5.非日常へ2

 私は恐る恐る二つの大きな塊を、両の手の平で下からそれぞれ優しく持ち上げた。


 や、柔らかい……だけじゃない!


 こんなに大きいのに、こんなにデカいのに、ほどよく張りがあって弾力もある。


 形も良い!(たぶん)


 こんな素晴らしいものがなぜ私の胸元に……。


(はっ!?)


 私は気付いてしまった。


 自分がイケメンの前でとんでもない醜態を晒している痛い女であることに。


 しかも蟹股がにまたで。


 は、恥ずかしいぃぃぃー!


「お、おっほん」

 

 私は咳払いで誤魔化しながら何事もなかったかのように直立した。


 すると、私の動きに合わせてイケメンはまた片膝を付いて頭を下げた。


 何も言わず、流れるような自然な動作で片膝を付く銀髪のイケメンさん。


 見なかった事にしてくれたのかな? 無かった事にしてくれたのかな?


 彼は気遣いの出来る親切なイケメンさんのようです。


 それにしても、このデカチチは一体……。


 生前、(胸が)まずしかった私への神様からのご褒美なのかな?


 なんか手足も長くなってるし、髪も青いし……。


 ……ん? 髪が、青い?


 髪を手に取って見てみた。


 艶やかで潤いのある綺麗な水色の髪。


 長さは腰まであって透明感もある。


 まるで、私が創作したアリシアのよう……。


 私は右手で水色の髪を持ち、左手で紺のドレスに覆われている胸を揉んだ。


 うん、これ、アリシアだ。



 †



 顔は見えないけど、体格と髪の特徴がアリシアそのものだ。


 つまり、死んだ私は天国で自分が創作したキャラになっていた。と思う。(まだ断定は出来ない)


「もしかして……」


 部室での独り言を思い出す。


 ——ラノベやアニメみたいに物語の世界に行けたらなぁ~——

 

 ——そしたら私もみんなと一緒に冒険ができるのに――


 願いが……叶ったの?


 冗談抜きで神様からのご褒美かも。


 となると、この銀髪のイケメンさんは……。


 アリシアには、二人の姉妹の他に旅の途中で出逢った仲間たちがいる。


 その中の一人が銀髪の剣士で、名前はクラウド。


 クラウドは平民の出身で、幼い頃に妹と奴隷商人に攫われて売られた過去がある。


 奴隷に身を堕としたクラウドが剣士として仲間にいるのは、アリシアたちがあくどい奴隷商人を罰して彼を奴隷から解放したから。


 恩を感じたクラウドは、アリシアたち三姉妹を主として仕え、奉仕出来るよう剣術を極めるという流れに。


 私がアリシアなら、彼はクラウドである可能性が高い。


 よし、確かめてみよう。


「クラウド……」


 私は自信なさげに小さい声でクラウドの名前を呼んだ。すると、


「はっ」


 銀髪イケメンさんは更に頭を深く下げて返事をした。


 クラウドでしたかぁ……。


 私が想像して描いたイラストとちょっと違う気がするけど、たぶん実写化の影響だよね?

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