、面白いな!その酒の話、初めて聞いたよ!お前、本当に無茶をやらかしたんだな。」
「だろ?俺、酒には自信があるんだ。次もまた強いやつと飲み比べしてやるぜ!」
龍太は満面の笑みを浮かべて胸を張った。
龍太の話に満足した情報屋は、にやりと笑いながら再び健太たちに向き直った。
「よし、約束通り情報を教えてやろう。街の北にある図書館に行ってみるといい。そこには、この世界に伝わる古い文献が保管されている。次に進むための手掛かりは、そこにあるはずだ。」
「図書館か…。情報としては悪くないな。ありがとう。」
健太が感謝を述べると、情報屋は手を振って笑った。
「いやいや、お前たちの話は面白かったよ。今度また何か面白い冒険譚があったら、ぜひ聞かせてくれ。特にその龍太の話がな!」
「おっ、任せておけ!次はもっとすごい話を持ってくるぜ!」
龍太は自信たっぷりに答えたが、亮がすかさず言った。
「それ、迷惑をかける話はやめてください…。また何かやらかしそうで怖いですよ。」
「まぁまぁ、でもいい情報が手に入ったんだし、次に進む準備ができたじゃないか。」
直樹が冷静にまとめ、全員がうなずいた。
情報を得た健太たちは、まずは街の北にあるという図書館へ向かう準備を始めることにした。しかし、龍太がまだ何かを気にしている様子だ。
「なぁ、ちょっと図書館に行く前にさ、もう一杯だけ飲みに行かないか?」
龍太が少し期待を込めて提案する。
「またですか…。龍太さん、本当に懲りないですね。」
亮が呆れながらも、どこか楽しそうな笑顔を見せた。
「でも、情報集めの途中でまた面白いことが起きるかもしれないわね。」
ミリアが微笑んで言うと、健太も笑いながら頷いた。
「よし、それじゃあ図書館に行く前に、もう一軒だけ寄っていこうか。面白い話がまた聞けるかもしれないしな。」
健太が言うと、全員が酒場に向かって歩き出した。
街での情報収集はまだ続くが、彼らの旅は次の段階へと進み始めていた――。
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