第7話 三大魔将最後の試練

 健太たちは、三大魔将の最後の一人、ベラトール・アルコールとの試練に挑む準備を整えていた。これまでの戦いで身体も精神も極限まで追い込まれていたが、最後の飲み比べがこれまでのどれよりも過酷であることを全員が理解していた。


「これが最後の試練か…。でも、俺たちで何とかなるはずだ!」

 健太は強い決意を込めて仲間たちを見回した。


「酔って倒れるわけにはいかないな…。でも、いつもよりもっと飲まなきゃならないのか…」

 亮が苦笑しながらつぶやく。


「俺たちならできる。これまでもそうだったんだから!」

 龍太がカップを掲げて大声を上げると、全員の士気が一気に高まった。


 ミリアが前に立ち、厳しい表情で彼らを見つめた。「最後の三大魔将、ベラトール・アルコールとの戦いは、これまでのどれよりも厳しい。覚悟を決めろ。」


 地下の闘技場に到着すると、広大な空間に冷たい空気が漂っていた。彼らの目の前には、全身を黒い鎧で覆った巨漢が立っていた。その男は、大きな酒杯を片手に持ち、不気味な笑みを浮かべている。


「俺の名はベラトール・アルコール。この地で最も強い酒を操る者だ。お前たちがここまで来たことは認めてやるが、ここからが本当の戦いだ。」


「飲み比べに勝つのは俺たちだ。どんなに強い酒でも飲み干してやる!」

 健太が力強く言い放った。


 ベラトールは冷静にカップを持ち上げ、ゆっくりと口元に運んだ。「その自信がどこまで続くか見せてもらおう。」


 そして、戦いが始まった。


 最初の一杯を飲み干した瞬間、健太たちはすぐにその酒の異質な力を感じた。


「うぅ…これはただの酒じゃない…。強烈すぎる…」

 健太は額に汗をにじませながらカップを置いた。


「でも、俺たちはここまで来たんだ。こんな酒に負けるわけにはいかない!」

 龍太は顔を赤らめながら、次のカップを手に取る。


「どんどん飲んでいくぜ!俺は止まらないぞ!」

 龍太は勢いに任せてカップを次々と飲み干し、相手にプレッシャーをかけようとする。


「龍太さん、ちょっと飛ばしすぎです!冷静に!」

 亮が止めようとするが、龍太はすでに次の一杯に向かっていた。


 ベラトールは不敵な笑みを浮かべた。「勢いだけでは勝てんぞ。この酒は飲む者の魂を揺るがす。お前たちが本当に酒を理解しているのか、試してやる。」


 ベラトールもまた、次の酒を豪快に飲み干した。その飲み方は、まるで酒そのものが彼の体に吸い込まれていくかのようだった。


 飲み比べはさらにエスカレートしていく。健太たちはベラトールの圧倒的な飲みっぷりに驚きつつも、自分たちの方法で勝負に出ることを決意した。


「ベラトールが強いのは分かった。でも、こっちだってトリッキーな飲み方でプレッシャーをかけてやる!」

 健太が叫び、突然カップを空中に放り投げた。


 その瞬間、健太は片手で別のカップを持ち、放り投げたカップを空中でキャッチして同時に一気飲みをした。


「何だと!?」

 ベラトールが少し動揺を見せた。


「どうだ!酒を楽しむ余裕だってあるってことさ!」

 健太は笑みを浮かべ、再び別のカップを掲げた。


「いいね!俺もやるぜ!」

 龍太は同じように、二つのカップを両手に持ち、交互に飲み干していく。


「俺たちはここまで酒とともに戦ってきたんです!お前に負けるわけない!」

 亮もトリッキーな飲み方で、ベラトールにプレッシャーを与えようとする。


「ふん、面白い。だが、そんな小細工では勝てないぞ!」

 ベラトールはさらに大きな酒杯を持ち上げ、今度は一気飲みを始めた。琥珀色の酒が豪快に流れ込み、まるでベラトールが酒そのものを吸収しているかのような勢いだった。


「こいつ…本気で飲んでるな!」

 直樹が驚きの声を上げた。


「このままじゃ勝てないかもしれない…でも、俺たちにはまだ手がある!」

 健太は全員に向かって指示を出し、次なる作戦に移った。


 健太たちは次々にカップを掲げ、一気飲みを繰り返し、ベラトールにプレッシャーをかける戦術を取った。彼らは互いに飲み干すタイミングをずらしながら、まるで無限に飲み続けるかのように振る舞った。


「まだまだ飲めるぞ!」

 龍太が笑顔で叫び、次のカップを豪快に飲み干す。


「俺たちだって限界じゃないですよ!」

 亮も次のカップを素早く飲み、ベラトールに向かってニヤリと笑った。


「お前たち、何をしている?」

 ベラトールは少し苛立った様子を見せた。


 彼らの飲み方は、一見無駄な動きに見えながらも、ベラトールにプレッシャーをかけていた。ベラトールはその重圧を感じ始め、酒の勢いを少し失い始めていたのだ。


「いいぞ、もっとプレッシャーをかけろ!こっちはまだ酔ってないんだから!」

 健太が声を上げ、全員で一気飲みを繰り返す。


「くそっ…お前たちがここまでやるとは思わなかった。」

 ベラトールは苦しげに酒杯を持ち直したが、その動きは鈍くなっていた。


 全員が次々に酒を飲み続け、ベラトールもそれに応じて飲み続けていたが、徐々に限界が見えてきた。


「これ以上飲むのは無理だ…!」

 亮が顔を赤くしながら倒れ込んだ。


「まだだ…俺たちはここで終わらない!」

 健太は最後の力を振り絞り、再びカップを持ち上げた。


「一気に決めるぞ!」

 龍太も限界ギリギリの状態でカップを掲げ、限界の亮と直樹も最後の気力を出し全員で最後の一気飲みを行った。


「これが俺たちの全力だ!」

 健太が叫び、全員が同時にカップを飲み干した瞬間、ベラトールはついにその場に崩れ落ちた。


「お前たち…まさかここまで…」

 ベラトールは苦しげに息を吐き、酒杯を手から離した。


「俺たちの勝ちだ…!」

 健太は疲労困憊の中で、勝利を確信した笑みを浮かべた。


「やった…俺たちはやり遂げたんだ…」

 亮も息を切らしながら、勝利の喜びを噛みしめた。


 ベラトールは敗北を認め、静かに彼らを見つめた。「お前たちの勝ちだ。俺をここまで追い詰めるとは思わなかった。だが、これで分かった。お前たちこそ、真の酒の力を理解した者たちだ。」


 勝利の後、健太たちは疲れ果てながらも、勝利の余韻に浸っていた。最後の一気飲みが決定打となり、ベラトールを打ち破った彼らは、酒の力を最大限に引き出し、勝利をつかんだ。


「これで…終わったんだな。」

 健太が静かに言い、仲間たちも安堵の表情を見せた。


「もう飲みたくない…って言いたいけど、なんだかまた飲みたくなってきたな。」

 龍太が笑いながら言い、全員が再び笑顔でカップを掲げた。


「最後は、俺たちの乾杯だ!」

 全員でカップをぶつけ合い、勝利の祝杯をあげた。

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